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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
海上編第二部~罪偽蒙妹~
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第十五海路 3 着剣! 接近戦用意!

「増援よ!」


 その正体は、巡行形態で高速接近するダイシャーク零号機であった。


「聞こえるか、二人とも。今そちらに向かっている。コイツを使え」


 新井がモニターを介して伝達した情報。そこには一丁の陸戦用突撃銃が映りこんでいた。


「見たこともない。これって制作はどこのものですか? 装弾数は? ブレは、レビューは?」


 クリスタの知識の範囲は、陸戦だけにはとどまらない。陸戦が扱うとなれば、関連商品にも目がない。


「まあ、なんだ。今は気にするな」


 零号機の反応が八型改の足元近くまで接近する。


「ダイシャーク、急速浮上」


 新井の号令により、鮫島たちはダイシャークを浮上させる。先頭部分を海面に向け、垂直に浮上する。これこそダイシャーク本来の急速浮上である。その機体は先日の戦いの傷か、至るところに損傷が見られ、戦闘は不可能に近いといえる。


「しっかり受け取れよ!」


 機首を大きく振ることにより、ダイシャークは口に咥えた突撃銃を空中へと投げ飛ばす。それは所々内部構造が露見しているメカニカルなデザインをした、シャープなものであった。

 鬼丸は慌ててその赤い持ち手を掴む。


「赤い……。もしかしてこれは焔の」


「ああそうだ。お前らが倒した焔三式の火炎放射器を改造したものだ。丁寧に扱え」


「原型は八九式小銃ですね。記録にあります」


 八型改が弾倉確認をしていると、背後から水柱が現れた。


「特命本部の皆様、追加武装です」


 ダイシャーク一号機が零号機同様に投げ渡してきたそれは、大きな刃物であった。


「陸戦用にしては小さくないか、これ?」


 疑問を抱きながら、突撃銃を左に、そして小型の刃物を右手に構え、臨戦態勢を整える鬼丸に、クリスタは勝ち誇ったような口調で語る。


「戦の天才が聞いてあきれるわね鬼丸」


 八型改はその突撃銃と刃物を上に掲げると、腕を交差させる。

 直後、巨大な声で高らかに、彼女は叫ぶ。


「着剣!」


 八型改は交差させた腕を解く動作の最中、刃物を突撃銃の先端に取り付けた。


「銃剣って、一応剣、よね」


 クリスタは後ろを振り向く。鬼丸は彼女が何を言いたいかわかっているようで、軽く諦めているような顔をしている。


「ハイハイ。近接ならお前さんの担当だろ」


 クリスタが操作していたAチームの機体の主な武装は接近武器である。そのため刀などの近接武器に関しては、武装担当の鬼丸よりもクリスタに分があり、二人はそれを承知している。

 鬼丸は武装用の操縦桿から手を離し、お手上げのポーズをとる。しかしクリスタはその動作を不思議そうに観察する。


「何をしているの?」


「いやだってお前が銃剣使うんだろ?」


「私も、使う」


 も、の部分を強調するクリスタは顔色を一切変えていない。


「じゃあ操縦は誰がするんだよ」


 鬼丸がそう告げた瞬間、警報が鳴る。


「二人ともごめんなさい。さっきまでメンテのまま警報切ってたの忘れてました。未確認機急速接近。足元六時の方向、ダイシャーク三号機です」


「ってことはアルタか。次は拡張マガジンあたりか?」


 鬼丸の予想は大きく外れた。八型改のメンテナンスにリソースを割いたため、ダイシャークは応急処置で大海を進む。その口には、追加兵器らしきものは見られない。アルタが八型改へと通信を開く。


