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家〈2〉


 二階から侵入(あえてこう言わせてもらう)した七篠に玄関の掃除と、鍵を開けてもらって、やっとの事で自宅に帰るのに成功した。

 いや、家に帰るだけでどうしてこんなに苦労しなきゃならないんだろう。

「はあ、とりあえずゆっくりお茶でも飲みたいなあ」

 靴を脱ぎながら、僕は溜め息を吐く。

「……それは難しいかもしれませんね」

「お茶ぐらい僕にだって淹れられるよ」

 馬鹿にしないでもらいたい。

「……いえ、そういう意味ではなく」

 どういう意味だと、問う前に理解した。そうだ、地震が起こっていて、どうして被害が玄関だけだと言い切れる。

「うーわ、ひっどいわねーこれ」

 家の中、全てが無茶苦茶になっていたのだ。リビングのテレビも、食器棚も。たんすもテーブルも……ああ、何がどうなっているのか説明すらしたくない。とにかく、酷い。

「……ちなみに、先輩の部屋も結構散らかってました」

 なら、二階もこんな感じなのだろう。ああ、地震対策をしておけば良かった。備えあれば憂いなし。後悔先に立たず。終わった事は、仕方ない。

「とりあえず、片付けなきゃ……」

「そ? 頑張ってね」

 ひらひらと手を振る明石さん。君が今尻に敷いているのは我が家のテレビです。

「少しぐらい手伝ってくれても良いじゃないか」

「か弱い女の子に力仕事させる気なの? あんたそれでも男?」

 男女差別反対。

「そっちは電車に専用車両だってあるじゃない。優遇されてるんだから、たまには……」

「あんたが提案した訳でもないじゃない。大きな口は利かないでよ」

 う、ぐぅ。言い返そうと言葉を探しても無駄だ。大人しく片付けよう。

「……先輩、私は手伝いますよ。どこかの、頭でっかちな口だけ女と違いますから」

 ふふん、と、勝ち誇ったかのように明石さんを見つめる七篠。

「頑張りなさいよ体力馬鹿」

「……私は馬鹿ではありません」

「別に七篠さんの事言った訳じゃないわよ。それとも、自覚しているから怒ったのかしら?」

 あーあ。知らないぞ。

「……前々から明石先輩は気に入らなかったんです。いっそ、ここで決着を付けましょうか」

「あら、私はあなたの事好きなんだけど?」

「減らず口をっ」

 七篠が天井すれすれまで跳躍し、明石さんに飛び掛かっていく。

 明石さんは腰を落ち着かせていたテレビから立ち上がり、片足を上げてぶらぶらとさせた。

「……力で私に太刀打ち出来ると思っているんですか?」

「ふふ、力だけで私をねじ伏せられるだなんて思わない事ね。フラミンゴで受けて立ちましょう」

「……なら私は、私はーっ!」

 私は、何だよ。と言うか、一応ここはリビングで、僕の家なのだけれど。……片付けは、一人でやるしかなさそうだった。



