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プレイヤー二十人でお送りする、異世界デスゲーム  作者: PKT
それぞれの初日
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御堂朧の初日

 御堂朧は、何を考えているのかわからない男だ。少なくとも、彼のクラスメイト達は、

 あまり人と関わらず、授業中も窓の外を眺めていることが多い。掴みどころのない人物だった。

 学業の成績は中の下、運動もそれなりと特長もない。


 そんな彼が、この遊戯に参加したのはたった一つの理由だった。すなわち、人を殺せるという点だ。

 いつからそのような歪んだ願望を持つようになったのか、それは彼にすらわからない。確かに、今の生活に鬱屈を感じてはいたし、新しい刺激を求めていたのは確かだが、それが殺人へと直結する理屈はない。

 彼自身、殺人を嗜好する自分が歪んでいることを自覚している。だから、そんな願望を自身が持っていることを頑なに否定しようとしてきた。

 しかし、このゲームが(彼にとっては)プレイヤー同士の殺し合いであり、何より自身の保有スキルにキルレイズが存在したことで、彼は自身の欲求が肯定されたのだと思った。


 彼のスタート地点は、帝国の街の一つだった。

 そして、彼はすぐにプレイヤーと出くわすことになった。

 街並みを眺めながら歩いていると、指輪が発熱し始めた。一瞬、その意味を理解して立ち止まるが、次の瞬間には再び何事もなかったかのように歩き出した。目立たない様、目だけを動かして()()を開始する。

 すぐに()は見つかった。顔をキョロキョロと左右に動かし、どこか怯えた様子を見せる男子だ。自分より年下に見える。

 そのまま尾行を続けていると、彼は人気のない路地裏へと入っていった。

 オボロも、その一つ手前の路地へと入り、即座に駆け出す。

 相手の行く先で待ち伏せようという考えだ。

 先回りは成功し、敵の視界に入る前に積まれた木箱の陰に隠れる。そして、箱の隙間から敵が来るはずの方向を窺う。二分と待たずに、ターゲットの姿が視界に入る。

 心臓の鼓動が妙に大きく響く。マラソンを終えた後でも、これほど大きな鼓動を感じたことはなかった。


 仕掛ける機会を窺っていると、突如ターゲットが背後を振り返った。願ってもないチャンスだ。

 素人なりに足音を殺して忍び寄り、映画の見よう見まねで首へと一撃を入れる。

 相手は思ったよりもあっけなく地に倒れた。

 そこまでやって、オボロは彼に止めを刺すための武器を、自身が持っていないことに気付いた。無我夢中だった為、そこまで気が回らなかったのだ。

 慌てて周囲を見回し、丁度ガラスの破片があることに気付いた。

 自身の手を切らないように手に取り、ターゲットの首に押し当てる。

 疲れてもいないのに、呼吸が荒くなる。手が震え、顔に幾筋もの汗が流れる。

 そのまま十数秒硬直し、ぎゅっと目を瞑ってその手を首に沿って引く。赤い飛沫が飛び散った。

 全身の力が抜け、ガラス片を取り落として尻餅をつく。

 流れ出す血液を見て、しばらく虚脱状態にはなったものの、気分が悪くなったりということはなかった。精神耐性のスキルの恩恵だ。


 やがて虚脱状態から脱すると、周囲に人目がなかったのを再確認し、足早に立ち去る。

 彼が想像していたような後悔や自責の念を感じることはなかったが、達成感などのプラスの感情も覚えなかった。

 落ち着いたところで、自身のスキル欄を見てみる。キルレイズの効果で、新たなスキルが表示されていた。

 新たに得たスキルは”透明化”。他のプレイヤーを仕留めた場合、強力なスキルが手に入るという説明は受けていたが、これほど有用なスキルが初日から手に入るとは思っていなかった。興奮で拳を握りしめる。

 どの程度の時間、透明化が持続するかはわからないが、キルレイズと相性が良いのは間違いない。


 ともかく、まずは対人用の武器を調達する必要があるだろう。

 そう考えた彼は、それらしいものを扱っている店を探して、街の散策を再開した。

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