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キスの日・その2
「痛っ」
「どうしたの?」
朝の忙しい時間帯。
夫があげた、ちいさな悲鳴に声を掛けた。
「腕時計に引っ掛けて、唇の薄皮が剥けた」
痛そうに唇に手を添えている夫へと、リップクリームを差し出す。
「薬用だから。塗ると少しは楽かもよ」
「ヌルヌルするから嫌いなんだよね」
ぶつくさと文句を言って受け取ろうとしない夫へ、無理矢理塗る。
「ほら。保護膜できるから少し楽でしょ?」
艶々になった夫の唇。
常とはちがうそれに、思わず笑みが浮かぶ。
すると、みるみるうちに、それがへの字になった。
「あ」
ぐぃっ。
「よし。ヌルヌルしなくなった。それに、こっちの方が効果ある」
「!!」
「サンキュ」
ちゅ。駄目押しとばかりに、べとべとになったままの唇をふたたび押し当てられる。
いい笑顔を向ける夫を、私は思い切りはたいた。
#140字小説 #キスの日
キスの日その2をお送りいたします。
去年のキスの日から開始してるので、この掌編連載も一年続けているということに。
イチャイチャしてるだけのお話を読んで下さってありがとうございます
これからもよろしくですー♡