 掃除ってのは、意外と体力を使う。雑巾を掛けたり、物を動かしたり。特に、日頃から大した運動をしない僕にとっては重労働だった。

 それと、時間も掛かる。一人で家中の掃除をしなくちゃならないのだし、たまーにアルバムだとか、読みかけの本を見つけてしまい、ついつい読み耽ってしまうのだ。

 そんなこんなで、後片付けが終わったのは午後七時を回った頃だった。

「あら、遅かったじゃない。掃除くらいまともにこなしなさいよね」

「……あ。先輩、私お腹が空きました」

 暖かく出迎えてくれる二人。さっさと出てけ。

「もう七時だよ。二人は一応女の子なんだし帰りなよ」

 一応の部分を無駄に強調する。

「ああ、心配いらないわよ」

「……ええ、安心してください」

「いや、だから……」

 言い掛けた僕の視線が、明石さんが指差す先に吸い込まれていった。彼女が指しているのは、冷蔵庫。いや、正確には冷蔵庫に貼られたメモ用紙である。

 我が家では、携帯電話を持たない僕の為に、家族がメモでお互いの近況を報告し合う習慣があるのだ。例えば、今日の晩ご飯はいらないだとか、帰りが早くなるだとか。

 で、明石さんの指すメモなんだけど、見覚えがまるでない。朝確認した時には何も貼られていなかったので、外回りの途中で母さんか、父さんが貼っていったのだろう。

 近付いていってみると、跳ねが特徴的な字だったので母さんのものだと分かった。内容は、えーと。

「『私とお父さん明日の昼帰宅。金置くので何か食べなさい』……?」

 そうか。二人とも今日も帰ってこないのか。ま、お金は置いてってくれるんだし、困る事はない。

「で、これが何なの?」

「私、今日はお泊りするから」

「……お泊り?」

「そ。親にも友達んとこ泊まるって言っといたから、つみき的にもオールオッケーね」

 しれっとした顔で答えるのは明石さん。

 いや、いやいや、いやいやいや、泊まるって、何?

「君が、僕の家に?」

「そう言ってるじゃない」

「むっ、無理っ駄目ダメだめだよ!」

 他人が僕のパーソナルエリアで一晩も過ごすなんて、考えただけでもぞっとする。あ、いや、そもそも明石さんは女の子だし、色々と駄目じゃないか。

「……先輩」

「えー、何だよ?」

「……私も泊まりますから」

「…………えー」

 固まった。追い打ち掛けてんじゃねえよ。家主の許可を取らず、先に外堀を埋めに来た彼女らの手腕は見事だ。だけど、だから駄目だって。

「両親がいないからってそんなの無理だよ。許可も取ってないし」

「じゃあ取りなさい」

「だっ、駄目だってば」

「……私が泊まってた事もありますし、別に構わないと思いますが」

「今と昔は違うだろっ」

 まずい。実にまずい。このまま二対一で押し切られてしまう。どうする、どうしよう、チャレンジなんてどうでも良い、誰か僕をっ、神様っ!

