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ラウドの言葉に、ディスは足を止めて彼のほうを振り返った。
そして、不可解そうな顔で彼のことを見つめる。
ニコも、どうしてラウドがそのことを知っているのか不思議なようで、大きく首を傾げていた。
「なんで知っているの?」
「勘だよ、勘。ま、もうちょっと細かく話すと、リズムを追っていったのかな~って思ってさ」
ラウドが説明すると、ディスは黙った。
見つめ合う二人をよそに、トランプゲームは続けられている。
ムドがパロマからカードを取って勝ち抜けすると、彼女はまた声を張り上げていた。
それを見てブルドラはため息をつき、シヴィルのほうはニヤッと不敵な笑みを浮かべている。
黙ったままのディスに、ラウドが言う。
「隠すことないよ。ディスがリズムを好きなのは、才能の追跡官なら誰でも知っていることなんだからさ」
ディスはこの街――アンプリファイア・シティへ配属されたときに、才能の追跡官のビルで自己紹介をした。
そのときに、彼は自分が軍警察に志願した理由――この街の配属を望んだわけを、リズムがいるからだと答えた。
そのため、才能の追跡官の班員ならば、誰でもディスがリズムに好意を持っていることを知っている。
しかし、ディスが気にしているのはそんなことではない。
別に、自分が彼女を好きなのをからかわれてもまったく気にしない。
ディスが気になっているのは、何故ラウドが自分のことなどを考えているかだった。
「ディス、気を悪くしたのなら僕からも謝るよ」
二人の雰囲気の悪さを感じ取ったのか。
ブルドラが話に入って来る。
彼女もムドに続き、パロマからカード取って勝ち抜けていた。
もはや声も出せず、うぐぐと呻くパロマを見たニコが彼女に近寄って慰めている。
「ラウドはちょっとストーカー気質なところがあってね。君への好意からこんなこと言っているだけだから、あまり気にしないでほしい」
「おいおい、酷いなブルドラ」
「いいから、君も謝れ」
ブルドラがラウドの頭をコツンと小突いた。
するとラウドは、拗ねた様子でディスに頭を下げる。
「いや、そんなことしなくていいよ。ただ、ちょっと驚いただけだからさ」
「それならいいのだけど。何かあったら言ってくれ。彼が変なことをしたら僕が注意するから」
ブルドラが女性らしい微笑みを見せながら、ラウドの頭をポンポンと叩いていた。
ディスはそれを見て二人の力関係を理解する。
どうしてだかはわからないが。
ラウドはブルドラに頭が上がらないようだ。
そして、ラウドもパロマからカード取って勝ち抜け、彼女が呻く前にシヴィルもカード抜いて上がる。
「うわぁぁぁッ! また私が負けたのかッ!? これはイカサマというヤツだなッ! 貴様らがグルになってイカサマをしたのだなッ!」
「してないって」
「パロマ、うるさい」
喚くパロマにラウドが呆れながら答え、シヴィルが嬉しそうに彼女を黙らせた。




