第一章【恋バナ】
『ねぇ聞いた!?』
『え!?うっそカイホ先輩が…!?』
『どの子!?なんで!?』
その日一日、私は初めて芸能人の気持ちが分かった
休み時間の度に教室に人だかりが出来て
みんながヒソヒソ話している
分かる
私を見に来てる
カイホ先輩に告白された私を
「ちょっとこっち!」
昼休みに鬼の形相で私の腕を引っ張って外に連れ出してくれたのは
イチカとハナだった
「なになに!?一体どーなってんの!?」
丸い目をますます丸くしてハナが興奮している
「いや、私が聞きたいぐらいで…」
「もーマホってばいつから先輩と知り合いだったの!?」
「いや、昨日?」
「昨日〜!?」
人目に付きにくい教室棟の非常階段で、私達はお弁当を広げる事にした
「昨日知り合って今日から付き合ってるの!?」
「神展開!!!」
2人の興奮は尋常ではない
いやわかる
私も自分の事じゃなければ
絶対に絶対に絶〜ッッッッ対に興奮している
だって何せ相手はあの
国宝級イケメンなんだから
「なんで?何したの!?」
「い、いや何したって何も…。」
「えーーーー絶対何かあったでしょ!?」
「そうそう!何して知り合ったの!?」
「ペンダント拾っただけ…。」
「え?あの誕生日の日に見つけたヤツ!?」
「うっそ!?カイホ先輩のだったの〜!?」
2人は目を見合わせて
いいなぁ〜私が拾えばよかった〜とか
キャッキャと騒いでる
「で、なんでそこから付き合うことになるのよ!?」
「さ、さぁ…?」
「そこが肝心なんじゃん!」
ねぇ!と2人は顔を見合わせる
「ホントに全然分かんないんだってばぁ…。からかわれてるって思ってたし。」
そう、完全に面白がられてるって思ってた
だって帰ろうとか
追い掛けてきたとか
転生とか
本当に意味不明な事ばっかり言っていた
私は生まれてこの方、日本のこの田舎育ち
他に帰る場所はありません
転生とか言われても
前世の記憶もございません
「はぁ〜。でもいいなぁ〜カイホ先輩に告られるなんて!」
うっとりと天を見つめるハナ
ハナは恋バナが大好きだ
「ホントに!私だったら心臓バクバクし過ぎて倒れちゃうかも〜!」
イチカも恋に恋するって感じ
まさか1番恋愛に疎かった私が、1番先に彼氏とか告白とかそんな事になるなんて
自分でも信じられない
「ひぇっっ!?」
天を見つめていたハナが、素っ頓狂な声を上げた
「えっ!?」
イチカも慌て出す
私の上に、ぬっと大きな影がかかる
途端に私の心臓がバクバクと早鐘を打ち始めた
「見〜つけた!」
間違いない
カイホ先輩の声
でも驚きすぎて私は顔を上げる事が出来なかった
「な、な、な、なんでこ、こ、こ…」
ハナがしどろもどろになっている
「大好きなマホがどこにいるかぐらい、分かっちゃうよ?」
…ハイ、今のキラキラ笑顔で無事にお2人は天へ召されました
すっかり目がハートになってしまっています
この方はタチの悪い死神かな?
「マホ?どうしたの?」
いやいや、顔上げたら口から心臓飛び出しちゃうんで
「マホはホントに可愛いなぁ〜!」
クスクス笑いながら、先輩はおもむろに私の右手を持ち上げると
サッと何かを着けた
ミサンガだ
「俺からマホへのプレゼント。これでマホは俺の物ね。」
そう言いながらミサンガをキュッと締めると、慣れた手つきで
右手にチュッとキスを落として
そして早速と去っていった
…え?やっぱり王族ですか!?
なんですか今のスマートな一連の流れは!?
固まったままの3人
いち早く動けたのは
ハナだった
『ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ格好いいーーーー!!!』