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パロマは動揺するリズムへ説明する。
敵の攻撃は自分たちに見えないほどではない。
いくら腕がよくても、所詮は単なる狙撃でしかない。
相手の位置さえわかれば、瞬時に動いてバヨネット·スローターの届く距離まで行けるはずだ。
「敵がこちらを狙わないのなら、相手の位置を把握しやすい。次の攻撃から敵の位置を確認し、即座に飛び掛かる」
「でも、それって無関係の人を囮にするってことでしょッ!? そんな作戦ダメだよッ!」
「しょうがない……としか言えない。敵を倒すためだ」
「それじゃなんでこの街に来たのかわからないじゃないッ! アタシたちはこの街を良くするために来たんだよッ! それなのに、そんな作戦は認められないよ!」
「バカ!? 出るなリズムッ!」
リズムはパロマの無視して路地裏から飛び出した。
彼女が才能の追跡官に志願した理由は、この街――アンプリファイア・シティの治安を良くし、そこに住む人たちが安心して暮らすためだ。
リズムは、今朝の会合でタイニーテラーに返り討ちにあって殺された子供のことを思い出す。
救えなかった命。
自分の行動次第では助けられた人間のことを考えると、彼女はじっとなどしていられなかった。
「ここだよ! 狙うならアタシだけにしてッ!」
そして、大声で叫んで自分に注意を向ける。
これ以上関係ない人間を巻き込まないように、リズムは自らその姿をさらけ出した。
当然銃弾が雨のように彼女に降り注ぐ。
だが、リズムは手に纏った光――気で銃弾を防ぐ。
しかし、銃弾は前からだけではなかった。
リズムの左肩に激痛が走る。
彼女の側面――予想もしていなかったところ弾が飛んできたのだ。
「うそッ!? どうしてなのッ!?」
リズムは慌てて側面から飛んで来る銃弾を防ごうと手を翳すと、再び前方から銃弾が放たれた。
これは防ぎ切れない。
リズムは自分の行動に後悔する時間もなく、このまま脳天を撃ち抜かれると思われたそのとき――。
パロマが彼女へ突進。
二人は転がりながら近くにあった車の物陰に身を隠す。
「勝手に飛び出す奴があるか! もう少しで殺られるところだっただろう!?」
「ありがとうパロマッ!」
「まったく勝手な真似をして……。礼など言っている場合か。だが、そのおかげでわかったことがある」
リズムは間一髪のところをパロマに救われた。
文句の一つでも言いたそうなパロマではあったが。
リズムの勝手な行動で敵の全貌が見えてきた言う。
襲撃者は二人いた。
今の攻撃でそれがわかった。
そうなると、おそらくは襲撃者の狙撃の腕は大したことがないと思われる。
「どうしてそう思うの?」
「簡単な話だ。普通に考えてコンビを組むなら近距離と遠距離で戦ったほうが効率がいい。敵がどうして遠距離攻撃のみで襲ってきたのかはわからないが、今まで凄腕だと思われた狙撃の技術は二人でやっていることなら実力は測れる」
そして今の狙撃で、パロマは襲撃者二人の位置をおおよそ把握できたと言葉を続けた。
「どっちもスゴイ、敵もパロマも。……今回はなんかアタシがマヌケな感じになっちゃってるね」
「反省は後だ。住民を囮に使うのが嫌なら、別の作戦で行く」




