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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
海上編第三部~海上神秘~
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第二十海路 1 合同演習

「おい坊主、次はこっちだ」


 ユナは炎天下の中、土木作業に勤しんでいた。幸い彼が作業中に使う工業用陸戦イナバ百式は一人乗りな上にエアコンが完備されているため暑さは感じていない。


「わかりました親方」


 不機嫌そうに返事をしたユナは、親方の元へとイナバで向かう。足の側面についたキャタピラは使わず、一歩一歩歩むその機体は、人工知能非搭載な上に一人乗り、そして用途も限られているためにとても小柄である。


「陸戦って言うよりこれ、パワードスーツとかの類だろ」


 そう呟き、黒い強化ガラスの天井越しに空を仰ぐ。そこには雲一つない空が続いていた。


「やっぱりこの国から、四季は消えたんだな」


 温暖化が加速した今日、日本から四季は消えていた。三月とは思えない暑さが彼の外に広がっている。


「紅蓮さんたち、今頃何してるんだろう」


 溜息交じりの言葉の後に、親方からの一括がやってきた。


「ユナてめぇ! サボってんじゃないぞ!」




 所変わって日之入島近海。海面に立つ三機のダイシャーク格闘形態とパイレーツスパイト、そして少し離れた岩場に立つヴリュンヒルド八型改の姿があった。


「では今一度確認する。この合同演習は、陸戦がカイナ島を襲った体で行う。ダイシャーク三機とパイレーツスパイトが防衛側、ヴリュンヒルド八型改は攻撃側として行う」


 新井の通信が各陣営に伝達されている。


「各機、及びパイレーツスパイトは被弾面積が五割を超えた時点で戦線離脱開始。七割で轟沈とする。表面のペイントを確認し、撤退も視野に入れて立ち回れ」


 それぞれに配備された弾薬はペイント弾である。これを撃ち合い、その表面積で損害率を想定する。

 また八型改とダイシャークの近接武器はそれらを模した筆に変えられており、先端には黄緑色のペンキが付けられている。


「それでは三分後より戦闘開始とする。各自最終調整に入れ」


 新井の通信が切れるのを合図に、各部隊が準備を始める。


「シャークフォース、いつも通りやるぞ。あのふざけた二人にこの島を守ってきた経験をしっかり見せつけてやれ!」


 零号機内で腕を組む鮫島。シャークフォースの制服であるマリンスーツに身を包んだ彼らは、それぞれ落ち着いた雰囲気で闘志を漲らせる。


「アルタ、これは一種のクーデターじゃないのか?」


「馬鹿野郎! キャプテンがいなくても出来る所を見せて、安心させてやるだけだよ」


 ハルカスの頭を勢いよくひっぱたいたアルタは、海賊達に号令をかける。


「防衛なんて俺達の仕事じゃねぇ! ただこれに勝てばヴァルハラの金で宴会が出来る。奴らの財布を奪うつもりで挑め!」


 新井は海賊達に訓練の協力と引き換えに、多額の資金を提供することを約束した。というよりもアルタが無理やり提示した条件と言っても過言ではない。

 アルタが指揮を執っているのも当然、コルセアはヴリュンヒルド八型改にて攻撃に参加している。


「点呼を行います。番号、始め!」


 クリスタの切れのある声がコックピット内に響く。


「イチ」


「イチィ」


「いち」


「ゼロワン」


 鬼丸、コルセア、キル、八型改の順番で皆同じ番号を口にする。


「……アンタたちねぇ」


 クリスタが視線を落とし、小さな溜息をつく。


「もともと番号を決めていないクリスタが悪いんだろう」


 振り向きながらクリスタの背中にそう投げかける鬼丸は少しだけ黒い笑みを浮かべていた。大方こうなることが想像出来ていたのであろう。


「とりあえずここは改善点ね。それと当然のように乗っているキルについてはツッコまないことにするわ。なんかもう気にしていたらキリがないような気がして」


 右人差し指と中指、薬指で額を抑えるクリスタ。


「兄さんが乗るなら、キルも乗る。なにも、おかしくない」


 クリスタの後方、増設された謎の操縦席に座ったキルはそう言った。クリスタは宣言通りそれ以上の深追いはせずに大きな溜息をつく。


「んで、どうすんだ? 目標の防衛ラインまでは海を渡らなけりゃならないけど……」


 クリスタの足元前方の操縦席に座ったコルセアが上を向く形でクリスタに問いかける。攻撃側のクリスタ達は、防衛ラインまでたどり着くことが勝利条件となっている。


「パイレーツスパイトならまだしも、ダイシャークと水中でやり合うのは不味いわね。機動力が違い過ぎるもの」


 ヴリュンヒルド八型は陸上戦闘機である。どのような状況にも対応できるように設計されているものの、水中戦闘を主軸に設計されたダイシャークに水中戦では劣ってしまう。これはヴリュンヒルド八型改だけに関わらず、ほぼ全ての陸戦に共通する。

 つまりこの海はカイナ島を守る自然の要塞と言っても過言ではない。


「そこで我々は、多少不本意ながらもキルの力を借りたいと思います。飛行能力は彼女しか使えないことがわかった以上そうするしかないんだけど……」


 この演習の少し前に、八型改の飛行訓練が行われた。前回の戦いにて突如現れた操縦席に鬼丸、クリスタ、そしてコルセアが座ってみたが、誰一人翼を発生させ飛ぶことは出来なかった。


「大丈夫。キルも何となくで飛んでるから」


 だから皆動かせなくて当然、と言いたいらしい。しかしそれは何の解決にも、そもそもフォローにもなっていない。


ファンアートが欲しいッス。(欲望)

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