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短編

いつもの

作者: 秋丘光

ーーー

>店内にあやしい人影

>“カランコロン”人が店内に入ってくる

ーーー


店員「いらっしゃいませー」


客「いつもので」


店員「はい、かしこました。いつものですね」


ーーー

>慣れた様子で好きな席に座る客

>店員が思う“いつもの”を持ってくる

ーーー

 

店員「お待たせいたしました。こちらいつものお水とおしぼしりです」


客「はいはい…って。もしかしてこれがいつものって言わないよね」


店員「えっ?いや、これがお客様のいつものですよね」


客「そんなわけあるかっ!なんで“いつもの”がお水とおしぼりなんだよ!」


店員「でも、他のお客様も絶対頼まれすよ。お水とおしぼりは全てのお客様の“いつもの”ですよね」


客「そりゃそうだろうな!お水とおしぼりなんて、“いつもの”って頼まなくても出されるいつものやつだから!」


店員「え?うちではお客様のほうが『すみません、お水とおしぼりもらえますか』みたいに聞いてきますよ」


客「それはこの店のサービスの問題だよっ!普通はメニューと一緒に持ってくるものなんだよ!君も他の店で食べるときは、勝手にお水とおしぼり出てくるでしょ」


店員「あー…。出てきます出てきます。あれってお通しみたいなものって思ってました」


客「まぁお通しも頼んでなくてもくるもんな。ってそうじゃなくて“いつもの”お願いします」


店員「お客様。今のやり取りで気づきませんでした?私のポンコツ具合に。なのでハッキリと品名を言って貰わないと分かりませんっ」


客「自信満々に言うな!よーく私の顔を見て。見覚えあるでしょ。この店に週4回以上食べにくるようになってそろそろ2年ぐらい経つはずなんだけど」


店員「うーん。…。あっ、私の小学生時代の先生ですか!すっごく久しぶりですね、私はここで店員としてバイトしてて」


客「待って待って!!話が盛り上がってるところ悪いけど違うね。私、先生なんてしたことないから。普通の会社員だから」


店員「逆に聞きますけど…。2年この店に食べに来てて、私のこの顔見たことあります?」


客「…。ないね」


店員「でしょうね!だってこの店で働くの今日が初めてですし、なんなら、お客様が記念すべき…私の初めて…のお客様ですから///」


客「気づかなかったのは悪かったけど、もっと早く言って。あと照れないで、なんか気持ち悪い」


店員「失礼ですね。でご注文は何ですか」


客「えぇーと。それは…。いつもなに頼んでたっけ?」


店員「いやいや、私に聞かれても!知りませんよ!!」


客「実は…私は記憶喪失なんだ。ここが行きつけの店で“いつもの”って頼んで、それを食べたら何か思い出せると思って…」


店員「そうだったんですね。仕方ないですね…。少し待っててください」


ーーー

>店の奥に消える店員

>食べ物を運んで出てくる店員

ーーー


店員「お待たせしました。梅のおにぎりと卵焼きです」


客「え。こんなのが“いつもの”やつなわけ…。」


店員「いいから食べてみてくださいよ」


客「そうだね。せっかくだし。いただきます」


客「美味しい…。それに何だかすごく懐かしい味がする。あれ、おかしいな涙まで…」


店員「それ、私が小学生のときに調理実習で作ったんです。先生に食べてもらうために。あのときも美味しいって食べてくれましたね。先生」


客「そう。そうだった。思い出してきたよ…。お前の強く握りすぎたおにぎりと焦げぎみの卵焼き…。ありがとう、立花たちばな!!」


店員「そんなお礼なんていいですよ、先生。あと私、立花たちばなじゃないです」


客「あ、そうなの?でも、まぁ…。おかげで記憶が少し戻ったよ、ほんとうにありがとう。」


客「ごちそうさま。美味しかったよ。お会計お願いできるかな」


店員「はい、先生。お水とおしぼり、梅のおにぎりと卵焼きで税込み850円になります」


客「待って!もしかして、お水とおしぼりもお会計に入ってる!?」


店員「はい、うちのお水とおしぼりはサービスじゃなくてお通しなんで」


客「納得は出来ないけど…。おかげで記憶も少し戻ったし仕方ない。払うよ。持ってけドロボー」


店員「ありがとうございました。またお越しください」


ーーー

>“カランコロン”と客が出ていく

ーーー


店員「ふぅ、危なかったぁ~。まさか売上を盗もうと閉店日を狙ってきたのに客が来るなんて」


店員「にしても今日の成果は850円…。と人の笑顔か」

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