イレギュラー〈2〉
食堂内に響き渡る悲鳴を聞きながらも、僕の頭はまだ冷静さを保っていた。
状況を理解しようと、必死に頭は回り続けている。
「……七篠、お前」
机に突っ伏す舞子さん。倒れた衝撃で、彼女のうどんはそこら中に散らばっていた。流れる血。ぽたぽたと、少しずつ床に黒い染みを作っている。彼女は動かない。動けない。
どうして。
何が起こった。
簡単だ。至極、簡単だろう。
「……ど、どうして? 先輩、どうして先輩は私を……?」
七篠が、舞子さんを、ナイフで刺したからだ。
流石に頭を刺されて生きていられる人間はいない。
「先輩、先輩は私を睨まないでください。私は、先輩の為を思って……」
駄目だ。周りがうるさくて七篠の声は聞こえない。それどころか、彼女は駆け寄ってきた生徒や教師に組み伏せられている。僕を見上げる瞳が、酷く綺麗だった。
周囲の声も聞こえなくなる。
僕は椅子に座ったまま、舞子さんをじっと眺めた。
何も、何一つ変わりはしない。彼女は倒れたままで、血を流したままで、息を止めたまま、命を終えたままだ。
随分とまあ、余計な事をしてくれたと、素直にそう思う。
七篠が何を思って凶行に走ったのかは分からない。彼女が真に僕を思って、分かっていたのならこんな事はしない筈だ。
案外呆気ないイレギュラーの死を見つめながら、深く息を吐く。
どうしようもない。疑いようもない。これは、完全に失敗だ。だから僕はこれ以上何も思わないよう、抱えないように目を瞑る。
だが、様子がおかしい。何かがおかしいと気付いた。阿鼻と叫喚に包まれた、死後の世界の地獄よりも地獄らしい状況の中、僕は胃から食べたものを戻しそうになる感覚に襲われる。
「……そんな……」
どうして、どうして、どうしてだ。
何故、世界は終わらない。
意識が薄れない。眠くならない。
チャレンジに関わった、ループに関わった者が死んだ。
なのに、どうして世界は巻き戻らない。
僕はどうして、ここにいる。真っ白な、死後の世界に連れて行かれないのだ。
……まさか。その、まさかなのか?
「おいっ、君もこっちに来るんだ!」
「そこから退いて!」
誰か――恐らく先生――に肩を掴まれるが、僕の意識は凍ったまま。体を動かす気力はなかった。
「この子、ショックを受けてるかもしれないわ。ね、大丈夫だから? 落ち着いて、ゆっくりと体を動かして、ね?」
しまった。完全に失念していた。
舞子さんはチャレンジに関係がある。ループもしている。だが、彼女はあくまでイレギュラーなのだ。チャレンジャーではない。だから、僕たちとは違う。置かれた状況は似ていても、縛られている条件が圧倒的に違い過ぎる。
だから、多分そうなのだ。
僕、明石さん、七篠はチャレンジ中に死んだら死後の世界に有無を言わさず連れ戻される。
舞子さんは、違う。彼女はチャレンジ中に死亡しても死後の世界には行けないのだ。世界が巻き戻るには彼女の死だけじゃ足りない。と言うか、関係ない。僕らチャレンジャーの内誰かが死に、世界が巻き戻る時、ついでに舞子さんも死後の世界に行けるんだ。そうでないと、この状況は説明が付かない。
駄目だ。
イレギュラーは、チャレンジの邪魔をする存在は消えた。だけど、このままチャレンジをクリアしても意味がない。仕方ない。僕の目的は達成出来ないまま、七篠は殺人犯の汚名を着させられた――いや、着たままだ。それじゃあ、駄目だよな。
ともかく、終わらせないと。
「お、お?」
肩を掴んでいる腕を振り解き、僕はゆっくりと立ち上がる。
「おい、大丈夫か? 大丈夫なのか?」
もう一度掴もうとしてくる太い腕。邪魔だ。死ぬほど、邪魔だ。
「触らないでください」
「……なっ!?」
七篠、お前に言いたい事がある。だけど、このままじゃお互いどうする事も出来ないよな。