 と。天恵とでも呼ぶのだろうか、青い稲妻が体を突き抜け、閃いた。そう、今の状況で女の子を黙らせるならこれしかない。

「――駄目だよ」

 声を出来る限り低くする。二人の視線がこちらを向く。

「僕だってこれでも男なんだからね。君たちに何かしないとは言い切れないんだよ」

 決まった。決まっただろ。

「良いわよ。何かしようと思った瞬間握り潰すから」

「……私は一向に構いませんが。むしろ願ったり叶ったりです」

 うわー、そういえばこの人たちって普通の女の子じゃなかったっけ。しかも、僕絶対に男扱いされてない。

「そんな事よりお腹空いたー。何か作ってよ、こっちはゲストよゲスト」

 招いた覚えは……あるけど、あるんだけど。

「材料もないし、ご飯も炊いてないよ。大体、親がいない時はデリバリー頼んでるから」

「あ、じゃあピザにしましょう。私、そういうのってあんまり食べた事ないのよね」

「……ピザと言えば多人数で集まった時に摘むものですからね。友人の少ないあなたなら、まあ、致し方ないと言ったところですか」

「七篠、お前だって友達いないじゃんか」

「……ちょー、います」

 だが彼女の顔は真っ青である。自爆し合ってどうする気だったんだ。

「じゃあラーメンで良いよね」

「えー、ラーメン? そんなの学食で食べられるじゃないの。もっと違うものが食べたーい」

「じゃあ、おそばにしよう」

「麺類は却下しまーす」

 わっがまま……。麺類が駄目って言われてもなあ。

「……先輩先輩、お寿司が食べたいです」

「出前の寿司って高く付くんだよなあ」

「あ、寿司でも良いわね。メニューは確か、この辺に……」

「あーっ、ちょっと待ってよ! まだお寿司と決まった訳じゃないから!」

 お祝い事があるならともかく、何でもない日に食べるものじゃないよ。

「じゃあここは平和的、民主主義的にいきましょう。お寿司食べたい人ー、はーい」

「……はい、食べたいです」

「ちょっとちょっと! どこが平和で民主主義的なのさ、これじゃ数の暴力だよ!」

 僕は断固拒否する。弾圧には屈しない。

「こんなの出来レースだ。認めない。第一、誰がお金を払うか分かってるの?」

「あんたでしょ?」

「……先輩じゃないんですか?」

 こういう時だけ一致団結するんだから。

「お金を払うのが僕なら、何にお金を払うのかは僕に決定権があると思うんだ」

「思えば良いじゃない。あ、私トロ食べたい」

「……先輩は何が食べたいですか? あ、細巻やちらし寿司もあるんですね」

 既にメニューが広げられている。二人は熱心にお寿司の写真を眺めていた。いけない、これじゃあいつまで経っても僕の意見が通らないぞ。

「まぐろ、いか、たい、かんぱち、生サーモン、うなぎ、穴子、玉子、いくら、うに……面倒だから端から端まで単品で頼みましょうか」

「……私、こっちのねぎとろちらしも食べてみたいです」

「いい加減にしてよっ、二人とも調子に乗り過ぎだってば!」

『…………』

 あ、あれ? どうして二人とも黙ってるの? どうして溜め息吐いてるの? なっ、なんだよ、僕が空気読んでないって視線は止めてよ。

「仕方ないわね」

「……ええ、先輩がまさかそこまで怒るとは思っていませんでしたから」

 あ、あの。えっと。

「はーあ、盛大に白けたわね。もう良い。私水飲んで寝る」

「……私も、そうします」

 うっ、何一つ間違った事も悪い事もしていないのに、何故か罪悪感が。

「い、いや、あのさ、何も食べるなとか言ってるんじゃなくて、ほら、お寿司って高いし、皆いるのに僕だけがお金払うのってどうかなーって……」

 しいん。声が虚しく響いた。なんでやねん。

 明石さんは本当に水を飲んでテーブルに突っ伏してるし、七篠に至っては部屋の隅で三角座りである。僕が何をした。何もしてない。だよね。だよね?

「あーあ、折角だから前祝いでもしようかと思ってたのになあ」

 ぽつりと明石さんが呟いた。

「前祝い?」

「時計、見てみなさいよ」

 言われた通りに見てみる。今は、午後七時を回ったところか。結構、経ってるな。チャレンジクリアまで残り五時間を切ったって感じ。

「後少しで終わるのよ。だから、良いじゃない。最後にちょっとくらい良い目見たってさ」

 ……そうか、もう、終わるんだ。

「……長いようで短かったですね」

 二人の声音からは安堵を感じる。けどそれだけじゃない。一抹の、寂しさのようなものも感じた。

「お酒とかは出せないけど……」

 当てられたかな。僕はチャレンジに対して寂しさなんか感じない。まあ、少しくらい、感慨深いものはあるけど。

「前祝い、悪くないかもね」

 電話の受話器とお寿司屋さんのメニューを手に取り、僕は目を瞑る。

 長かった、か。長かったのかな。

「……先輩、良いんですか?」

「えーと、無理しなくても良いのよ?」

 良いんだ。元はと言えば、自らの不注意で捨てた命。明石さんにも七篠にも多大なる迷惑を掛けてしまった。安い命だ。けど、それを拾えるならばこの程度の出費は安いものだろう。

