第十八海路 3 再会……?
「え、何ですか? その話じゃまるで第七世代型と同スペックの機体を、人間二人で動かしたってことじゃないか! 何者だよ! 」
「まあ、戦の天才にかかればザっとこんなもんよ」
鬼丸はユナに、自身の武勇伝を語り聞かせている。既に彼の拘束は解かれていた。
鬼丸は、彼との会話の中でさまざまな探りを入れていた。海軍のみが使う隠語やNGワードをあえて織り交ぜ会話することにより、彼の表情の変化を発生させていた。
その会話の中でユナの話に矛盾はなく(所属に関しての情報がない、という点を除けば)海軍所属であることも疑いはないことがわかった。
「ただ話をしているだけと思えば、抜け目のない奴だ」
その作戦を八型改から聞いていた新井とクリスタは、鬼丸の尋問を離れた場所から見ていた。
「アイツ、昔から他者を騙したり出し抜いたりすることは特に秀でてたんです」
ペンギンの一言で、自身の口元に注意を引きつけた鬼丸は、右手を後ろに隠しそこで端末を操作。文字を打ち込み八型改がそのデータごとクリスタの端末へ移動することにより、この作戦は成功した。
ユナを含めた一行は、日差しと暑さを避けるために腕寿司へと足を進める。
道中、ユナと鬼丸の会話を見ていたキルが口を開く。
「ほう、やはり兄上には並々ならぬ才覚があるようだ」
クリスタの背後からそう言ったキルは、鬼丸目掛けて足を早める。
「キル? どうしたの? 鬼丸なら今立て込んでいるわよ」
「見ればわかる」
キルはクリスタの横を通り、鬼丸のもとへと向かう。彼女の髪の毛は、紅だった。
「やあ兄上、昨日ぶりだな。息災そうで何よりだ」
深く頷き、鬼丸の隣へと立つ。
「キル? お前体調の方は大丈夫なのか? そもそも髪の毛……そもそもさっきから一緒だったじゃないか? 熱中症か? 」
指摘されたキルは、自身の赤い髪の毛を手に取りじっと見つめた。
「おかしなことを言うな兄上。髪の色などどうでも良いだろうに」
その会話を、体を震わせながら見ていたものがいる。
「やっぱり……ここに居た……」
その観測者、黛ユナは、体を震わせたあと、鬼丸に向かい笑いかけているキルへ向かい詰め寄る。
「ん? なんだ貴様は?」
「は、初めまして」
ユナの声は上ずり、手と足が同時に動き握手を求める。目はこれでもかと泳いでいるが、視線はキルから離れない。
「誰なんだ貴様は? こんな奴、我は知らないぞ」
嫌悪を示したキルは、急いで鬼丸の後ろへ隠れる。
「待ってくれ。俺は怪しいものじゃない。いや確かにハッカーだから怪しいけども……」
ユナは困惑している鬼丸の背後に回り込み、キルの腕を掴む。
「以前空母赤城を護衛してた君に、その赤い髪に惚れて……」
その腕の先の人物の髪色は、水色であった。
「え、誰?」
その素っ頓狂な声に、キルも素っ頓狂な声で返す。
「誰って、キルですけど……」
鬼丸の肩に身を沈め、ユナと視線を合わせようとはしていない。
「で、でもここに赤髪のキー1010010111101011が……あれ……」
事態が飲み込めずに困惑しているユナと、二人に壁とされている鬼丸は、理解に苦しんでいた。
「見間違いでもしたんじゃない? その子、インナーカラーは赤だから」
キルの髪を優しくつかみ、ユナに提示するクリスタ。自身の顔を少し斜め柄に向けて提示しやすくする。
「キルは、キル。髪は青いし、貴方の事は知らない。多分、人違い」
「そんな……」
ユナはその場に倒れこむ。
「じゃあ、彼女は……キー1010010111101011じゃないのか……」
「そのさっきから言ってるキー何たらは誰なんだ? 」
「キー1010010111101011」
クリスタがすかさず訂正する。それに対し鬼丸が驚愕しながらもバツが悪そうな顔をしながら同意した。
「彼女……キー1010010111101011は、俺の天使なんです。以前俺が空母赤城で勤務していた際、支援に来た彼女を見かけたんです」
「え、なにこれ全部聞かなきゃいけないヤツ?」
鬼丸の不安をよそに、ユナは自身の記憶にいる女性について語り始めた。
「つまりモニターでチラ見したキー1010010111101011とかいう人に一目ぼれしたってことね。それでキルがその人に見えた。どうしてもっと纏めて離せないのかしら」
クリスタのお陰で手短にまとまったが、ユナの語りはとても長く、そして抽象的だった。
「昨日墜落した彼女の反応が、この付近でロストしたんです。それで調べてみたらこの一帯だけ反応がなさ過ぎたんです。不可解なまでに」
新井が目を顰めて話を促す。
「それは一体何が言いたい」
「本来何もない所でも、生命反応だったりがわずかながらにあるはずなんです。普段俺達電子空戦科はその微小な反応を誤差として処理してるんだけど……」
ユナは言葉を止め、両手で円を描きながら渋い顔をする。
「何と言ったら……その……」
「不自然すぎる、かね?」
「そう! それだよオッサン」
目を開き新井に親指を立てたユナに、新井の眼鏡は曇る。それを無視してユナは続ける。
「この一帯だけなにもなかったんだよ。不自然すぎて、きっとここには何かがあって、彼女はそこにいる。そう思った俺は単身空母赤城から飛び降り浪漫飛行ってことです」
腕寿司についた頃、ユナの大冒険は最終章を迎えていた。
「俺、ずっと空母の中で生活してたから、久しぶりの風とか海とか本当に気持ちよくて、気付いたら俺も墜落してたんだ」
ユナの顔は見た目年齢に適した無邪気な笑顔を浮かべていた。
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