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グラウンド



 目を開ければ、開けなくても、そこは。

「……よう」

「……おはようございます」

 真っ白い死後の世界、テンションの低い死神さんがいた。

「お疲れ。死んだ気分はどーだ?」

「意外と悪くありませんね」

「は、そりゃ何よりだ」

 言ったきり、死神さんは口を開かない。不甲斐ない僕に怒っているのだろうか。怒って、いるのだろう。

「まあ、地震じゃしょーがねーよな」

「……怒ってないんですか?」

「ブチ切れそーだったけど、オレだってアレはどーかと思うぜ」

 絶妙と言うか、絶望なタイミングではあったかな。

「でも、懐かしいって感じでしたね」

「懐かしいだあ?」

「車が飛び出してきたり、ボールが飛んできたり。初見じゃ辛いって感じのフラグですよ」

 最近じゃめっきり少なくなっていたけど、ああいう一回目じゃ不可避確実のくだらない、理不尽なイベントの数々の事である。いや、しかし地震とは。世界には恐れ入るよ。僕らを殺す、それだけの為にプレートを動かしちゃうんだもん。

「そう言われりゃあ、かもな。最近じゃバカスカ撃たれてばっかでマンネリだったかんな。ん、オレとしちゃもっと色んなパターンで死んでくれた方が見てて楽しい」

「例えば、なんですか?」

「基本的に、派手に死んで欲しいよな。花火と一緒に打ち上がるとか、子供を庇ってトラックにひかれるとか、雷に打たれるとか」

 本当に他人事だと思ってるよなあ、この死神。

「でも、地震をなんとかしなきゃいけませんね」

「はあ? 馬鹿か、てめーはナマズか? ナマズでもねーのに地震をなんとか出来るわきゃねーだろ」

 ナマズでも無理だよなあ。

「塀とか、何か降ってきそうな場所は避けろ。んで頭を守れるよーなトコに逃げ込んどけ」

「普通のアドバイスですね」

「普通でわりーのかよ。まあ、たまにはオレも役に立たねーとな」

 そういや、他の生徒や先生は大丈夫だったのかな。七篠に話を聞こうと思ったけど、彼女は明石さん共々眠りこけている。

「死神さん、どうでも良い話なんですけど、こっちに飛ばされてから目が覚めるまでのタイミング、結構ばらばらですよね」

 誰が一番に目が覚めるとか、規則的なものはなさそう。

「おー、そーいやそーだな。今回はお前が一番だし、パッツンやチビが一番の時もあったっけ。あ、いや、にしてもチビが最初に起きたらオレ超気まずいんだよなー。ほら、何喋ったら良いの? つくづくっつーか、常々思ってたんだけど、友達の友達は友達じゃねーよな、絶対」

 聞いてないし。

「じゃあ、起きる順番に意味はないんですね」

「そーじゃねーの? つーかマジにどーでもな話だぜ」

 だから前置きしたのに。

「どうでも良い事二つ目です。僕らチャレンジャーは、向こうの世界で何時まで生き延びればクリア扱いになるんですか?」

「あー、あれ、言ってなかったっけ?」

 聞いてないし。

「確か、午前零時まで、だった、よーな、気が、しないでも、な、い……?」

「……本気で言ってるなら怒りますよ」

「ぎゃははは、冗談だって! 本当は午前零時で合ってるっつーの! 冗談冗談、マジで大丈夫。うん、だいじょーぶ」

 イマイチ信じきれないのはどうしてだろう。

「この世界じゃ、あなたが神様ですからね。信じますよ。自分を信じるより、ずっと良い」

 死神さんはあっそと一言。素っ気ないなあ。

「あ、もう一つ聞いても良いですよね。これもどうだって良い事なんですけど」

 そして分かり切っている事でもあるのだけど。

「あの……」

 と。聞こうとしたところで、七篠が目を覚ます。

「あ? どーした、言えよ」

「やっぱり、次の機会にします」

「馬鹿野郎、次も来るつもりかよ」

 出来るなら、死神さんとは会わないでいた方が済む。つまり、それはチャレンジのクリアを意味するのだから。その筈、なんだけど、なあ。



「……残念ながら、怪我をした人は誰もいないそうですよ」

 七篠に尋ねたら、こんな答えが返ってきた。あくまで、彼女の把握している、確認している範囲の話なんだけれど。

「ああ、そりゃ良かった」

「……ええ。ですから、地震で死んでしまった間抜けは先輩一人になる訳ですね」

 なんか、言葉に刺があるような……?

