第一章【マホ】
「あれ?
この景色なんか見たことない?」
ツイッターに流れてきた写真は、とても綺麗などこか海の近くの高台、豊かな草原の写真だった
朝の時間帯なのか、水面も草原も太陽を浴びてキラキラ光り、背の高い草は風によくなびいていた
右奥に小さなレンガ造りの小屋の様なものが写っている
どこの国の写真だろう
ハッシュタグは…oan?
「え〜?」
イチカが興味深そうに覗き込んでくる
「あー知ってる!それデジャヴって言うんでしょ?」
そういうハナは鏡を見ながら一生懸命前髪を整えている
「デジャヴ?」
「そーそー!初めてなのになーんか見たことあるってやつ。…よし!完璧」
前髪はバッチリ決まったみたい
「そっかぁ…デジャヴかぁ」
「マホってデジャヴ多くない?」
ニコニコ笑顔でイチカが顔を覗き込んでくる
「よく言ってるよね!これこの間もやんなかったとか見なかったとか〜」
確かにという表情でハナが頷く
「マホってもしかして未来人!?」
「え〜!?私が!?」
「アハハないない!むしろちょっと前の子でしょ?」
ハナが豪快に笑い飛ばす
「言えてる〜!」
ニコニコ笑顔のままイチカはぴょんと軽く飛び跳ねた
「今時ミサンガ付けてる子マホぐらいだって」
「うちのお母さんの子どもの頃に流行ったって言ってたよ?」
「いや、だからさ!流行りはまた巡るんだって!
つまり私が最先端!」
「アハハ!始まった!マホの最先端!」
こういう時にいつも1番楽しそうなのはイチカだ
「あ、やっば!私購買行かないと」
慌ててハナが立ち上がる
「あ、じゃあ付いてくよ〜マホは?」
「私ちょっと調べ物あるから。ごめんね」
つい2日前の私の誕生日
ふいに道端で見つけたのは
珍しい虹色で輝くペンダントだった。
鎖が切れていたから、付けていた人が気付かないうちに切れたのだろう
普段ならスルーするのだが、なんだか持ち主を探してあげたくなった私は、自分のツイッターにペンダントの写真をアップした
そして家に持ち帰り、綺麗に拭いて、切れた鎖の部分を締め直しておいた
アップして2日経つが特に何のアクションもない
それはそうだ
私はしがない田舎の高校1年生
フォロワーなんて友人10人ぐらいしかいない
一応拡散希望でお願いしているが、RTは15
…こりゃ見つからないだろうなぁ
そう思って時間がある時は、ペンダント落としたとかペンダントで検索してこちらから探している状態だ
しかしそれらしい投稿は見つからない
高そうな珍しい石のペンダントだけど、落とし主は困ってないのかな…
「帰りに交番行くかぁ…」
呟いてスマホをバッグにしまうと、私も購買へ向かった。