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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
海上編第三部~海上神秘~
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第二十四海路 1 集結! チームV前編

「ところでクリスタさん。つい先ほどバイタルが異常値を示していましたが……」


 八型改はキルの着替えを手伝っているクリスタに対し声をかける。新井から渡された通信端末には所有者の大まかなバイタル等を計測する機能が付いていた。自身のデータとそれを紐づけした八型改は先ほど、クリスタの体調の変化を感じ取った。


「そのときウチ、メンテナンス作業手伝ってたんでわからないんですよ。何かありましたか?」


 何一つ嘘も含みも企みもない質問。供述通り八型改は作業員たちの負担が減るように、作業時間を少しでも減らすためにデータ面などでメンテナンスを手伝っていた。


「さあ? バカたちに対してイライラしただけだけど……」


 頭を袖から出そうとしているキルを落ち着かせながら片手間に答える。


「そうですか……いえ、見たことない波長だったんで。それとストレスと言うよりも興奮に近いような……まあ、今は落ち着いているみたいなんで大丈夫そうですね」


 その言葉を聞いて、少しだけ真面目に思い出してみたクリスタ。


(さっき……確か、バカどもの羞恥心の無さに……でもそれじゃないなら? そもそもなんでそんな話になってたんだっけ……)


 そして彼女の記憶はちょっとした時間旅行を始める。行きついた先には、一人の男の背中があった。

 男性としては低いながらも、起伏が激しいそれは、あざや傷も多かった。それはまるで鬼の背中そのもののように、悲しいまでの勇ましさを背負っていた。

 陸戦乗りと生傷は、遠い存在なはずである。陸戦乗りが傷を負う時は、死ぬときくらい。それだけ陸戦は高性能であり、それだけヴァルハラは生半可な人間を陸戦に乗せない。

 そのためクリスタの背中に傷やあざは一切ない。彼女にはその傷が、その背中をより勇ましいものとして見えた。


(意外としっかりしているのよね、アイツの背中。安心感があって、それでいて痛々しい……って何考えてるの!)


 クリスタは顔を真っ赤にし、キルの着替えを無理やり完了させ、自身の着替えも手早く済ませた。

 何かを隠すような態度、そして先ほどと同じバイタルの鼓動。八型改はそれらの結果を自分なりに理解したつもりだった。


「そういうこと……ですか。面白くなってきましたね」


 数分後、着替えの終わった鬼丸は八型改へと帰還した。その頃にはクリスタの着替えも終了しており、ロックは解除されていた。


「うん、いいじゃないの、これ」


 クリスタは自身の体に纏われたスーツを確認する。それは白地に赤いラインが入っており、デザインは隼人たちのものと比べ少しだけラインが多くなっている。


「兄さん、よく似合ってる」


 水色のラインが入ったスーツを身に纏い、鬼丸の姿に感想を述べるキルの顔は、何処か期待に満ちている。鬼丸の口から、何かを待つように。


「おう、ありがとうよ」


 鬼丸は笑みを浮かべ、キルの頭を力強く撫でる。キルはまんざらでもなさそうな顔をしながら、それでも少しだけ不満げな態度をとる。


「そうじゃ……ないけど」


「アンタ、少しくらいは察してあげたらどうなの?」


「何を?」


 呆れたクリスタの発言の意図が分からず、聞き返す鬼丸に彼女は余計呆れる。

 人間が誰かを褒めるとき、その裏には様々な理由が存在する。単に相手を称賛する場合、相手の気分をよくするため、何かを隠すため、皮肉。そして返報性を利用し自身を褒めてもらいたいときなど。


「キルの、どう?」


 上目遣いで問いかけられ、鬼丸はやっと理解したらしく頭を撫でる手を速めながら


「よく似合ってるぞ。おそろいだしな」


 とキルに笑いかける。どうやらその言葉を欲しかったキルは、満足した顔で抵抗せず鬼丸に撫でられている。

 おそろいとは言うものの、鬼丸のものはラインが群青色に染め上げられている。


「あ、それとお前も似合ってると思うぞ」


 思い出したかのように告げる鬼丸。彼の視線はキルの頭頂部にあるため、誰に向けられたものかははっきりしていない。


「……あっそ。ありがと」


 返事をするのはクリスタのみであった。

 そんなやり取りを、ハッチ周辺で眺める二つの影。


「本当にあれがあの紅の天使か? ただの女の子にしか見えねぇ」


 目を擦り、顔を赤く染めたクリスタの姿を見た大将が隼人に問いかける。その問いに、驚きで停止している隼人の代わりに八型改が答える。


「本当に信じられないですよね。さっさとくっついて爆発すればいいのに」


 そして彼女はその流れで、疑問をぶつけた。


「ところでお二人はなぜここに? それにパイロットスーツなんて着て?」


「そういえばまだ言ってなかったな。今から俺達も一緒に戦うぞ」


 腕に手を当て力強くアピールした大将は次に隼人を小突き、会話を促す。


「改めて、中島隼人だ。紅蓮のサポートで攻撃に参加する。宜しくな、ヴリュンヒルド八型改」


 親指を立て、上を向く。新井の解析結果によると、八型改の人工知能としての回路は頭部カメラと近い場所にあるとされるため、隼人たちはそこに向かって話しかけている。


「機関部制御サポートが俺、魚住大将だ。宜しく!」

これからも応援よろしくお願いします!

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