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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
海上編第三部~海上神秘~
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第二十海路 3 反転する世界

「アルタ、まだあのデカい陸戦は見えないぞ」


双眼鏡を覗いたハルカスが海面状況を伝える。一般的に陸戦の全長は二メートル前後とされているため、八メートルを超す巨体を持つヴリュンヒルド八型改は、とても異質な機体となっている。


「こりゃ向こうとやり合ってんな。船速ちょっと落とせ。慎重に近づいて漁夫の利頂戴するとするか」


 アルタはパイレーツスパイトを修理する際、それまでの時代遅れな帆の代わりとなる動力を積み込んだ。四機のスクリューによって生み出される推進力は見た目からは想像できないほどのものである。またその速力に耐えるために全長三十メートルもある木造船の正面を鋼鉄で覆った。

 アルタの指示でスクリューの回転が落ち、発生する波も弱まる。海賊達の耳には静かに打つ波の不安定なパーカッションのみが木霊する。

 その時である。見張り台に登っていた一人から、報告が入る。


「アルタ、なんか空から音聞こえないか? どんどんデカくなってやがる」


「飛行機かなんかじゃないのか? いや、空、まさか!」


 何かに気が付いたアルタは急ぎ双眼鏡をハルカスから奪い取り、それを目で飲み干すかのように反る。


「まさか、まさかまさかまさか!」


 その双眼鏡には一直線にこちらへと向かう流星の姿が、アサルトライフルを構え急降下を行うヴリュンヒルド八型改の白いボディがはっきりと映っていた。


「回避、回避運動だ!」


「どっちにだ!」


 状況を理解しきれていない操舵手からの返答に、アルタは答えられなかった。

 右に避けようが左に避けようが被弾は必須。そんな状態で回避を行えるほど、アルタには余裕がなかった。


―――


「総員、第二次攻撃用意!」


 最初の奇襲で五割近くをペイントした八型改の中では、第二次攻撃の用意がなされていた。

 一回目の襲撃は完璧に決まり、回避も反撃も出来ないパイレーツスパイトに対してペイント弾を雨あられのように浴びせた。

 二回目以降は対策が立てられるとは言え、初撃でこれだけの損害が与えられている以上パイレーツスパイトを落とすことは容易い。


「あと二割弱ってところね……。次は相手の真上から降下しましょう」


 最初の奇襲はパイレーツスパイトの手前上空で降下を開始したため、早期に気付かれやすいが、メリットとして流れで上空へ離脱することは簡単だった。

 対して今から行う予定の方法は、真上から降下を始めるため側部につけられた主砲の射角から完全に死角である一方、撤退が遅れるといったデメリットもある。


「多少の被弾は覚悟の上よ。それに海賊達の小銃じゃこの機体面積に対してあまりに口径が小さすぎる」


「つまり気にするほどでもないってことか! 考えなくていいのは楽で助かる」


 クリスタの発言に指を鳴らして応える鬼丸。それを聞いてコルセアが少し申し訳なさそうに、独り言をつぶやく。


「まあ当然なんだろうけど、アイツらが不憫でしょうがないわよ」


「相手がこの化け物コンビじゃあ、あの時代遅れの海賊達でなくとも不憫であろう。そうだろう隻眼の海賊よ」


「……それキル、もしかしてアタシのこと言ってんのかい?」


「何か不都合か? そろそろ接敵する頃合いだろう。高度上げるぞ」


 大きく操縦桿を動かしたキルの動きに連動し、空高くまで上昇する。そしてクリスタが予め指定していた高度まで到達した時、キルは操縦桿を手放した。


 重力へと抗う力を失った八型改はしばらくその場で止まったが、やがてその高度を少しずつ下げていく。


「皆、ちょっとの我慢だよ!」


 コルセアが放った威勢の良い声を合図に、八型改の空と海が入れ替わる。自身の視線を海上に浮かぶ一隻の海賊船に向けたその白い機体は、その集弾性が劣悪なアサルトライフルのスコープを覗かない。

 その広く構えた視界には、急降下時に発生する空気を切り裂く音に反応した海賊達が慌てふためく様子が映されていた。


「鬼丸、この一回で沈めるわよ。外したらわかってんでしょうね!」


 沈める、というのは言葉のあやのようなものだ。


「誰にモノ言ってやがる! 外すわけないだろ」


 姿勢を前に倒し、背中を丸めモニターにかじりつくように海賊船の姿を把握する鬼丸と、逆さまになった世界でもいつも通りの涼しさを見せながらも、鬼丸と激しいやり取りをするクリスタの姿は、いつも通り異質であった。


「全弾必中! 覚悟しな!」


 鬼丸の操作によって人にとっては重すぎる引き金を、軽々しく引き続ける八型改。奇襲は大成功に終了し、パイレーツスパイトの表面七割五分はペイント弾の痕で埋め尽くされた。


「撤退、撤退じゃ!」


「うわっ、ペンキで甲板がヌメヌメする」


 指揮系統には混乱が生じ、速やかな撤退も出来ていない様子を確認したクリスタは、即座に離脱、上昇の指示を出してから一人、口角を上げる。


「ねえ鬼丸。船腹も塗れたりする?」


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