「……ふう」
一度、終わらせないといけないよな。
ごめん。ごめん。本当にごめん。
心の中で何度も謝罪を繰り返す。そして、僕は、
「ひっ、あ……!」
舞子さんの頭に刺さったままのナイフを、
「うわああっ」
引き抜いた。
誰かの悲鳴と、何かの泡立つ音とが混ざり合う。手には、生々しい感触がへばり付いたままだ。
「……先輩、駄目、駄目っ!」
痛いだろうな。苦しいだろうな。けど、そんなの慣れっこだ。怪我なんてどうでも良い。どうせ向こうに行けば、全て元通りなんだから。
戻らないのは、心と記憶。
僕がここで死に、世界が巻き戻っても変わらない。僕は目の前で舞子さんを殺され、舞子さんは殺され、七篠は殺した。
だけど、だけど……っ。
「いや、いやっ、先輩、先輩先輩先輩っ! 駄目っ、だめええっ!」
……僕は、これ以上誰に謝れば良いんだろう。
目を開ければ、そこは。
「いよぅ、死にたがり。三途の川じゃなくて残念だったな。で、どーすんだよ。まだ続ける気はあんのか?」
ああ、ここは変わらない。いつだって寂しくて、いつだって厳しい世界のままだ。
「そんな質問に意味なんてありません」
ゆっくりと起き上がる。答えの決まっている問いなど時間の無駄でしかない。
「はっ、そうかい。だったらどうしてあんな真似しやがった」
あんな真似とは、僕が自分の胸にナイフを突き立てた事だろう。
「お前はチャレンジャーだ。だから、死んでもまた元通り朝からやり直せる。けどよ、自分の命を自分で絶っちまうようなクソッタレをオレは信用出来ねー。どーなんだ、そこんところはよ?」
「僕だって自殺なんか二度とごめんです。だけど、ああしなきゃならなかったんです」
「お前が死ぬ理由はない筈だぜ」
死神さんは明石さんたちがまだ起き上がらないのを確認してから、少しだけ声のトーンを落とす。
「どーも、オレとお前とでクリアに関しての思惑が違うようだけどよ。オレにとっちゃ話は簡単だ。要はお前がクリアすりゃそれで良い。もっと言っちまうとお前だけがクリアすればオレは万々歳、大満足な訳よ」
「……あのままクリアすればどうなっていたか、あなたには分かっているんですか?」
「ああ、分かるね。チビは哀れ殺人犯、ネジの飛んだ馬鹿女は死んだまま。そんぐらい分かるわ、ボケが」
「だったら!」
「だからどーしたよ。良いじゃねーか、チビだって一応は生きたままクリア出来るんだからよ」
「舞子さんは死んだままじゃないですか!」
それじゃあ意味がないと、僕がどれだけ言い続けてきたと思っているんだ。
「チビが死ぬのはまずいがな、あの女が死ぬ事の何が悪い? あいつはイレギュラーだ。オレたちの邪魔をする存在だぜ。チビがイレギュラーを殺した事で、後はクリアまで一本道だった。違うか?」
いいや、違わない。だが、僕が望んじゃいない展開だ。
「言いましたよね、僕は明日からも今日と同じように過ごしたい。そこに人の生き死には邪魔なんだ」
「じゃあイレギュラーはどうする? ……アレのせいで、今どんな状況なのかお前は分かってんのか? パッツンはこれ以上協力する意思を見せねーし、チビは暴走を続けるぞ。やり直したところで、またこうなるのは目に見えてんだ」
「……それは……」
「どーするかって聞いてんだ!」
僕は、わがままなのかもしれない。二兎を追うものは一兎も得られない。虻蜂取らず。何かを得るには、何かを捨てるしかないのだ。そんなの、分かってる。分かってるつもりだ。
――でも。
「僕は何度だってやり直します。僕の望む展開になるまで、何度だって」
死神さんは長い長い髪の毛を掻き毟り、ウボァーと奇声を上げて寝転がる。
「そー言うとは思ってたけどよー! やっぱ納得いかねー! あのままクリア出来たじゃねーかよー!」
