怪盗と警察の星
なろうラジオ大賞用作品第四弾。
世界人口が五十億人を突破し、人口の増加を原因とする様々な環境・経済問題がさらなる悪化を見せた近未来。
国連はそれらの問題に対処するため、これまで国家間で競い発展させてきた宇宙開発を、国家間で協力し合い発展させる事を表明。
この決定に一部国家は自国の利益を考え反対したが、最終的に全ての国が、次代の若者の事を思い、一致団結して宇宙開発に臨んだ。
――そして月日は流れ、十数年後。
ついに人類は、移住可能な星を見つけるため外宇宙へ旅立った。
果たして彼らが行き着く先は人類のさらなる発展か、それとも破滅か。
※
燃料補給のため、僕ら宇宙船クルーは、奇跡的に発見した有人惑星に降りた。
異星語翻訳機を介して聞いた、ここに住まう異星人の話によると、どうもこの星は警察帝国と怪盗共和国という二大国家が、日々諍いを繰り広げているという珍妙な星らしい。
そして今回僕達が降りたのは警察帝国。
泥棒の国に降りるよりマシだが、僕達は警察帝国民から燃料の提供と引き換えに『ゲミデの鏃』なる宝石の警護に協力するよう依頼された。
「まさか探偵のマネをする事になるとはな」
船長は苦笑した。同感だ。
「でもワクワクしますねっ」
そういうアニメを見た事があるのか、女性クルーが目を輝かせる。
僕達が今いるのは帝国内にある美術館の展示室だ。
目の前では例のゲミデの鏃なる、名前の通り鏃の形をした薄緑色の宝石がガラスの壁に守られ展示されている。
そして宝石の周囲には、帝国民である警官がズラリと並んでいたのだが、
一瞬電気が消えてから再び点灯。
そしてこれまたテンプレ通りガラスの壁の中の宝石はなくなっていた。
途端にパニックになる警官達。
中には僕達の誰かが怪盗共和国民ではないかと喚く警官もいたが、だったら僕らをここに来させるなよ。
というかそれ以前に、犯人はいったいどんなトリックで宝石を?
「んんー、もしかしてですけどぉ」
その時、女性クルーが意見する。
「この場にいる警官のみなさん、すでに怪盗共和国民と入れ替わってたりして」
「「いや、そんなバカな」」
同時に意見する僕と船長。
確かにミステリーっぽいオチだがそんなバカな。
冗談だったのか女性クルーも「ですよねー」と笑った。
だが反対に、周囲の警官達は目を丸くしながら、
「なぜ分かった!?」
と声を揃えて叫んだ。
「「「なんで当たってるの!?」」」
僕らも声を揃えて思わず叫んだ。
というか怪盗大勢いるからってトリック単純すぎるだろ!?
そして警察はいなくなった。