013
赤い開拓者たちは再び拳銃を発砲。
パロマの機械化していない部分を狙って弾丸を放つ。
だが、彼女は放たれた弾丸の雨を恐れずに、前へと踏み込む。
「ベルサウンド流·改、星の演奏装置ッ!」
弾丸をも超える凄まじい動きで振られた刃が、一瞬にして前にいた三人の赤い開拓者を斬り飛ばす。
刃から放たれる高周波の火花がその身体を焼き切る。
そして、店内にあったテーブルへ椅子へと吹き飛び、彼らの血で家具や床が染まっていった。
「殺してねぇだろうな……」
「フン、奴らは発砲して来たんだぞ。正当防衛だ」
ムドの言葉に、パロマが鼻を鳴らす。
そして、彼女は極寒にも匹敵する冷たい目でムドを一瞥。
お前も戦えと言わんばかりの視線を送られる。
「他の客は逃げた。これならお前の燃焼操作も使えるだろう」
パロマに急かされ、ムドも前へと出る。
燃焼操作とは、ムドの特殊能力である。
彼は、連合国ができる前に世界を統べていたバイオニクス共和国――。
その負の遺産――テストチルドレンと呼ばれる特殊能力者を造っていた研究所の出身であり、その力によって才能の追跡官に選ばれた経歴を持つ。
燃焼操作は、炎を弾丸のように発射したり壁を作ることができる技だ。
ただし、自分で炎を作り出すことはできないため、ムドはある道具を使用する。
「しょうがねぇ、やるか」
ムドがコートから取り出したのは、マッチの箱だ。
彼が箱からマッチ棒の束を取り、それを両手に持って一瞬で火を付ける。
掲げられたマッチ棒の火が次第に薄い紫色へと変わっていく。
「屋内っては気を遣うが、一般市民がいねぇなら燃えちまっても構わねぇよな」
掲げられたマッチの火が赤い集団へと飛んでいく。
燕尾服へと移り、一気に燃え広がる。
「少々焦げたくらいで臆するな」
それから怯む赤い開拓者たちを、パロマの軍刀――夕華丸が襲い掛かる。
一人、二人、三人とあっという間に斬り伏せる。
店内に火花と血しぶき、そして薄紫の炎が舞っていくと、現れた赤い開拓者たちは全滅していた。
呻く赤い集団を見下ろして、パロマが言う。
「くだらんものを斬らされた」
「ちょっとやり過ぎじゃね?」
「いいからお前はブラッド班長に連絡しろ。こいつらを連行してもらう。それと、出入り口の警戒は怠るなよ」
「へいへい」
騒ぎが静まり、パロマはようやく目標がいるトイレの扉の前に立った。
そして、戦闘後で興奮が冷めないのか、扉を蹴り飛ばして破壊する。
「私は才能の追跡官だ。大人しくついてきて……なッ!?」
だが、トイレには窓があり、開いたままになっていた。
便座を見るに、たしかにここには人がいた形跡はあった。
「に、 逃げられてしまったのかッ!?」
トイレで叫ぶパロマ。
彼女が追っていた人物――チルドの恋人はすでに逃げてしまっていた。