「あ、その、ごめんなさい」
「ごめんで済んだら天国も地獄もいらねーっての」
「……ごめんなさい」
「もー良いって。予想もしてたし、こーなるってやっぱ分かってた。ただ、オレはな。オレは良くてもパッツンとチビが何を言うかは知らねーぞ。その辺どーすんだ?」
どうしよう。
「そこはお前らで上手い事やれよ。オレはそーゆーの、苦手なんだ。なんつーの? こう、中学生日記みたいな感じはよ」
もはや突っ込むまい。
と言うか僕だってそんなの苦手だ。得意じゃない。今までやった事がないのだ。チャレンジを受けてから初めて他人と喧嘩したり、仲良くなったりしたのだから、仕方がないと言えば仕方がない。主に僕の駄目さ加減が。
「やっぱり、謝るんですかね」
「はあ?」
「だから、明石さんも七篠も怒ってるのかなって。だから、謝った方が……」
「お前さ、あいつらがどうしてあんな感じになってるか、原因は分かってんのか?」
いいえ、全く。
「怒られてる理由が分からないなら謝るな。おい、良いか、意味もなく頭を下げるんじゃねーぞ。んな事したら余計にやべー、火に油を注ぐなんてもんじゃねー」
「どんなもんなんですか?」
「……そりゃ、アレだ。胸の炎でマットを焦がすぐらい……いや、なんつーのかな、ファイアーボンバー的な、ダイナマイトエクスプロージョンチックな……」
何を言ってるのか分からないが、とにかくやばいって事らしい。
コミュニケーション能力が乏しいのは確かなのだから、僕は死神さんの言う事を素直に聞いておくとしよう。
「とりあえず、続けてみます」
「おー、そーだな。やるっきゃないとな」
「あの、一つだけ確認したい事があるんですけど」
「イレギュラーの事だな?」
流石に、チャレンジに関してまでは鈍くないか。
「ええ、舞子さん――イレギュラーが死亡してもループはされなかった。死後の世界には行けなかった。これは、やっぱりイレギュラーは僕らチャレンジャーとは違う条件で動いている、と言う事なんでしょうか?」
「おー、そーそー、その通り。その認識は間違っちゃねーな。一応付け加えとくと、チャレンジャーってのはオレが認めた奴らの事だよ。オレが、こいつらはループさせても良いって認めた奴らだ。だから、お前らが向こうで死んだらオレが引っ張ってくるって訳だ」
つまり、チャレンジャーとは死神さんのようなナビゲーターがチャレンジを許可した者、なのだろうか。
「で、イレギュラーってのはすんげーメンドーだ。仮に連れて来られたとして、あの女は無理なんだよな。今んとこ、オレからはどーやっても干渉出来ねーよーになってる」
死神さんはそう言って寝転がる。
「今のところは?」
「こっちに連れて来た奴はよ、ある程度こっち側での位置を固定しとくんだよな。例えば、最初にお前を引っ張ってきた時、パッツンやチビを引っ張ってきた時。ま、分かりやすく言うとセーブポイントみたいな感じか」
「位置を固定する意味はあるんですか?」
「大有りも大有り。セーブしときゃ手っ取り早いんだよ。もしも位置をセーブしてなかったとするだろ? そしたら、向こうから引っ張ってくる時に一々入り口からお前らを連れて来なきゃなんねーんだ。で、セーブしてたら一気にここ、オレのいるところまで引っ張れるんだ」
死後の世界の位置やら地理関係はさっぱり分からない。だけど、セーブしてたら入り口とやらを通らず一気にここまで来れると言う事か。便利な話に聞こえるが、要は死神さんが面倒くさがりなだけだろう。
「そういうのは最初から言っといて欲しかったですね」
「だって聞かれなかったもーん」
小学生でももっとまともでマシな言い訳をするぞ。
「話を戻すぞ。位置の固定、セーブってのが大事なんだが、あのプッツン女は、どーやら全然別のところに位置が固定されてるらしーんだわ」
