夏休みハインライン
3.夏休みハインライン
給水塔。
海、電車、電柱。
夏、白いブラウス。
レモン糖。
これが、夏休みのイメージだ。
どこかにたどりつきたい気がしていたし、これらのものがあれば、実際にたどり着けるような気もしていた。
失われたすべてを取り戻す場所。
ここが、その場所なのだという確信を、ぼくは強める。
じりじりとした熱が、ぼくを焼き、ものおもいから、ぼくは目が覚める。
意識の焦点をあわせると、みんながいる。
ぼくはみんなを、大切に思っている。
まわりで何かを話していて、ぼくは手元の本に目を落とす。
ざあっ、と音がして、風がふく。
風を聞きながら本のページめくる図書カードを栞がわりにして
夏休みハインラインを、通常の小説の形にすることができず、ある種、奇妙な終わり方で世に出すことにする。
しかし、第一章の星空スタージョンで、僕が書きたかった雰囲気自体は十分に書けている。
ストーリーが途中でどこかに飛んで行ったことは、この小説に限っては、全く問題がないと考えている。大事なのは、ぼくの心の中にあったある雰囲気を、言葉によって皆さんにも共有するというところにあるのだから。ストーリーではなく、アトモスフィアを伝えたかったのだから。
この小説に関しては、無断転載を許可する――もしあなたの心の琴線に、このお話がいい意味で触れたのであれば。