表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
低速機動エレベーターババア  作者: 猫渕珠子
Crank-in クランクイン
8/18

▼3~2階・エレベーター内

▼3~2階・エレベーター内



 なんだったんだ、今、目撃してしまったものは?


 扉が閉じきる直前、垣間かいまえた光景。


 一瞬だけであるがゆえ、網膜もうまく克明こくめいにきざみ込まれた。


 ポニーテールの女性看護師と、老婆ろうばが会話をしていたのである。


 老婆はもちろん5階からエレベーターに乗っていた、あの白髪の老婆だ。エレベーターを出終えたところのようで。「トミ子さん」とほのぼの呼びかけたポニテ看護師がかたわらまで駆けつけてきており、いたわるように老婆の体にれてさえいたのだった。


 ……いったいどういうことだ?


 舜平しゅんぺいは操作パネルに飛びついて『開く』ボタンを押した。


 だが、閉じきったあとではもう遅い。


 エレベーターは2階に向かって降下し始めてしまった。


「ぐふっ……ぐふっ……ぐふふっ……」


 ふいに聞こえてきた奇声で振り返る。


 ヨシオカ・ナツキが床にうずくまっていた。正座をして、お腹に両腕を回す格好で、ひたいを床にこすりつけさせている。地べたに黒猫のポーチが投げ出され、長い髪の毛が広がっているのもお構いなし。「ぐふっ」と発声するたびに、ゆみなりになっている背中が小刻みに痙攣けいれんしている。どうやら、笑っているらしい。


「な、なに笑ってんだよ?」


「ひひっ……ひひひっ……いひひひひっ!」


 気色のわるい笑い声がより一層強まる。


 さらにはドンドンバンバンと床を両手で連打し出した。


 エレベーターが旧式なせいだろうか、天井の照明がチラつく。


 狭い直方体の中が暗くなったり明るくなったり。


「やめろって! 笑うな! 床を叩くな!」


「あははははははっ!」


 狂ったような声に包まれながら、エレベーターは2階に到達した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