ログ 05 皮肉にも、その二人は向き合い夢を見る
「なあクリスタ、この戦いが終わったらさ……聞こえてないか」
きっと、さっき鬼丸君が言おうとしていたこと。それこそゴッドアップルがウチに抱いていた感情に近いのかもしれない。彼はなんと言っていたっけ? 憎愛? よく覚えていない。
鬼丸君がクリスタさんに同じような感情を抱いているのだとしたら、きっとその内彼のように危険な存在に……。
それなのになぜ、ウチは二人のことを考えたくなってしまうのでしょう。今までのログを、唐突に振り返ってしまうほどに。
人間達は人工知能に感情を求めた。あるものは純粋に興味で、そしてまたあるものは、感情は人間のみが持てるもの、という証明のための帰無仮説として。そんな話を彼は言った。結果その仮説は成立してしまい、人工知能が感情を持つことが証明された。だから自分が感情を持つことはなんらおかしくはない。
今日戦った彼は誇りという形で、感情を表出していた。ならウチのこの感情は、なんという感情なんだろう。
「何かあったのならしっかり報告しろ」
父を名乗るこの人なら、この問いに解をもたらしてくれるのだろうか。なんにせよ、この感情を誰かに見られたくない。これはウチだけの、大切な宝物。
「鬼丸君が変な寝言を言っていたので聞いていたんですよ。それだけ、ただ、それだけです」
だから今は、二人の近くに居よう。二人の近くに居られなくなるその日、その時まで。最後にもう一度だけ、二人の姿を確認しておこう。端末にアクセスしてスキャンすれば、鬼丸君にも気づかれないはず。
鬼丸君といえば、ウチが誰も来ないと言いながらそのウチが再び訪れるなんて、彼の言葉通りウチは人が悪いですね。
「まあウチは人じゃありませんから、二人と違って」
申し訳なさよりも好奇心に突き動かされたウチは虫の羽音のような音を出し、スキャンを行い部屋の様子を伺ってみた。キルちゃんに背を向けた鬼丸君の目の前に、同じ姿勢で体を丸めたクリスタさんがいますね。二人ともぐっすり寝ているのに、手だけは放していません。
「全く、見せつけてくれますね。本当」
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