第一章【ファミチキ】
何が悲しくて私は
鼻ぽんしながら
国宝級イケメンと
ファミチキ食わなきゃいかんのだ
私の脳細胞の生き返りが遅すぎたせいで
気付いた時にはすでに
私はファミチキ片手にとぼとぼと歩いていた
どうやら先輩の家へ向かっているらしい
「ファミチキ好きなの?」
「え?あ、ハイ!お肉ならなんでも!」
またやっちゃった
きっとここは可愛らしく「甘い物が好きです」とか「スタバのフラペチーノが」とか言わないといけなかったよね絶対
スタバ行った事ないけど
「そっか。じゃあ今度、美味しいお肉食べに行こ?」
「え!?私とですか?」
「他に誰がいるの?」
ニコニコ笑いながら先輩は一応キョロキョロ辺りを見回す
「いやいやあの、私なんかとじゃ」
「何言ってるの!あのペンダントは俺の命並みに大事な物だったんだから。ね、お礼させて?」
「いやもう十分お礼させて頂いてもらっておりますから!」
「いや日本語不自由なの?」
先輩はまたアハハと笑い始めた
「カ、カイホ先輩は心までステキなんですね…」
「俺の名前。知ってくれてたの?」
「あ、当たり前です!この辺りに住んでる人ならみんな知ってますから!」
「うっそー!それは怖いね〜。」
言いながら、ガタガタ震える真似をしている
意外とお茶目みたい
「あ、ここ家。上がって!ケーキがあるんだよタイミング良かった〜!」
私は促されるまま、カイホ先輩の家へ足を踏み入れてしまった
とても綺麗でシンプル
本当にカイホ先輩らしいお家
お父さん、お母さんの趣味も良さそうだ
「お邪魔します…」
恐る恐る声をかけると
「あ、両親とも働いてるから遅いんだ。遠慮なく上がっておいで。」
カイホ先輩はたった3歩ぐらいでリビングへ入って行ったように見えた
それぐらい脚が長い
長すぎる
同じ人間だとは思いたくない
私は小走りでリビングへ向かった
「綺麗なお家ですね…」
少し生活感がないぐらい、シンプルなリビング
モノトーンでまとめられモデルハウスみたいだ
「親父もお袋も忙しい人だから。俺一人じゃそんなに汚れないんだよね。」
カイホ先輩が椅子を1つ引いてくれた
そこに座れって事ですか?
はぁ…ほんと高校生なのにここまで紳士に育つって親御さんは王族ですか?
「紅茶好き?」
「はい!」
「じゃあ入れるね。」
カウンターキッチンへ入った先輩は、本当にどこかの国の王子様然とした身のこなしだ
いや、王子様見た事ないけど
でもそれぐらい、ピシッと姿勢がよく
常に微笑んでいて
すべてが強引なようでさり気ないようで
こういうのが人の魅力ってやつなのかな?