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――それからリズムとパロマは店を出た。
その理由は、タイニーテラーから話は以上だと言われたからだ。
二人は彼と傍にいた美少年たちに簡単に挨拶をし、また何かわかったら連絡がほしいと頼んで別れたのだ。
今彼女たちは、近くに停めるように設定した自動運転車のある場所まで向かっていた。
時間はすでに深夜に近く、さすがに人通りも減っている。
それでもネオンは道を照らし、見上げれば配線が巡らされている光景だけは変わらない。
「結局、大した情報は手に入らなかったな」
パロマが愚痴っぽく言うと、リズムが宥めるように話を始めた。
タイニーテラーの言葉を信じるなら、彼はストリング帝国に何かしらの取り引きを持ちかけられた。
だが、それを断って自分たち才能の追跡官に、帝国が接触して来たことを話してくれたのだ。
一先ずは、そのことを喜ぶべきだろうと、リズムは笑みを浮かべる。
「それに、オレンジ・エリアの名物も食べれたしね。お魚とエビちゃんサイコーッ!」
「おい、そこはなんか違うだろ……」
そんな会話をしながら、二人は駐車場へと辿り着き、自動運転車に乗り込んで出発。
メディスンやコラスに報告するため、マーシャル・エリアへと車を走らせる。
「一応、メディスン班長へメッセージだけでも送っておくか」
「そうだね。盗聴されちゃうかもだから連絡は止めておいたけど。タイニーテラーさんが協力してくれていることは、伝えたほうがいいかもね」
そして、パロマが指に付けていたリングタイプの通信機器からメッセージを送ろうとしたとき――。
突然彼女たちが乗る自動運転車が激しく揺れ、石畳の道路から外れた。
パロマは自動運転から切り替え、ハンドルを握り、さらにブレーキを踏み込み、パーキングブレーキー引いてなんとか車を止める。
それから二人は車の外に出て確認すると、自動運転車のタイヤが破損していた。
「これって……銃痕? いや弾痕だよね?」
「誰か私たちを狙った……ということだな」
パロマがリズムへ返事をしたとき、彼女は周囲から圧迫感を感じた。
そして、腰に帯びた日本刀タイプの高周波ブーレド――夕華丸を抜いて構える。
「気を付けろリズム! この感じ……敵はまだ私たちを狙っているぞッ!」
パロマの叫び声と同時に、銃弾が彼女たちへ放たれた。
二人は即座に反応し、自動運転車の陰に隠れる。
「何故私たちを狙ってきたかもわからんし、一体どこの誰なのかもわからんが」
そう言ったパロマの口角が、次第に上がっていく。
「才能の追跡官を襲うとはいい度胸だ。捕まえて誰の差し金か吐かせてやる」