「お前たち、また出撃だってな。全く忙しい奴らだ。そんなお前たちに、プレゼントだ。受け取れ。野郎ども、上げ舵イッパイ。しくじるんじゃねぇぞ!」


「ヨーソロー」


「ヨーソロー」


「アイサー」


 通信越しに聞こえてくる海賊達の怒号が、二人を引き締める。

 一度八型改の足元を通り過ぎた三号機であったが、転進、後に急速浮上を行い、大きく口を開け八型改に噛みつくかのごとく体勢になる。


「今です。キャプテン!」


 アルタの声は、腕を組みダイシャークの口内に佇むマントを羽織った女にかけられる。


「さあ、海賊の跳躍を見せるよ!」


 その女は、八型改とダイシャークが垂直になった瞬間に助走をつけ、宙へと飛び出した。




「コックピット外、ハッチの部分に何か張り付いた。これは……」


 大きな音を立て、何者かが八型改のハッチ付近に張り付く。その姿に覚えがあるクリスタはハッチを開ける。その正体こそ、眼帯をしたコルセであった。


「コルセア!」


 鬼丸の驚きを横に、コルセアが喋り出す。


「全くひどいよな八型。二人ともアタシの存在忘れてやがるんだから」


 八型改の真横を通り抜けたダイシャークはそのまま、頭を下に水泳選手顔負けの飛び込みをもって戦線を離脱する。その際に発生した飛沫が下から吹き上がり、コルセアの登場を劇的に演出する。


「それは……申し訳ないわ。ごめんなさい、酒田」


「ま、その場にいなかったアタシも悪いんだがな」


 コルセアが体を完全に内部に入れたことを確認したクリスタはハッチを閉める。


「さっきは助かったぜ」


「ま、アタシに掛かればあれ位どうってことないさ。それよりクリスタ、操縦代わりな」


 コルセアは勢いよくクリスタの前方にある第一操縦席に腰を掛ける。


「十秒後に操縦代わる。確認宜しく」


「ま、本職に任せておけって」


 コルセアは腕に手を当て、不適な笑みを後ろへ振りまく。その一番後ろ、クリスタとは別の赤髪の少女を発見すると、彼女を二度見する。


「……で、誰だあいつは?」


「キル……らしい」


 力無く鬼丸が答える。コルセアの知るキルは、水色の髪をした弱気な人間であった。少なくとも今のような覇気は一切纏っていなかった。


「そ、そうか。最近の子はよくわかんないな」


 コルセアは鬼丸兄妹から目をそらし、身を後ろに乗り出しクリスタに耳打ちする。


「んで、実際のところ誰なんだあの子?」


「私にもさっぱり。そもそも私、アンタに関してもわからないことだらけなのだけれども」


 クリスタはコルセアの正体を知らない。正確には知っているが、信じられていない。鬼丸は事前に本人から話をされていたためにそれを飲みこむことが出来ていただけである。


「ま、そう細かいこと気にすんな」


 その後コルセアは再び鬼丸の方へ目をやる。


「秘密を守る男は出世するよ。アタシが保証したる」


 そう言い、返事を聞かず前を向き操縦を開始する。

 その姿を確認したクリスタは、自身の座る席を立ち、鬼丸の座る席まで趣くと、手を払い鬼丸に何かを訴える。


「ん」


「ん、じゃなくて何が言いたい」


「イス、半分開けなさい」


 突拍子もない発言に、鬼丸は驚愕し声が詰まる。クリスタの訴えとしては、正規の操縦者が来たため、自身も攻撃に参加する、というものであった。


「別に自分の席で操作すればいいだろ」


 現在のヴリュンヒルド八型改ならそれが可能だ。別の操縦席からでも操作が出来る。


「それじゃあ動きが合わない。隣、座るわよ」


 強引に席の半分を占領するクリスタは、眉一つ動かさない。対して鬼丸の顔はあれこれ忙しく動いている。この場合、鬼丸の方が珍しく大衆的な行動をしている。


「全く、ウチのエリート様は相変わらず可愛いねぇ」


しみじみと語るのはコルセアである。本土に居た頃から彼女は、他者の気持ちへの迎合をあまり表立って行ってこなかった。その為初めのころはその優れた容姿に惹かれた職員たちに囲われていたが、次第に孤高の存在となっていった。

 ただ一部の例外を除いて。自身の存在を偽った者、自身の目的を偽ったモノ、そして……。


「お前はもう少し他のことも勉強しろ陸戦オタク」


「他の事って?」


「あれだよあれ……心理学とか」


 その姿をミラーを使い懐かしむコルセアは一人、呟いた。


「ただいま」

変らぬご愛好ありがとうございます! そして初見さんもありがとうございますッス。面白いと感じていただけたなら幸いです。宜しければ高評価、感想やレビューなどをお願いします。

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