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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
海上編第三部~海上神秘~
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第二十二海路 2 電磁レーダ

「どう? なにか見える?」


「いんや。なんにも」


 クリスタの質問に、首を振り否定をする。彼が見つめるのはヴリュンヒルド八型改のレーダー、カメラなどの情報が出力されている画面である。

 八型改の磁気レーダーはとても高性能であるため、微弱な電気も逃さない。それは人間の発するごく小さなものも該当する。それをフルに起動させていると、画面が反応だらけになり必要な索敵が行えない。その為基本的にレベルを下げているのだが、今はそれを第二段階まで高めている。


「上空からの索敵は、案外悪手なのかもな?」


「そんなはずはない……と思うわ。きっと何か……」


 クリスタは諦められず、索敵レベルを第三段階まで引き上げる操作を始めた。しかしこれ以上レベルを上げると、海中の生物までスキャンしてしまい、例えダイシャークをスキャン出来たとしてもそれがどれなのかを判別することが難しくなってしまう。それだけではなく、それだけ強いスキャンをかければ、敵からの逆探知も許してしまう。

 そのリスクを思い出し、クリスタの操作は止まる。


「……キル、コルセア。機首をちょっとだけ上げてくれ。水平じゃなきゃいい」


 鬼丸が何かを思いついたように声を出す。返事の代わりに、素早い操作で角度を作る二人。


「ちょっとアンタ、何するつもり?」


 席のハーネスを外し、自身の持ち場を離れ、ハッチ近くまで歩き出した鬼丸を、クリスタが呼び止める。しかし鬼丸はそれを無視し、ハッチを解放する。

 三人はもともと、自身の席にハーネスで固く固定されていたためその突風と重力の影響はあまり受けなかったが、手すりにつかまっているだけの鬼丸はその勢いをもろに受けた。


「アンタ死にたいの? 危ないからさっさと戻ってきなさい!」


 強風にかき消されないようにクリスタが大声で叫ぶ。しかし鬼丸の返事は、誰もが予想していないものだった。


「三時方向! ダイシャーク一機! 距離およそ三百!」


 胸を大きく開いたヴリュンヒルド八型改から鬼丸が身を乗り出して見たもの。それは見事なまでに周囲と色の違う海域であった。


「ハァ? 何言ってんのアンタ!」

 

 クリスタは索敵画面で指示された場所を確認するが、レーダーは何も捉えていない。


「何もないわよ。おっきな鮫かなんかじゃないの? 」


 クリスタが自身の見解を大声で述べた。その言葉を聞いた鬼丸は少し考えこんだ様子を見せ、体をクリスタに向けた。そして自身の右手を上下に振り、


「疑ってんなら見てみろ。あんなに光を乱反射する鮫が居てたまるか!」


 鬼丸が先ほど目に捉えた影は、小さな光を幾つも乱反射させていた。


「乱反射? そんなの……わかった。すぐ行く。二人とも、きついだろうけど頑張って。すぐ戻る」


 クリスタは鬼丸の言葉に驚き、右手に手を当て考え込む。そして一つの結論を導き出した後、強風の中機体制御に尽力しているキルとコルセアをねぎらい席を立つ。


「任せろ!」


「まあ、これくらいどうってことないさ。あの隻眼が操作を失敗しない限り、だが」


 クリスタはコックピットの壁を伝い、鬼丸の背後に立ち彼の方から顔を出す形で海を見る。そうしないと彼女は再びパニックに溺れてしまうことを、鬼丸も彼女自身も知っていた。


「無理行ってスマン。大丈夫か?」


「無駄口はいいから早くして。どこ?」


 鬼丸は右手で手すりを、そして左腕を横に伸ばしクリスタの体を支えているため顎と視線で場所を指示する。


「あそこだ。だけどなんでレーダーは拾わなかったんだ?」


 陸戦には基本、シャットダウンをあまり行わない。例え動かしていない時でも素早い起動を可能とする為、パソコンのスリープモードに近い状態で待機させることが多い。その為待機中であろうとレーダーは陸戦の反応を拾う。それは陸戦から派生した海戦にも言えることである。


金属片(チャフ)よ。あれでレーダーをごまかしていたんでしょうね。小賢しい。八型改。あの悪趣味な光をマークしておきなさい。今から座標入れるから」


 クリスタは鬼丸の元を離れ、自身の席に戻り座標入力を始める。


「ターゲット捕捉。索敵段階の低下を推奨する」


 いつもなら感情を込めた声で返事をするはずの八型改が、機械らしい返事をした。


「え、今のなに? 誰?」


 ハッチを閉めている鬼丸が驚き、周囲をキョロキョロと見回した。しかし彼の視界には、イレギュラーは一切映らなかった。


「聞こえた。なんか女の声だったよ」


 近くに居たコルセアと顔を見合わせる。二人の顔から少しずつ血の気が引いていく。二人はその声が、八型改のものとは思えていないようだ。

 鬼丸はその場で体を動かし、言葉を紡ごうとする。しかし言葉が出てこない。そこに追い打ちをかけるように、八型改は機械的な声で音声出力を行う。


「警告。パイロット紅蓮鬼丸、雪酒田のバイタルに異常を確認。同乗者はこれの対処に当たることを推奨する」


 その声を聞いて、鬼丸が声にならない叫びをあげた。そしてコルセアは、歯を食いしばり、なんとか理性を操縦桿に留めている。

 その姿を、愉快に笑う女が一人。


「楽しそうで何よりね鬼丸。何かいいことでもあった?」


「人が悪いぞクリスタ」

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