魔導の日
ついに俺の番がやってきた。魔導板に触れることでわかる能力適正は、魔術適正と剣術適正、そして総魔力量の三つの才能についてだ。そしてその適正値は5段階のランクに分けられる。
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Sランク 適正値90以上 国王の側近や王宮魔術師、軍の上層部などはほとんどがこのランクだ。
Aランク 適正値70~89 上級貴族の護衛などに多い。かなりの才能の持ち主。
Bランク 適正値30~69 この世界の平均的なランク。大体はこのランクの人が多いみたいだ。Bランクだけは適正値の幅が広いため、同じランク内でもかなり才能に差がある。
Cランク 適正値20~29 平均以下の才能。基本的にCランクになったら、才能なし、と判定される。
Dランク 適正値20未満 Cランクよりもさらに下がある。それがDランクだ。Dランクになったら、基本的にその道は諦めたほうがいいらしい。父は、剣術適正Cランクの剣士はたまにいるが、Dランクの剣士はさすがに見たことはないと言っていた。
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適正値はその人の将来を大きく左右する。この世界の住民はみな、まだたったの3歳にして人生の岐路に立たされる。それくらい、この才能というものは大事なのだ。
例えば、剣術適正値が50の人が一年かかってやっと習得するような技能を、Sランクの化け物たちは1か月もかからずに習得してしまう。これほどまでに、才能は重要なものなのだ。
そして、適正値を左右する上での最も大事な要素は、両親の適正値だ。基本的には適正値は父と母の平均値ぐらいになるらしく、両親の適正値と大きくかけ離れた数値が出ることはほぼないみたいだ。
幸運なことに、俺の両親は二人ともかつては王国内でもかなりの実力者だったと言っていた。父のグロットはすべての適正がAランクで、母のアリアも剣術適正はBランクで他はAランクと、俺はかなりいい血筋みたいだ。だから、両親は俺にすごく期待してくれている。
そんな両親の期待を胸に、魔導板へと向かう。
「それでは、深く息を吸って、右手をこの魔導板の上に乗せてください。」
係員の女性に言われるがままに、手を置く。すると、魔導板は淡く輝き始め、そこに文字が投影されていく。
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名 タレス・アーレント
適正値
魔術適正 17 Dランク
剣術適正 46 Bランク
総魔力量 18 Dランク
総合評価 Cランク
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両親、そして何より自分自身の期待を裏切るような低い数値に、言葉が出てこなかった。後ろでは両親が俺を慰めてくれているような気もするが、俺の耳には届かない。正直、オールSランクなんかを期待していた。自分の考えの甘さに気付かされた。あぁ、いろいろ考えているうちに眩暈がしてきた。そして突然、俺の視界は暗転する。
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タレスが意識を失ってからおよそ一時間後、魔導板の広場には人だかりができていた。そこに集まった人々は、口々にこう言う。
「王国の救世主だ!」
「10年、いや、100年にひとりの逸材だ!」
その少女の名は、エラ・ローレンス。この国の王女にして、すべての適正値でSランクをたたき出した、正真正銘の天才。そんな彼女は、大喜びする群衆を横目に見ながら、こう思う。
(こんな才能必要ない。できることなら、私は彼ともう一度会って一緒に言葉を交わしたい。会って謝りたい。私のせいで死なせちゃって、ごめんねって。)
そう願いながら、彼女は彼の名前を呟く。
「達也…貴方に会いたい。」
数年後、彼女は思わぬ形で彼と巡り合うことになるが、それはまだ先の話だ。
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