第一章【a piece of cake】
「美味しい〜!」
「ん。良かった!ちょうどお袋が昼に買って冷蔵庫入れてってくれたみたいなんだ。」
「ふぁ、じゃあお母さんの分…!?」
「アハハ大丈夫!全部食べたって連絡しておくから。」
「な、なんかすみません…図々しく…」
入れてもらった紅茶をグイッと飲み込むと
ふと急に頭が回り出した
なんで、図々しく先輩の家に上がり込んでるんだ?
美味しいケーキに美味しい紅茶を飲んでるだ?
目の前で国宝級イケメンがなぜニコニコしているんだ?
というか、この状況ってスゴい事では!?
わぁ!ビバ糖分!
糖分のお陰で私の脳細胞に蘇りが起こったようです
なんだか急に恥ずかしくなって、先輩から少し目を逸らした
「よ、よく考えたら本当に図々しいですね…」
「え?全然?だって俺が誘ったんだし。」
「いや、でも友達に話したらみんなに恨まれちゃうかも…」
「なんで?」
「だって先輩は! …国宝級イケメンだから」
最後は自分の耳にやっと聞こえるか聞こえないくらいの声でボソッと呟いた
「みんなよくそう言ってくれるんだよね。」
おう、地獄耳の方でしたか…
先輩はほぅっと溜息を1つ吐いた
「俺はこんな国の宝とか言われてもピンと来ないからさ。」
うん、今まで聞いた中で1番のイケメン発言ですよ皆さーーん!
国の宝って言われてもピンと来ないなんて!
いつか言ってみた〜い
「オーアンの宝って言われたら嬉しいけど。」
「オア…?」
「うん、オーアン。」
先輩はさも当たり前みたいなニコニコの笑顔で笑いかけてくるが
ちょっと私の脳細胞の中にオーアンという単語が見当たりません
人生初の出会いです
初めまして
「…分かんない?」
「…は、はい…ご、ごめんなさい、私っておバカで…」
少し悲しそうな先輩の顔を見ると、自分の知識の無さにうんざりしてしまう
「あの、有名な国ですか?」
「うん!すごくね!あ、これ見てごらん。」
そう言って先輩は、スマホを取り出すと1枚の写真を見せてきた
「…あ!」
いくら私がおバカでも分かる
この写真、今日学校で見たやつだ
草原と海と太陽
とても綺麗でとても懐かしい感じがする写真
「知ってる?」
「今日見ました!ツイッターで!」
「…そっか。」
興奮している私とは裏腹に、先輩はどことなく寂しそうだ
「すごく綺麗ですよね!しかもなんだか懐かしい感じがするなって…」
「ほんと!?懐かしい!?」
「え?!…は、はい。デジャヴって言うんですよね?友達が教えて…」
「そっか!懐かしいよね!良かった〜!」
先輩はスマホをテーブルに置くと、立ち上がって軽くジャンプしている
可愛らしく格好いいが
デジャヴで何故にここまで喜ぶ?
意外と不思議ちゃん系なんだろうか
「これ、絵なんだ。俺の。」
「うぇっ!?絵!?」
完全に写真だと思い込んでいだか、まさかの絵だった
しかも目の前にいる国宝級イケメンがこれを?
天は1人に何物を与えれば気が済むのだろう
私は自慢じゃないが、モテない、出来ない、走れないでこれまで生きてきた
なのに、この先輩はモテる、出来る、
走れる(多分足長いし)で生きてきているのか
う、羨ましすぎる!
「君の目に止まっていたなんて感激だよ!」
「私はこれが絵だと言う事に感動しています!」
「実物見せてあげよっか?」
そういうと先輩はサッと消えてしまった
いや実際は階段を駆け上がる音が聞こえたから、きっと部屋にでも向かったのだろう
あまりに早すぎて消えたように見えた
先輩のカテゴリーに忍者も追加しておこっと
「じゃーんこれ!」
「わぁ!」
思ったより小さな絵だったが、色鉛筆で精巧に描かれていた
いや実物を見た所で、大きさといい色合いといい、やっぱり写真にしか見えなかった私の目は節穴なのかもしれない
「す、凄すぎます。先輩って本当になんでも出来るんですね…」
思わず感嘆の声が洩れる
「うん、俺はなんでも出来るよ。自分の力を信じてるからね。」
はい、2個目の名言来ました〜!
ナポレオン的に言えば、余の辞書に不可能という時はないって感じかな!?
言ってみたーーーい!
「だから迎えにきたんだよ、マホ」