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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
海上編第三部~海上神秘~
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第三十二海路 8 アクアリング

「素手なら、まだこちらに勝機があるというもの。焦って武器も持たず飛び込むとは、戦の天才が聞いて呆れるぞ鬼丸」


 ゴッドアップルはヴァルキリア・シャークが踏み込んでくることを予測し、反撃の構えをとる。両者とも現在、徐々に海底に近づきながら睨みを利かせている状態。少しでも上昇しようと体を動かせば、その隙を突かれる。


「このまま膠着状態が続けば、酸欠で死ぬのは貴様らだ!」


 焦り、無謀な突撃をしてきたところを、ゴッドアップルは逃がすつもりはない。こちらから仕掛ける必要はない。そのちょっとした慢心が、ヴァルキリア・シャークの背後に奇妙な波紋が生まれていることを見逃した。

 突如として、水中の圧力を感じさせないほどのスピードで距離を詰めるヴァルキリア・シャーク。


「甘い!」


 ジャックマークⅡが拳を掲げ接近してきたヴァルキリア・シャークの顔面目掛けて伸ばされる。しかしそれは寸前の所で空振りに終わる。

 ヴァルキリア・シャークの機動力は、何も横移動だけに活かされるわけではない。三百六十度、青い結界を味方にし、縦横無尽に駆け巡るその姿を、並の陸戦が捉えることは不可能だろう。

 垂直に浮上し、海面に背を向けそのまま急潜航を始める。目標は勿論、ジャックマークⅡだ。


「しまった、真上か!」


 その手には、小さな刃物が握られていた。上昇したことで水圧が弱まり、何とか取り出すことの出来た銃剣の剣先を、ジャックマークⅡの横に伸びた右側頭部に突き立てる。


「このまま追撃。方法は任せた!」


 クリスタの指示に、皆彼女の手足のような素早さで対応をする。口から零れるのは、愚痴でも皮肉でもなく、必要最小限の情報と、戦士の雄叫び。

 一度遅れをとったジャックマークⅡは、そのまま翻弄され続ける。水中で機動力を活かしたアクロバティックな立体攻撃を繰り出す鬼丸は、思考と出力のタイムラグが、マイナスになっているように感じられた。思考をするよりも早く、手が動いている、と。

 コルセアとヘルも、その攻撃に合わせるように機体を動かす。人工知能である八型改のサポートがあるとはいえ、少ない口数でここまでの連携が出来るのは、彼らがお互いの動きを予測した上で、自分の行動をしているためだ。


「一旦距離とって!」


 またそれら独立した思考を、クリスタという司令塔が上手く扱えていることも起因しているだろう。


「お待たせしました皆さん! 飛行機能、自己修復完了です!」


「総員、アイツを空中に突き上げるわよ!」


 有利な立ち回りが出来ていても、こちらが呼吸をする以上、水中で戦い続けることは出来ない。それを理解していた八型改は、自身の機能をいくつか制御し、その余ったリソースを使いスラスター及び飛行機能の回復に努めていた。

 クリスタの指示を受け、ヴァルキリア・シャークはジャックマークⅡの真下へ潜る。海底に足を突き、足を開き、天を仰ぐ。


「な、何をするつもりだ!」


 ヴァルキリア・シャークは両こぶしを突き出し、曲げた膝を一気に伸ばす。浮力と推進力が合わさったそれは、黒い塊を突き上げる。

 海面を突き破った二機はそのまま、空中へと躍り出る。拳を押し出し、ジャックマークⅡを更に突き上げると、ヴァルキリア・シャークは水飛沫で輪を描きながら後方宙返りを行い、その長い足でジャックマークⅡを蹴り飛ばす。

 鋼の装甲は、ジャックマークⅡの装甲を砕き、彼の右腕は海中へと沈んでいった。


「腕、腕ガァ!」


「合体解除! 姿勢制御を優先して!」


 スラスターから切り離されたダイシャーク二機は、ジャックマークⅡの腕を追うように海面へと落ちる。

 そしてダイシャークがあった場所からは、先端にかけ青く染まる、エネルギーの翼が再誕する。


「ヴリュンヒルド八型改、完全復活!」


 ダイシャークがヴリュンヒルド八型改の背後へ、水柱を作る。


「バランスが保てない! 腕の損失分の計算を」


 何とか海上に留まろうとしているジャックマークⅡに対し、八型改は淡々と作業を進める。

 それぞれの関節部が解放され、内部に格納されていたARのアタッチメント等々が手元へと飛来する。


「アサルトモード! そろそろ別の形態も欲しいです!!」


「ごちゃごちゃ言ってないで、トドメ行くわよ。ヘル!」


 振り返り、視線を合わせるヘル。太陽に向かい、急上昇を行った八型改は、一定の高度で上昇を止め、狙いをジャックマークⅡへと定める。


「行くぜ八型改! ふざけたアイツをぶっ飛ばすぞ!」

「ハイ! バカ兄貴に、ウチらの力をわからせてやります!!」


 右足を出し、降下のエネルギーを蹴りに活かそうとする八型改と、トリガーを引きながら片手で誘導弾などの操作をする鬼丸は、大声で勢いそのままをぶつける。

 火薬の匂いがコックピットになだれ込むほどの勢いだった。どんな装甲だとしても、この雨あられを防ぐことは出来ないだろう。


「クッ! たかが小口径が!! 誘導弾だと! おのれ!」


 鉛が鉛を呼び、道化師の体の至るところに傷や風穴を開ける。直接的な交戦距離まで近づいた両者は、雄叫びをあげながら感情に任せ武器を振るう。


「オオオォオ」


「行けぇぇええ八型改ィ!」


「バカ兄貴ィイイイ」


 その真っ白な足は、鋼を貫く。


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