「……つまり?」
「イレギュラーをここまで引っ張るのは難しいって事だな。世界を巻き戻す際、オレが接触するより早くイレギュラーはセーブポイントまで行っちまう。ついでに言うと、そのセーブポイントがどこかも分かんねー。まー、この広い世界のどこかに、今もそいつはいるんだろーけどな」
僕らと同じ世界に、舞子さんが……と、駄目だ。思考を鈍らせるな。今は、考えろ。
「纏めると、イレギュラーはチャレンジャーと同じようにはならないんですね。死んでも巻き戻らない。僕らが死ねば、初めて死後の世界に戻される。そして、その場所はこの世界のどこか」
「そんな感じだわな。しっかしマジにかったりーな、イレギュラーってのはよ。生きてても死んでてもお前の邪魔をしやがる」
そこは言わないで欲しかった。
「とにかく、もう一度やってみます」
「……ま、好きにしろよ。さて、と。パッツンたちが目を覚まさない内にいっちまうか」
段々と、明石さんたちとの溝が深くなるのを感じる。感じていても、僕にはどうしようも出来ない。今はただ、舞子さんと話をしたい。そうすれば、何か解決の糸口が掴めるかもしれないんだから。
目覚まし時計の鳴る五分前に目が覚める。いつもの事だ。
そう、いつもの事だ。
体を起こして、学校に行く準備をして、家を出る。
だけど、ここからは、今回からはいつも通りいくとは限らない。
イレギュラーと出遭った以上、ここからは予定通りには行かない。行く筈がないのだ。
今回は、七篠とは出会えなかった。
「……ふう」
最近は溜め息が多くなった。靴を履き替えながら、また一つ。
「あは、どしたの? 元気ないね」
「舞子さん、おはよう」
「おっはよう! 一日を生き抜く為の元気の源は朝の挨拶にあり! って、そうは思わない?」
「あ、はは……」
あの、あれ? あれ、どうしてそんなに元気なのかな?
「あの、さ。舞子さん、もしかして前回の事は……」
舞子さんは目をぱちくりさせる。もしかして、覚えてないとか。
「あは、殺されちゃったね、私」
「……すっごい元気なように見えるんだけど、気のせいかな?」
「気のせいじゃないよ?」
あれー?
「でも、こうしてまた君と出会えたからね。良かった良かった、あのまま死んじゃってたらもっとへこんでたかもしれないけど」
「その、ごめん。七篠が勝手な事しちゃって」
「ん? 君が私を殺した訳じゃないし、君が謝らなくても良いよ。と言うかと言うか、もしも君が私を殺したとしても、謝らなくて良いんだと思う」
殺す筈がない。もしも謝って済むなら謝りたいけど。
「忘れたのかな? 一応、私と君は敵同士、みたいなもんなんだよ」
「僕は敵視していないよ」
歩きながら僕は答える。舞子さんは隣に並び、歯を見せて笑う。
「でも、明石さんや七篠さんは私を敵だと思ってる」
答えられなかった。その通りだからだ。
「君が邪魔をしなければ、明石さんたちも敵だとは思わないよ」
「邪魔? ……聞くの忘れてたんだけど、そもそも君たちは何をやってるのかな?」
ああ、そうか。
舞子さんはイレギュラーだから何も知らないんだ。僕らチャレンジャーが『今日』を無事に過ごせば、『明日』がやって来ると言う事に。
「僕らのゴールは、日付の変わる今日の午前零時なんだ。明日になれば、このループも終わりになる」
「そうなの?」
「ただ、途中で僕、明石さん、七篠の内誰か一人でも死んだらそこで終わり。やり直し」
「……楽勝じゃないの?」
僕にもそう思っていた時期がありました。
「まあ、ほら、色々とあったじゃないか。バットやボールが飛んできたり」
「あは、テロリストとか?」
「少しは悪びれて欲しいなあ」
「ふーん、そっか。そうなんだ。いやいや、私のやっていた事もあながち間違いじゃあなかったんだね」
いやいやいや。
