第一章【帰り道】
「見た!?見たよね見たよね!?」
「うん、見た!!!ちゅってチュッて!!!」
今のカイホ先輩の再放送が目の前で早くも始まった
「凄くない!?スマート過ぎる!!!」
「私初めて見たよ!あんな男子!いるんだね日本に〜!」
『ありがたや〜ありがたや〜』
うん
多分2人とも完全に脳細胞をやられましたね
喜んだり悲しんだり祈ったり
忙しそうだ
「はぁぁぁぁぁマホは俺のモノだってぇぇ!」
「言われたすぎるぅ〜!」
「それな!」
楽しそうな2人を後目に
私はあまりの恥ずかしさに
味の分からないお弁当をとりあえずパクパク詰め込むしかなかった
「…はぁ…ホント格好よすぎてイミフ…。」
学校帰り
先輩が付けてくれたミサンガを見ながらお昼休みの事を思い出していた
私が作るミサンガは刺繍糸だが、先輩のは皮のような紐で編まれていた
キラキラ輝く紐と、しっとり落ち着いた紐と
すごくセンスのある配色
「先輩が編んだのかなぁ?上手…。」
なかなか難しい模様のミサンガだ
私でも編めるかどうか微妙なほど
「俺が編んだんだよ?」
「ひっ!?」
あまりに突然の出来事に、思わず息を飲んでしまった
「ごめんごめん!驚かせるつもりじゃなかったんだ!」
背後からぴょんと私の目の前へ出てくると
破壊力抜群のキラキラ笑顔
もちろん…カイホ先輩だ
「一緒に帰ろう。」
「え!?でも!?」
家は真逆だ
「送るよ。それとも、うちに住む?」
「め、め、め、滅相もございません!」
「えーマホなら絶対親父もお袋も喜ぶのに。」
突然何を言い出すんだ
本当にイケメンの思考回路は凡人のそれとは作りが違うらしい
考えてる事が全然分からない
「お、送っていただきたいです!」
「OK!行こうか。」
そういうと、サラッと先輩は手を繋いできた
本当に流れるように
全ての動作に無駄がないイケメン
経験値の違いをまざまざと感じる
私は繋いだ手に心臓がもう1つ出来てしまって
さっきから2つの心臓がバクバクうるさい
人の心臓2つにしたり、私を人造人間にでもするつもりなのかこの人は?
それとも私の寿命を吸ってるとか!?
もう絶対、昨日から私の寿命はどんどん縮んでいる
間違いない
「マホは何色が好き?」
「色…ですか?うーんと…」
『オレンジ』
「へ!?」
突然先輩がハモってきた
なかなかの息の合ったハモリだ
「な、なんで分かったんですか?!」
「えーマホの事なら何でも分かるんだよね〜。」
一歩間違えたらっていうか、カイホ先輩じゃなければ(?)なかなかのストーカー発言じゃないか
昨日から私の名前とかクラスとか色々当てすぎていて、さすがに少し怖い
「分かりすぎてキモイ?」
「ぅえっ!?いや、そんな事は!…あるかも…」
「あるんだ…。」
あからさまにシュンとする先輩
「これ以上マホに嫌われたくないから、じゃあ色々教えて?」