「……先輩、明石先輩と遊びに行こうとしていましたね」

「はあ?」

 僕が、明石さんと、遊びに、行く?

 有り得ないというか、分からない。

「七篠、僕たちなら分かり合える筈だ。遊びに行く友人はおろか、遊びに行くという概念が理解出来ない事に」

「……ですから、先輩にそのつもりがなくとも、明石先輩にはそのつもりがあったのだと思いますよ」

 明石さんが僕と遊びたいだって? うーん、僕で遊びたい、もしくは僕を弄びたいならまだ話は通じるのだけれど。

「お互いに、プライベートの時間を割いてまで過ごすメリットがないと思うよ」

 僕ほどつまらない、何もない人間はいないだろう。

「……鈍いなあ、もう」

「ん?」

「いいえ、何も。それよりも先輩、私は痛く傷付きました」

 そりゃ傷が付いたら痛むけど。何が?

「……私は疎外感で胸がいっぱいです。先輩だけでなく、あんな生ごみ――明石先輩にまで蔑ろにされ、無視されたのです」

「ああ、お前も一緒に遊びたいのか」

「まあ、先輩がどうしてもと言うのなら。しかし、放課後は部活があるのです」

 じゃあ無理じゃないか。

「……そこで提案です。私の練習が終わるまで、私を見ていてもらえませんか?」

「えー、嫌だなあ」

「……何故ですか?」

 だって、陸上部の練習って事はグラウンドに行かなきゃならないだろ。グラウンドには知らない運動部、知らない生徒がいっぱいいるだろう。そんなところに僕みたいな部外者が行くのは躊躇われる。

