戦乙女の独り言
夕日が胸の高さまで落ちてきました。
今ウチの本体はミナ島から少し行った海上に放置されています。敵陸戦、コハクがスリープモードに入ってから一時間。ウチを動かしていた鬼丸クンたちは一足先に島へと戻られました。
ちょっとしたバイタル検査ならウチにも出来ますが、何せ激戦続きでしたから。彼らの身の安全を最優先に確保するため、新井さんが寄こした小型ボートに乗って戻っていかれました。
そしてその後、カイナ島のヴァルハラ職員の方々がやってきて、ウチの隣で眠りについたコハクに鎖を何重にもかけました。
その作業風景はとても重々しく、もしウチが暴走したらこのように扱われるのかと考えてしまいとても怖くなったことは、鬼丸クン達には内緒です。彼のことだ。きっと優しい言葉で寄り添ってくれる。
荒々しく思われがちな彼ですが、誰よりも人の心に寄り添おうと努力しているのを、ウチは知っています。それはまだウチが、ただの鉄の塊だったころから。
「おいモドキ。コイツについて何かわかることはないか?」
ウチの開発主任を名乗るこの男は、コハクの上に立ち、足でその装甲を指し示しました。
「知っていた所で、例え敵だとしても同族に対してそのような態度をとる人に伝えることなんてありません」
そう、敵だとしても、暴走していたとしても、彼らはウチと同じ陸戦。
「もっと丁重に扱わないと、ウチ、暴れますよ。ちょっとくらいなら、一人でも動かせるようになったんですから」
目を光らせ威嚇してみる。先の戦闘でわかったことがあります。ちょっとした操作なら、ウチ一人でも可能だということが。それこそここからミナ島のドックまで戻るくらいは。
「なら貴様をスクラップにして、新しい機体を作るだけだ。ただ対応は改めよう」
この人も、口と態度と顔は悪いが話せばわかる人だ。だからウチがこの人に対して抱いている嫌悪感はきっと、親子に生じるどこにでもある感情なのだろう。
「今の所わかるのは、人工知能特有の凝り固まった思考をしない、特殊な回路の持ち主、ということくらいですね」
そのせいでウチは、腕を負傷した。実を言うと、機関とか関節部とか、他にも色々ガタが来ていましたが、鬼丸クンやこの人の前では黙っていることにします。きっと色々心配し過ぎてくれるので。
「そうか。ならば結構」
そう言い残し、彼は去っていきました。全く、始めからウチのログを解析すればいいものを。人が悪い。ついでに体調も。いい加減休んでください。
「コハクさん。貴方は一体何者なんですか?」
答えは帰ってこない。鉄の塊に会話は出来ないことくらい、ウチもわかっています。
よく特別な存在になりたいと人は言うそうですね。鬼丸クンもそうなのでしょうか? ウチは、そうは思いません。皆と同じものを食べて、同じ景色を見て、同じことで笑って、泣いて……。
その皆は、鬼丸クン達なのか、はたまた彼のような陸戦か。
「鬼丸クンはウチのことを、陸戦だと言い張りました。それは嬉しい反面、壁を感じてしまいました。コハクさん、ウチは一体、何者なんでしょうか?」
答えは、静かな波音だけが帰ってきました。
「おいモドキ。コイツ……コハクの解析には時間がかかりそうだ。今回収班を呼んだから、お前は先に島へ戻っていろ。それとアイツらを休ませておけ」
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