転生、そして…
どうも初めまして、豆の木です。
俺と恵理が出会ったのは高校二年の頃のことだ。彼女に一目ぼれした俺は、あの手この手で彼女にアピールして、どうにか付き合うことができた。
そして、気づけば高校卒業、大学…と過ぎていき、俺たちが社会人になった今でもその関係は続いている。最近は、『ああ、このまま俺も、この子と結婚とかすんのかなぁ。』とか思ったりもしていた。
そんな俺にとって、彼女の一言は、まさに青天の霹靂だった。
「ねぇ達也、私達、別れましょう。」
「え…?」
「私なんかには、あなたはもったいない。」
「おい、それってどういう…」
「ごめん。」
そう言って恵理は走って出て行ってしまった。慌ててその背中を追う。恵理は赤信号も無視して交差点を横切る。
するとそこには、猛スピードで突っ込む1台の車の姿があった。
危ない!俺は交差点に身を乗り出して、恵理を突き飛ばす。どうか、どうか彼女だけは助かってくれ。その直後、俺は車に撥ねられて意識を失う。
…体が熱い。息が苦しい。頭から血が流れる。ああ、俺は死ぬのか。…そうだ、恵理は?お願いだ、どうか彼女は救ってやってくれ。
そう思った瞬間、俺の眼前に広がったのは、車の下敷きになっていた恵理の姿だった。どう見ても死んでいる。
助けてやれなかった。もっと奥に突き飛ばしていれば。そもそも交差点の前で引き留めていれば。そんな後悔が頭を駆け巡る。
ああくそ、自分も死んで彼女も助けられないとか。
「最悪…だな…」
そう言ったが最後、俺は意識を手放した。
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次に目が覚めたのは、見知らぬ部屋の天井だった。俺の周りは、北欧系かな?そんな感じの顔つきの男女数名が取り囲んでいた。よく見ると涙を浮かべている人もいる。
まったく状況がわからないので、彼らに話を聞こうとする。だがしかし、うまく言葉が発声できないし、彼らが何を言っているのかもわからない。
「あうあうあう、ばー!」
…ん?今の俺の声か?なんか赤ん坊の声に聞こえたんだけど…。しかもなんか俺の手ちっちゃくね?
と、ここまで考えて俺は思い至る。
どうやら俺は、知らない赤ん坊に生まれ変わったみたいだ、ってことに。
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転生してから3年が経った。どうやらここは、俺たちの住んでいた世界とは別物らしい。剣と魔法の飛び交うファンタジーの世界。冒険者が魔物を狩り、そんな魔物を束ねる魔王がいる。そんな世界。
俺は、タレス・アーレントと名付けられた。アーレント家の長男として生まれ、なかなか子供の出来なかった両親は跡取りができたと大喜びだったみたいだ。
それにこのアーレント家はなかなか有力な貴族らしく、最近は父のグロットが他の貴族との権力争いに躍起になっている。俺が生まれたことで一家を支える自覚が芽生えて張り切っているとのことだ。
貴族たるもの、常に民の規範たれ。
これがうちの家訓らしく、三歳になったその日から剣術と座学の授業が始まった。家庭教師のサレフはかなり教師としての腕がいいらしく、今は俺のほかに俺と同い年の王族の子供を教えているらしい。
彼曰く、俺とその子供はどこか似ているみたいで、この間は名前を間違えられた。その王族の子の名はエラというんだそうだ。
そして今日は俺の魔導日だ。魔導日というのは、三歳の誕生日を迎えてちょうど半年の日のことだ。
その日を迎えた子供は王都に集められて、魔導板という板に触れる。するとそこにパラメータみたいなのが表示されて、子供の隠された才能が明らかになる。
大体の人は、将来は自分の適正が高い職に就くみたいだ。例えば魔法適正が高ければ魔術師、剣術適正が高ければ剣士、といった具合に。
俺はその魔導日を心待ちにしていた。何故かって?そんなの決まっている。異世界転生はチートスキル持ちって相場が決まっているからだ。ラノベで読んだから間違いねぇ。
そんな期待を抱きながら、魔導板のもとへ向かう。
これが俺にとっての悪夢の始まりとは知らずに…。
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