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プレイヤー二十人でお送りする、異世界デスゲーム  作者: PKT
それぞれの初日
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笹川坪見の初日

 笹川坪見は、食べることが何よりも好きだ。心の底から好きだ。三度の飯に加えて間食や夜食を好む、度が過ぎるほどの食べ盛りだ。

 それは何も、美味しいものに限らない。ゲテモノだろうが珍品だろうが、未知の味を探求することが、彼の人生の一番の楽しみだ。

 当然、この異世界での楽しみも、地球にはない食が目当てだ。


 開始位置は、魔術連合国の首都であるアセアス。異世界ならではの、魔術を駆使した料理を味わえるのではないかという期待からだ。

 早速立ち寄ったのは、大衆向けらしい食堂。厨房の見えるカウンター席に陣取って、メニューを眺めるフリをしながら、奥を覗く。

 機械の類は一切見えず、鍋を温める火は魔訶不可思議な文様の中央から噴き出している。

 食材を冷やしているらしい、金属製の容れ物にも別の紋様が光り輝いている。ツボミは知らなかったが、魔術陣によるものである。


 いかにも魔術国家らしい厨房の作りに満足したツボミは、改めてメニューを眺める。

 そして直感で二品を選ぶと、あとは腕組みして黙々と待った。

 待った時間は長くはなかった。

 まず出てきたのは、水鳥の肉をワインでソテーした物を、丼の上に乗せた一品だ。これまでの食生活で嗅いだ事のない、独特な香辛料の香りが期待感を高める。中央の肉を囲うように、丼の淵に沿って添えられた野菜が、色合いを補強して見た目をより良いものにしている。

 嗅覚と視覚で料理を堪能した後、いよいよ目の前のそれを味覚で楽しむ為に、地球のそれとほぼ変わらない形状のスプーンを握る。

 まずは、肉のみを一口。タレの甘さと香辛料のアクセントがそれなりに調和しているが、少し後味がくどかった。些か味が濃いのは、ご飯と食べるためか。そう考えて、今度は白米と共に肉を口に頬張る。それでも、わずかに肉の味付けが主張し過ぎていた。

 淡泊な風味の水鳥の肉をメインに据える為、過剰に味を加えすぎたのか・・・などと一瞬考えて、丼の周囲の野菜をまだ味わってないことに気付いた。野菜は、僅かな時間湯に通しただけらしく、野菜本来のものらしい甘みと感じられるかどうかという塩味が、柔らかな食感とともに広がった。

 その味で閃き、野菜と米、それに肉を一緒くたに頬張るツボミ。野菜が加わることでようやく、肉の味付けのくどさが緩和され、野菜のおかげで食感までもが強化されていた。後味も、野菜の甘みとわずかな塩味により、タレのくどさを緩和している。完璧な調和とは言えなかったが、丼の評価自体は大きく変わった。無論、良い方にだ。


 次の料理が運ばれてくるまで、ツボミは一心不乱に丼を頬張った。

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