「もう、終わるんだね」

 僕の声は、リビングに虚しく響いた。



 そもそも、彼女たちを呼んだのは生き返りチャレンジに入り込んだイレギュラー、邪魔者についての話をしようと思ったからだ。

「でさー、こいつったらすっごい顔したデブに馬乗りにされて殺されたのよ。挙句私を道連れにしたんだから」

「……可哀相な先輩。私が仇を取ってあげますからね」

「取らなくて良いよ……ああっ、僕の玉子っ」

「置いてあったから嫌いなのかと思ったのよ。名前でも書いておけば?」

「どうやって書けって言うんだよ!」

「……お醤油?」

「じゃあ七篠、お前がやってみ――だから勝手に取らないでってば!」

 けど、まあ、不粋だろう。楽しそうにやれているんだから、余計な不安は無用だ。先生たちにテロリストになれと唆したイレギュラーなんていないかもしれないんだし、仮にいたとして何もやってこないじゃないか。そう、いたとしても、チャレンジさえクリアすれば関係ない。

「……先輩、お箸が止まっていますよ」

「いらないんなら私と七篠さんで全部食べちゃうわよ」

「食べるから、二人とも僕のお皿から箸を退けてよ」

 それに、皆で食べるご飯は美味しい。学食とはまた違う、悪くない雰囲気に包まれていて、何か、何か……。



 お腹がいっぱいになりました。物凄く眠たい。と言うか、七篠は寝息を立てている。食べてすぐ眠ったら牛になると言うけど、まあ、今までの疲れが溜まっていたのだろう。

「口は達者だけど、まだまだ子供なのね」

「明石さんと七篠、一つしか年が変わらないじゃないか」

「一年も、よ」

「そんなものなのかなあ」

 かく言う明石さんの瞼も重そうだ。

「お風呂入って、寝たい」

「あ、駄目よ。私が先に使うんだから」

 えー。

「博識なあんただもん、レディーファーストって言葉は知ってるわよね?」

「知ってるけど、鉄火巻きを一気食いする人は淑女と呼べないんじゃないかなあ」

 無言で足を踏まれた。

「はいはい、博識博識。あーあ、私と敵対する人間皆死ねば良いのに」

 敵を作らなきゃ良いのに。

「それに、お風呂ったって着替えがないじゃないか」

「下着は持ってきてるわよ?」

「え……?」

 彼女は愉しそうに笑う。他人をからかう時に見せる類の笑みだった。

「見たい?」

「何とも思わない」

 だって、言ってしまえばただの布じゃないか。

「女子のパンツに興味を示さないなんて、あんた、まさか……」

「僕に特殊な性癖は存在しないんだよ。じゃなくて、どうして準備が良いの? 女の子って学校行く時に下着を持っていくのが普通なの?」

「そんな訳ないじゃない」

 そうか。明石さんはやっぱり普通じゃないのか。

「今、何か失礼な事考えたでしょ」

「別に。それより、どうして?」

「こんな事もあろうかと、よ」

 彼女の事だから、こうなるのは、と言うよりか、こうするのは最初から織り込み済みだったっぽい。

「と言う訳でお風呂を沸かしてちょうだい。ああ、拒否権は与えるけど、簡単に権利を行使出来るとは思わないでね」

「……暗に脅さないでよ」

「沸かさなきゃ『襲われたー!』 って隣家に駆け込むわ」

「脅さないでよ!」

 仕方ない。どうせお風呂には入ろうと思っていたんだし、貸すだけだ。貸すだけ。

「でもさ、本当に泊まるつもり?」

「あら、暗い夜道にこんなにか弱い女の子を放り出すつもり?」

「か弱いって、君が?」

 ええ。そう頷く明石さん。色々と言いたい事はあったが、これ以上は時間の無駄だろう。絶対、口論じゃ負けるんだし。

「じゃ、沸かしてくるよ」

「よろしくお願いね」

 はいはい。



 お風呂を沸かすと言っても、うちの場合、浴槽の栓をはめて、ボタンをピッと押すだけで、後は勝手に機械がお湯を沸かしてくれるのだ。

「設定温度とか聞いとけば良かったかな」

 お風呂場の窓を閉めようと顔を上げると、夜の闇の中、何か光るものが見える。見えて、しまう。

「……?」

 なんだろ。

 閉め掛けていた窓を開け、そこから頭を出してみた。

 瞬間、

「ぐ……っ!?」

 首が、絞まる。

 勿論僕の首がだ。何が、起きている? とにかく脱出しなければならない。苦しいし、何より掛かっている力が半端じゃない。首が絞められるどころの話じゃない。これじゃあ、捻じ切られる。

「う、ううう……」

 助けを求めようとして窓を叩き、声を荒げ、必死に音を立てようとした。誰か、気付いて……!