「君はこんな世界がずっと続いても良いと思ってるの?」
「あは、当分はね」
そう言って、彼女は屈託のない笑みを浮かべる。なんて酷い顔なんだろう。
「そっかそっか、君たちを今日中に殺しちゃえば、この世界はいつまでも続くんだね。あは、良い事聞いちゃった」
「……あくまでも僕たちの邪魔をするんだね?」
「当分はね」
「じゃあ、良いよ」
僕は歩調を早め、舞子さんを置き去りにしようと試みる。が、彼女はすぐさま追い付いてきた。
「逃げられないよ」
「いいや、逃げ切るさ。悪いけど、僕はどうあっても君を敵とは思わない。思えない。敵じゃない人とは戦えない。だから、逃げ続ける」
「じゃ、私は追い続けるね」
どうぞ、ご勝手に。
「ところで、僕も聞き忘れていた事があるんだけど」
「何ー?」
「テロリストを起こした理由って、あるの?」
舞子さんがテロを起こした時、彼女はチャレンジについてのルールどころかチャレンジすら知らなかった筈。なのに、どうしてテロを起こしたのか。
「退屈だったからかな。後はやっぱり、君の困った顔が見てみたかったり」
……う。本当にそれだけっぽいな。なまじ深く考えていない方が上手くいく世界だし。
「もう一つ、舞子さんは河原先生を恨んでたの?」
「ふぇ? どうして知ってるの?」
「だって、あの人に対してだけは直接的な行動に出たじゃないか。ほら、先生の弟を誘拐したじゃない」
舞子さんは小首を傾げる。
「私が誘拐した訳じゃないんだけど、そうなるかな」
なります。なりますとも。
「やっぱり、卓球部に関しての事で?」
「あは、知ってたんだ。意外意外、君たちも色々とやってるんだね」
「ま、時間だけは有り余っていたからね」
とんでもない皮肉だよ。自分で言ってて死にそうになってしまった。
「あの部活は楽しかったからね。中学の時から、そのまま繰り上がってきたみたいな感じで。皆と一緒にいて、喋っているだけで、それだけで」
「ふーん」
何故だか、心がささくれ立つような。
「河原先生のしごきに耐えられなかったんだね」
「……しご? あは、やだなあ、急にエロい単語使わないでよー」
「え、エロっ?」
「知ってるって言っても、やっぱりそんなもんだよね。うん、卓球部が廃部になった本当の原因は、あの先生にあるのはあるんだけど、皆の知っている事とはもっと別の事なんだ」
そうか、しごくって卑猥な言葉だったのか。覚えておこう。
「聞いてる?」
「うん、聞いてるよ」
「あのね、野球部の二人、いたでしょ?」
「元卓球部の神戸君と藤君だよね」
舞子さんは他の人には見えない位置から、きらりと光るものを僕に見せ付ける。
「……山崎君と敷島君だよね」
「あは、そうそう。で、その二人の靴箱でのやり取り覚えてる?」
えーと、確か、女の人を取り合っていたような……。
「あいつは俺の女だー、とか言ってたでしょ? その女ってね、河原先生の事なの」
「ふーん」
まあ、そういう事もあるのだろう。
「あんまり驚かないね。折角勿体つけて話したのに」
「で、結局それが原因って訳なの?」
「まあね。でも、先生はどっちにも大して興味はなかったみたい。遊ばれてたんだね。見た感じ、本命がいるっぽいし」
仲良しこよしのグループを河原先生がぶち壊してしまったと言う訳か。
「二人が暴走しちゃっただけであの先生はそこまで悪くないんだけど、やっぱり思うの。あいつがいなかったらなあって」
「あのさ、一つ提案があるんだけど」
「ん、何かな?」
「テロリストはもうやめにしないかな。君だって気付いてる筈じゃないか、僕たちが前からテロを阻止してるって」
正直、あれは今となっては時間の無駄である。
「うーん。辞めて欲しい?」
「うん。辞めて欲しい」
「あは、じゃあもう少し続けるねっ」
やっぱりな。