「とにかく、嫌だ」

「……つまり、私より明石先輩が好きなんですね」

「なんだその理論は。全然つまってないぞ、どうしてそうなるんだ」

 七篠は顔を俯かせて髪の毛をいじり始める。うわ、確かこれ、こいつが拗ねてる時の癖じゃなかったっけ。どうしよう、いや、でも練習なんか見ても仕方ないしなあ。

「……あーあ、死のう」

 これ見よがしに。ある意味とっくに死んでるって事に頭は回らないのだろうか。

「……あーあーあー、先輩に嫌われちゃった。もう生きていけないなー」

「分かったよ。と言うかだな、素直にお願いしますって頭下げれば良いんだ」

「そんな事が出来るなら、私には今頃友達が百人作れていた筈です」

 ごもっともである。

「部活って何時までやるんだ?」

「何時に終わらせて欲しいですか?」

「いや、何時にって。一年生のお前にそんな権限ないだろ」

 団体行動なのだから、勝手な真似は許されなさそう。第一、練習メニューとかは部長や、顧問の管轄じゃないのか。

 しかし、七篠は意味深に笑っていた。そんなの知るかってな、破滅的な笑顔にも見える。

「……私はエースですから、ある程度の融通が利くんです。適当に走って足が痛いって言えば、向こうから休んでくれと頭を下げてきますよ」

「嫌なエースだなあ。もっとこう、運動部らしい協調性を身に付けろよ」

「……陸上部と言ったって走るだけですから。どこまでいっても、究極的には個人競技なんですよ。そしてこれが持つ者の特権です」

 でも、なあ。何だか勿体ないって感じがする。

「良いのかよ、折角の足を腐らせちゃってもさ」

「まあ、陸上部に入った甲斐と言いますか、目的は達成されましたから。今は、別に足を切り落とされたって構いません」

「本当は?」

「痛いのは嫌いです」

 素直な奴め。

 ……甲斐に、目的ね。少し羨ましいな。達成出来た事もだけど、そんなものを持っていた事にすら羨望、むしろ脱帽だ。

「では先輩、放課後になったら教室までお迎えに行きますね」

「いや、別にいらないよ」

 わざわざ足を運ばせるのは可哀相だ。グラウンドの場所ぐらい分かるつもりだしね。

「……いえ、お迎えに行きます」

「いや、だから」

「……行きます、から」

「そんなに言うなら、まあ、好きにしなよ」

 さて、話も纏まったところで再チャレンジである。明石さんはまだ寝てたけど。



 目覚まし時計の鳴る五分前に目が覚める。いつもの事だ。

 僕はゆっくりと身を起こし、布団を跳ね除けベッドから立ち上がる。

 さて、いつも通りに起きてしまった。うーん、まだ時間があるとはいえ、早めに出た方が良いかもな。



 八時十分。

 ニュース番組を流し見てから、僕は家中の戸締りを確認して家を出た。途中、車を二回避けて、植木鉢を避けながら学校に辿り着く。

 が、今回も玄関には向かわなかった。

 向かうのは、この学校の駐車場である。


 そんでもって。


 僕は河原先生に襟を掴まれ、七篠が案の定また怒って、明石さんが風車とユウキちゃんを連れてやってきた。

 授業の方も、一時間目は前回と同じく遅れてしまったが、二時間目以降は全くもって今までと変わらない。何一つと言っても良い。実に良い。

 が、人間とは贅沢な生き物で、そろそろこの展開、同じようなリピートの早回しにも飽き始めている。でも、やらなきゃなんない訳で。クリアするまでは終わらない訳で。



 昼休みになると、河原先生が泣き出して、五時間目と六時間目と七時間目があっという間に終わってしまう。記念すべきとか言ってたのはどこのどいつだろう。

「ねえ、確かこの後地震が来るのよね?」

 居眠りしていたのか、少しとぼけた声で、瞼を擦りながら尋ねてくる明石さん。

「うん。気を付けようね」

「気を付けろったって言われても困るわね。机の下にでも隠れとけば良いのかしら?」

「ああ、是非」

 足を踏まれた。

「靴箱の下敷きにならないように、さっさと外に出れば良いんでしょ」

「……分かってるなら聞かないでよ」

 一番理不尽なのは明石さんじゃないんだろうか。



 ホームルームが終わって教室を出ると、廊下にはちょっとした人だかりが出来ていた。集まっているのは、えーと、男子生徒が殆どである。なんだろう、何か男子の気を惹くものがあるのだろうか。

「んー、どうしたのよ? ツチノコでもいたの?」

「さあ、なんだろうね」

 何かがいるのは確かなのだけれど、全然見えないぞ。

「……はっ、今の声は先輩、先輩ですね!?」

「おおおおっ、そうっ、そうだよ!」

「ざけんなよてめえ! 俺だって先輩だっつーの!」

「先輩と言えば俺っ、俺と言えば先輩なんだよ! お前らはどっか消えとけ!」

 おおお、一言では言い表せられないが、沸いている。沸いているぞ。

「まるで死体に集る蝿か蛆ね」

 蛆は死体から出てくるんじゃないのかな。

「……ちょ、ちょっと、退いて、退いてくださいっ」

「分かった! 分かったから俺とカラオケ行こう!」

「いやいやいや! 俺らとボーリング! ボーリングだよね!?」

 何か、女の子の声がした気がする。

「退けって言ってるでしょう!」

 揉みくちゃにされながらも、人込みから小さい女の子が飛び出してきた。

「先輩っ、この人たちこわーい!」

「げえっ、七篠!」

 そうか! そういえば授業が終わったら迎えに来るって言っていたっけ。どうやら、二年生男子に掴まっていたらしいな。いや、容姿だけ見たら、中身さえ知らなければ確かに可愛く見えるかもしれないけど。