 気付く筈ない。もう、自分が何を見ているのか判然としない。息苦しくて、涙が止まらない。真っ白い粒々が視界を覆って、後はもう、何も。何も見えない。

「――――」

 え?

 今、何か、聞こえた?

「…………ね」

 間違いじゃない。何か聞こえる。これは、声? 誰かの声、誰の、声だ?

「か、は……」

 あなたは? そう問おうとしたが、声は言葉にならなかった。ただ、擦れた空気が口から漏れるだけ。その内、意識は薄れていき、僕は、最後に……。



 目を開ければ、そこは。

「いようタフボーイ! このイカれた世界へようこそ!」

「……耳元で大声出さないでください」

 おかしな世界だと自覚しているのかよ。

「僕はまた、死んじゃったんですね」

「あー、あとちっとだったのにな」

 もう、目の前だと思っていたのに。もう、クリア出来ると、信じていたのに。

「死因、教えてやろーか? ロープで首をがっつり絞められちまって、はいオシマイ。絞殺ってのは初体験だったっけ? いや、良いよな初めてってのはさ。刺激があるもんな、ぎゃはははは!」

 相変わらずだけど笑えない。

「死神さん、あのですね……」

「おい、喋るんじゃねー」

「……え?」

 死神さん、何か機嫌が悪いのかな。

「てめー、気ー抜いてやがったな?」

「それは……」

 否定出来ない。明石さんの言葉を真に受けてた訳じゃないけど、家の中という事もあって警戒なんかまるっきりしていなかったのは事実。僕は、弛緩していたのである。それも死神さんに見破られるくらいに、馬鹿みたいに。

「普通に死ぬんならまだしもよ、あんなんナシだぜ。ユダ大敵っつー言葉をしらねーのか?」

 僕はキリスト教徒じゃないしなあ。

 しかし、そうか、死んだんだよなあ、僕。

「あの、死神さん」

「なんだよ?」

「僕は誰に殺されたんですか?」

 そう、死んだ。と言うか、殺された。殺されたのが僕のならば、殺した誰かもいる筈である。

「もしかしたら、その人が僕らの探しているイレギュラーなのかもしれません」

「んー、あー、なるほどな」

「……死神さん?」

「悪い、覚えてねーわ」

 だと思った。肝心な時には役に立たない人である。あ、人じゃないのか。うーん、しかし、殺されたって事は、そこに何者かの、僕を殺す意思があったと言う事だ。絞殺、絞めて殺す。確実に人間の仕業だろうな。手口と言うか、世界のやり方にしてはやっぱり違和を感じる。

「正直、イレギュラーが存在するってのには半信半疑だったんですけど、今回で印象が変わりましたよ」

「おー、そーだな。オレの方でも色々調べてみるわ」

「なら、僕が次で確かめてみますよ」

「あ、何を?」

 考えるのは好きだが、どうにもまだるっこしい。

「イレギュラーの正体を突き止めてみます。相手がループしているなら同じ手段を取るとは考えにくいですが、テロリストの件もあります。次回も同じ方法で仕掛けてくるかもしれません」

「はっはー、とっ捕まえるって訳か」

 出来れば、だけど。最悪でも顔ぐらいは見ておきたいのが本音だ。

「明石さんと七篠は信じるに値します。二人にもイレギュラーの事を相談してみようと思うんですけど……」

「ん? なんでオレの顔色窺うんだ? 相談すりゃ良いじゃんよ」

「……分かりました」

「おい、お前なんか拗ねてねーか?」

「拗ねてません」

 断じて、拗ねてなどいない。

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