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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
海上編第三部~海上神秘~
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第二十四海路 2 集結! チームV後編

「第三十二区画、大破! 巡行形態になれません」


「発射管やられました!」


 ダイシャーク零号機の中では、悲鳴ともとれる報告が飛び交う。海上に浮くすべを持っている琥珀色の陸戦は、棍棒を振り回し、格闘形態で応戦したダイシャーク零号機の機器を次々に破壊していった。


「気にするな! もともと壊すつもりで殴り合ってるんだ」


 鮫島は頭を掻きながら叫ぶと、モニター上部に表示された数字を見た。その時計は既に六分を経過していた。それでもなおパイレーツスパイトからの支援砲撃は止まない。


「あと少し、あと少しだけ耐えるんだダイシャーク。奴らだって限界を超えて戦っている! あと少しだけでいい……」


 半ば祈るように叫びながらモニターを睨む鮫島の耳には、先程からコルセアの怒号とそれに波打ち答える荒くれものたちの罵声、そしてそれをかき消す火薬の音響いていた。

 

「機関部、これ以上持ちません!」


 サイレンに負けず劣らずの悲鳴が鮫島の祈りをかき消す。


「総員、退艦準備! 急げ、さもなくば……」


 鮫島が苦渋の決断を下したその瞬間、耳元のイヤホンから新しい轟音が響いた。それはとても重々しく、尖った速度を持ってパイレーツスパイトを通り過ぎていくことがわかった。



「待て! この音は……」


 鮫島は急いでカメラを動かした。三百六十度見回した彼の目には、南東の空から翼を広げ、音を置き去りに飛んでくる一機の戦乙女が映った。


「待たせたわね。アイツの相手はアタシ達がやる。シャークフォースとパイレーツスパイトは撤退を!」


 ヴリュンヒルド八型改口部に付けられた拡声器越しに、クリスタの堂々とした声が響く。それを聞いた海賊達が大きく歓喜し、シャークフォースは大いに安心した。

 彼らなら何とかしてくれるかもしてない。

 そんな思いから、シャークフォースは後退を始める。敵陸戦はそれを追いかける様子はなく、ターゲットをダイシャークからヴリュンヒルド八型改へと変更し、間合いを測っている。


「任せたぞ、ヴリュンヒルド八型改」


「お任せください。この平和ボケした島を守るのが誰か、しっかり見ておいてください!」


 すれ違いざまにそんな会話が交わされた。


「八型改貴方、言うようになったわね」


「そりゃあんな歓迎されて、黙っていられるほど余裕ありませんから」


 クリスタはどこかおかしそうな顔をしていた。そんな彼女の後ろ姿を眺めていた鬼丸に、背中の隼人が聞く。


「お前たちって、いつもこんな複雑な機体操作しながら戦っていたのか?」


 忘れられがちであるが、ヴリュンヒルド八型及びヴリュンヒルド八型改は五人以上での運用を想定されて造られた機体である。


「そ。それに気が付いたのならこっちの入力も頼む。五秒以内だ」


 次から次へと回される処理に、隼人の脳はオーバーヒート寸前であった。しかし鬼丸は普段からこの処理を一人で、クリスタと口論をしながら行っていた。


「ヴリュンヒルド! ハッチを開けろ! 今からキャプテンを発射する!」


 拡声器に乗せられたアルタの声が微かに響く。その声の方へ向くとそこには、パイレーツスパイトの舷側砲に詰められたコルセアの姿があった。


「酒田、まさか貴方……」


「人間大砲、だと……」


 驚き言葉が出ない鬼丸と、呆れて物も言えないクリスタ。両者の硬直を無視し、八型改は自身の判断で角度調整とハッチ解放を行う。


「発射!」


 アルタの指示で、コルセアは大きく打ち上げられた。丁度上昇するための威力が弱まってきたところに八型改が掬い上げる形でこれを確保。それを確認したパイレーツスパイトは全速力で撤退を再開した。


「おりゃああああ!」


 爆音を奏でながら、自身の操縦席に放り込まれたコルセア。


「酒田、貴方ねぇ……」


 突拍子もない行動を繰り返したコルセアに、クリスタは堪忍袋の緒が限界だった。しかし彼女の噴火を制するように、コルセアが喋り始める。


「ごめんごめん。でもこうやって無事に再会……なんだこれ?」


 コルセアの席には、紫のラインが入ったパイロットスーツがかけられていた。それに気が付いたコルセアは両手でそれを引き延ばし、様々な部分を確かめるように物色を始めた。


「貴方のスーツよ、それ」


「おおそうか! こいつはいい」


 そう言って着替えを始めようとした刹那、


「男子、自分の目を潰すかアタシに目を潰されるか目を瞑るか選べ! 三秒よ!」


 咄嗟に目を閉じ頭を下げる鬼丸と隼人、そして大将。クリスタはこうなることを事前に予測しており、脅し文句を準備していた。

 コルセアの着替えはスムーズに終わり、操縦が彼女に移された。

 クリスタはパイロットスーツに身を包んだ五人を見回し、


「寄せ集めとは言え、やっと五人そろったわね。ここからが本気よ」


 と溜息交じりに宣言した。


「それじゃあ、折角なんで名乗っときます? 折角六人揃ったんですし」


 そんな提案をしてきたのは、勿論八型改である。


「な、名乗り? 歌舞伎とかのか? 俺は詳しくないからな……すまない、パスだ」


「紅蓮、俺もパスで頼む。今余計なことを考えたくない……」


「アタシャ自己紹介代わりに鉛ぶち込んでるから今更だね」


 八型改が言い出したら引かないことを知っていた鬼丸とクリスタ。そして興が乗ったと強気なキルが、大きな声で啖呵を切る。


「民間軍事企業ヴァルハラ特命本部所属、鬼丸紅蓮!」

「クリスタ・リヒテンシュタイン!」

「そんな愉快なものに入ったつもりはないが、同じくキル!」

「これより敵陸戦、コードネームコハクとの戦闘を開始する。加減なれ合い一切なしだ!」

「護衛目標は平和ボケした五つの小島。それら総じてカイナ島!」

「偽りの翼に偽りの関係、しまいに偽りの乗組員。偽りだらけに守られる感謝を準備しておけ。並大抵では足りんぞ」


 それは、自身の手で平和をつかみ取ろうとしないものへの軽蔑。


「そして違法製造された陸戦コハク。貴方の間違いだらけのその道を、終わらせてあげるわ。オイル流して感謝なさい」


 それは、生み出された罪への憐み。


「アタシを!」

「俺を!」

「我を!」


 三人は大きく息を吸い込み、勢いよくそれをコハクにぶつける。


「「「なめんじゃねぇぞ!」」」


 激流は水柱を作り、大きな波を爆発させる。


今回も読んでくださりありがとうございます。その一読、とても力になります。ここまで読んでくださっている人が多いなんて、プロットの段階では思っていもいませんでした。

なんか打ち切りみたいな文章ですがそんなことありません。次回からは違法製造された敵陸戦、コハクとの激しいバトルとなります! 次回も、ご期待ください(これが言いたかっただけ)

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