「せんぱぁい!」

「うわああ!」

 僕、思わず片膝でかわす。飛び付いてこられても怖いだけなんだよな。

 だが、何を思ったのかこの後輩は。僕の片膝を踏み台代わりに足を乗せ、そのまま顔面に向かってきやがった。

「おお、シャイニングウィザード」

 何か聞こえた気がするが、何もかも遅い。



 地震は起こったが、外に出ていた僕らに被害はなかった。ついでに言うと、思っていたよりも大きくはない揺れだったのである。しかし、後で確認しに行ったところ、きっちりと、靴箱だけが倒れていた。他のものに何一つとして被害はなかったのに。靴箱だけ。いや、理解に苦しむね。

 で、地震での死を回避した僕たちは、七篠と約束していた通りグラウンドまで足を運んでいた。

「どっちかと言えば、スコーピオライジングの方が好きなんですけどね」

 陸上部のユニフォームに着替えた七篠が、僕には一生掛かっても理解出来ない事をのたまった。

「練習しなくても良いの?」

「……今はウォーミングアップです」

「ただ話してるだけじゃないか」

「良いんです」

 良いらしい。まあ、僕には陸上やら部活の何たるかを語れないんだし、七篠に従うのが吉である。

「つーか、ユニフォームってなんか水着みたいだよな」

 おへそまで見えてるし。全然気にも留めていなかったんだけど、こう、改めて見ると露出が多いなあ。

「……そうですか?」

 そう言われると、僕の心が穢れているように思えてしまう。

「……先輩がそこまで言うんでしたら脱ぎますけど」

 僕はどこまで言ったんだ。良いから早く走ってこいよ。

「仕方ありませんね」

 残念そうに言うと、七篠はグラウンドに戻っていく。僕たちはグラウンドから少し離れた、皆の邪魔にならないところに腰を下ろした。

「速いわね」

「足が?」

「うん」

 暫くの間、僕たちは七篠が走っているのを、黙々と、ただただ見つめる。どれくらいの時間が過ぎたのだろう。

「七篠さん、浮いてるわね」

 ふと、明石さんがこんな事を言った。

「何が?」

「だから、部活の中で。ほら、誰とも話そうとしないじゃない」

 練習中だからじゃないのかな。

「他の人たちは楽しそうにお喋りしてるわ。と言うか、真面目に走ってるのは彼女だけよ」

「友達、いないのかな」

「多分ね。だからあんたみたいなのにも見にきてくれって頼んだんじゃない?」

「いじめられてるのかな」

 ちょっと不安。気分としては雛の巣立ちを見守る親鳥に近いものがある。

「それはないわね。ただ、浮いてるだけよ。周りが軽過ぎて」

「周りが軽いなら沈むんじゃないの?」

「そう言い換えても良いけどね。どうせ状況は変わらないんだし。孤立ね、孤立。私、孤立するには、最低でも二つ条件があると思うの」

 孤立の条件? あんまり聞きたいとは思えない話だ。

「他人より持たないか、持ち過ぎているか。この二つ。大概が足りていない奴が孤立するんだけどね」

「何か持っていないといじめられるって事?」

「違うわ。孤立といじめって、案外遠いものなの」

 明石さんの表情はどこか固い。

「いじめって、少なくとも二人の人間が必要なのよ。いじめる側と、られる側。かなり歪んでるけど、いじめって一応は他人との繋がりがあると思うわ」

 でも、と、明石さんは続ける。

「孤立は本当に一人なの。自分以外の誰とも繋がっていない。それは孤立している本人にコミュニケーションなり、競争心なり、力がない。持っていないのよ。持たないから、何もないから独りになる」

