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キスの日
鏡に向かって「むぅ」と吠える。
目尻に小皺が増えてきた。
引っ張っても駄目で、鏡に写る角度を変えても消えなくて思わずため息が漏れる。
「笑い皴、可愛いじゃん」
ぐっと後ろから抱き着かれて、肘で押しのけようとするんだけれど、ぐいぐい抱き着かれた。
「もう。私は気になるの。揶揄わないでよ」
新しい美容液でも買ってくるべきだろうか。
瀬戸際とか手遅れという単語が頭をよぎるも、私のこれからの人生で、今が一番若いのだ。今からでも始めるべきだ。うん。
手入れを面倒臭がっている場合ではない気がする。
鏡が大きな手でよけられ、視界が暗くなったな、と思ったのは一瞬だった。
ちゅ。
「唇に刺激を与えると、女性ホルモンがたくさん出て、皺とか消えるんだってさ」
いっぱいしようね、と笑った顔に。
私は、何度目かもわからない恋をする。
昨年?のキスの日にTwitterで上げたお話が見つからなくなったので、うろ覚えで書き直してみました。