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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
海上編第三部~海上神秘~
76/200

醒めた悪夢と少年の口笛

「陸戦警報だ! 避難の準備だ!」


 その耳を殴るような警報は、薄暗いイナバ百式の中で、口笛を吹きながら適度にサボっていた黛ユナも鮮明に聞こえた。この音が聞こえるたびに、ユナは一人、薄暗い部屋で戦いを強いられてきた。孤独な上に危険なその日常は、彼の精神を削っていた。

 しかしあの悪夢のような空母での生活ともオサラバした今、彼にとってそれは日常のアラームからちょっとうるさい何かに成り下がった。

 その時彼の脳内に、ちょっとした作戦が立案された。この混乱に乗じれば、やりたくもない土木作業から逃げられるのでは、と。

(その為にはこのまま親方たちと一緒に逃げたらダメだ。何かこの現状を破壊する、インパクトのある行動をしなきゃな……)


「そうだ! 陸戦の襲撃なら、紅蓮さんたちが戦っているはず。そこで役に立てばその功績で何とかなるんじゃないのか」


 今に見ていろオッサン。俺を作戦に加えなかったこと、後悔させてやる。ユナはそんな決意を基に、イナバ百式を動かし現場にあった器材や素材をかき集めた。それをそのまま百式のガレージへと運んだ。

 ユナ以外の作業員は皆、警報の後に流れた情報を元に避難をしていたため、その行為を咎めるものはいない。


「時間もないし、さっさとやるか」


 彼は薄緑色の作業着の胸ポケットから黒色のUSBを確認するように取り出した。


「持ってきて正解だったな。流石俺」


 そうして次に、ガレージと直結している事務所からラップトップパソコンを強引に拝借してきた彼は、百式とそれを接続。右側のポートに先ほどの黒いUSBを差し込み、パソコンを立ち上げた。

 黒い画面に白い文字が続々と現れたのを確認したユナは一度それを放置し、現場から持ってきた器材などを見回す。


「お、あれは使えるかも!」


 ユナの目に留まったのは、三本の爪が特徴的なイナバ百式の姿勢固定用アンカーであった。親方の話では、基本的にアンカーとイナバ百式を繋げるワイヤーは強固なために切れることはないが、目の前にあるそれは別の作業員が作業中に異変を感じ、万全を期すために取り換えたものであった。

 元々腰から二本ぶら下げられているアンカーにより、イナバ百式は過酷な環境でも姿勢を安定させ作業することが出来る。

 工業用陸戦にとって、安全性や性能は注目されなくなってきていた。一定以上のスペックがあれば事足りるからだ。

 時代は、次のステップに足を踏み入れ、疲労度の軽減が重要視される。そんな中、自然な姿勢で作業が続けられるイナバ百式がトップシェアを誇ったのは当然の結果と言えよう。


「だからって、百時間は労基違反だろ」


 イナバ百式のキャッチコピー、それは


百時間乗っても、大丈夫!


 だった。現場で働く作業員にとっては悪夢のようなキャッチコピーでも、経営陣に対する広告効果は抜群であった。

 ユナが当然の心情を呟きながら、小さな体でそのアンカーを運ぶ。


「コイツで、俺の戦いを見せてやる!」


 再びパソコンを覗き、素早い手つきでコマンド入力を行う。ユナはパソコンを持ったままイナバ百式に乗り込み、パソコンからそれを操作する。

 コックピットの周りは透き通った黒い強化ガラスで覆われ、その周りに黄色い四肢が取り付けられた特徴的な工業用陸戦イナバ百式は、自身の脳をハッキングし確証もない勝利のビジョンに酔いしれる少年を乗せ動き始める。


「今日からお前の名前はイナバ百式ユナカスタムだ! 手始めに、自己改造だ!」


 イナバ百式はユナの軽快な口笛の音に合わせ、アンカーの改造を始めた。

いつも読んでくださりありがとうございます。最近読み始めてくださった皆様、そして連載初期から読み始めている皆様、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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