 何だか耳が痛い。

「七篠さんの場合は、その逆。持ち過ぎているから一人になっている。私としては、彼女が部活動に所属する理由が知りたいところね」

 なるほどね、いじめと孤立か。無視はどうなのだろうと思ったが、無視にも、する側とされる側がいるもんな。孤立させる、とは、あまり聞かないし。

「七篠さんの身体能力ってかなり、今までに見た事がないくらいに高いの。彼女ならどこの部に行ってもスター扱いね」

 あいつが陸上を選んだのは足に自信があったのと、多分、団体競技じゃないからだろう。バスケットボールとかバレーボールとか、ザ・チームって感じの部活は合いそうにないから、だろうな。

「でも、だからこそ際立つ。一年生で、しかも入部したてで新記録作って、エースなんて呼ばれてみなさいよ。他の人たちはどう思うでしょうね」

 うーん、確かに。同学年も、上の学年も面白くはなさそうだなあ。やる気なくなっちゃいそう。

「でも、あの子はそんなの気にしてはいないのよね。仮にエースじゃなくても、ただ、ああやって走る。自分の力を必要以上に誇示しない、鼻にかけない、ひけらかさない。……その相手がいないんだからね」

 だから、いじめられない。故に、孤立する。

「何よりも、孤立するのを辛いとは思っていないんでしょうね。助けを求めないし、弱音も吐かないし」

「僕とあいつは、そうやってきたからね。今更、高校生にもなって変わろうとは思わないんだよ」

「あんたがいたからじゃないの?」

「僕が?」

「身近にあんたがいたから、幼馴染みがいたから、だから、ぎりぎりであの子は一人ではないのかも」

 僕が七篠に与えた影響はあるのだろうか。そもそも、何か与えられたのだろうか。人間が人間に影響を受ける事が、あるのだろうか。

「あんたがいなきゃ、七篠さんはもっと違う生き方を身に付けていたでしょうね。今よりも可愛く、今よりも普通で、もっとこう、女の子らしく」

「まるで僕が悪いみたいな言い方だね」

「そんなつもりはなかったけど、ごめんなさい、他人を評価するなんて趣味が悪かったわね」

 無趣味よりはマシかもしれないけどね。

「……綺麗なフォームね」

「え?」

「七篠さん。あんなにカッコイイ走り方、今までに見た事がない、かな。私だって頑張ってたから、少しは自信があったんだけど」

 そう、か。明石さんは持たなかったからいじめられて、七篠は持っているから孤立する。僕は、何もない。何もないんだ。

「僕には良く分からないけど」

「あ、そ」

 明石さんは息を吐いた後、嘘みたいに優しい笑顔をこちらに向ける。

「でも、あんたがいなかったら、あんなにカッコイイものを見れなかったのかもね。うん、孤立ってか、孤高かしら。ふふ、そっちの方がカッコイイもんね」

 やめてくれ。ちょっと、ほんのちょっとだけ、君の事を可愛いと思ってしまったじゃないか。

「どうも」

 素っ気なく、僕はそんな風に装って立ち上がる。

 と、冷たいものが頬に当たった。なんだろう。

「あ、雨」

「ホントだ」

 雲の流れが速い。あっという間に、曇天が空を覆い隠す。遠くの方でゴロゴロゴロって音も聞こえてきた。

「校舎に戻りましょうか。部活も、これで早く終わってくれるんじゃない?」

 傘を持ってくれば良かったなあ。天気予報、見ていれば良かった。

「雷、近いわね」

 うん。でも、流石に落ちてはこないだろう。僕よりも背の高いものがいっぱいあるんだし、避雷針ぐらい校舎に付いててもおかしくはない。筈。

 グラウンドに目を遣れば、七篠や、他の運動部も屋根のあるところに逃げ込んでいく。僕らも屋内に避難するとしよう。

「待ってよ明石さん」

 先行する明石さんに追い付こうと足を踏み出した瞬間、光と一緒に、音がやってきた。熱い。痛い。なんだ、こりゃ?

 考えてる内、意識が、薄れて。

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