#5 適合
TKO狩場フィールド、雪原荒野。とある少年プレイヤーは2丁のショットガンを携え、獲物を待ち伏せしていた。すると、少年は見覚えのある男を発見した。
「…わっちゃん?」
同じく雪原荒野。笑顔を絶やさないmeyucaとそれに釣られて笑うwiseがノコノコとモンスターを探していた。
「それマジの実弾銃なんだろ?セーフティ外すなよ」
「APM63はセミオートに人感センサーが付いてるから誤押の危険性は少ないんだよ?授業で習わなかったの?」
「習うかっ!一応パーティメンバーだからな。特に圏外(街や村の外。)は仲間でもPKが可能だしテメェのそのちっちゃい脳ならそのもしもを否定できない」
wiseはそのちっちゃい頭に手を置いた。meyucaは少し照れくさそうだったが、
「あのさ、私のちっちゃい脳でもワイズさんの後ろにいる魔獣に気づ…」
言葉の途中でカールグスタフM2の素早い攻撃が魔獣(?)に炸裂する。
「ワイズさんってなんだよ。初対面か?あとコイツ、AI兵器だ。見た目は魔獣のような形をしているが、搭載された部類別に分けられた人工知能が搭載されている。コイツの弱点はその司令塔である脳の部分だ。そこを狙い撃て。」
「ほ、ほぇ〜。」
圧倒的な経験不足でmeyucaは呆気にとられる。そのAI兵器とやらは、TKOでVR初となるのだ。兵器にNPCを利用したとも解釈できる。
今回のAI兵器は比較的弱い種だったのか、二人の乱射で木っ端微塵にされたようだ。もちろん、二人の乱射が強すぎるのも関係しているが。
「こんな簡単に倒せるんだし、バンバン行かない?」
meyucaは乱射や掃射ですっからかんとなった弾倉に19mm弾を数発装填する。しかしwiseは、
「疲れたし休憩するねー。バンバン行きたいなら先行ってて。」
ともやし発言をしていた。
「はいっ!じゃなくてわかったよ」
meyucaは恥じらいを隠すように早急に去った。
wiseはいつも通り、小屋に入り予め設置されていたコーヒーサーバーで上手にコーヒーを作る。エアーメニュー(空中に映すスクリーン。そこから色々な作業が可能だ。)を取り、大好きなお笑い芸人のトークショーを再生する。毎日の休憩としてこれを行っている変わり者、それがこの男である。
「あれ?これエスプレッソじゃん」
一方、陽気なチビっ子のアサルトライフルマンは続けてモンスターを探していた。すると、
「あ、あのぅ…ちょっといいですか?」
「?」
(かわいい…!でもどうして私に…)
meyucaの前に現れたのは、小声で控えめな女子高生だ。武装も見当たらない。
「あそこにいるモンスターってつ、強いです?」
「あそこ…?どれどれ」
meyucaはモンスターが見当たらないからか、困惑した。すると、meyucaの頬辺りに硬いものが触れた感覚がある。
「!」
硬いもの、ショットガンの銃口が向けられたのだ。それも先程の女子高生プレイヤーだ。
「おはようございます!」
「っ!」
ショットガンが放たれ、meyucaは吹っ飛ばされた。ライフゲージもかなり減る。
目を覚ますと、先程の女子高生プレイヤーと何故かqeueenが高笑いをしていた。meyucaはすぐに立ち上がる。
「馬鹿な子。てか女の子のアンタが罠にかかるなんて1ミリも想定してなかったわ?もしかしてGLとか?」
「…組んでたの?」
すると、qeueenはまた笑い始める。
「mykiちゃん、包囲」
「はい」
指示通りmykiは分隊を束ねてmeyucaを囲む。qeueenも加わった。
「いつもいつも小賢い手を使いやがって!」
myki達は依然として苦笑を浮かべていた。
「…あーあ。また君は負けたね。」
meyucaの心の中、再度現れたのはスコードルンだ。狂気に満ちた格好は前回同様である。
「君は弱い。だから僕が必要なんだ。分かるだろう?」
「…ほっといてよ」
meyucaはそっぽを向く。
「さぁさぁTKO最初の遺言を一言!」
qeueenは笑いながらポインターを当てる。
「…その言葉、そっくりそのまま返してやるぜ」
「…撃て!」
スナイパーライフルの射撃が一斉に行われる。しかし、meyucaはそれら全てをビームサーベルで斬り飛ばしたのだ。
「構わず撃て!」
「遅いな、クイーンさんよ」
「うっ」
既にqeueenの目の前にいたmeyucaはゼロ距離でAPM63を連射する。さらに、同様にして一気に愉快な仲間たちを全滅させたのだ。mykiだけが残る。
「やめてください…やめて…くだ…」
「うっせェな。僕の好きにさせろよ三下。」
APM63の弾丸を1発ずつ当てる。まるで苦しむ姿を楽しんでいるようだ。そのとき、
「あっ…」
meyucaの後頭部に何者かがスタン弾を撃ったのか、meyucaはそのまま気絶する。
「お前は、お前らしくあれ。」
少年はそう言い残し、去って行く。
休憩を終えたwiseは、コーヒーを片手に散歩がてら小屋の周辺を彷徨いていた。すると、
「動くな!」
ゼロ距離で銃口を向けられる。
「お前も飲むかぁー?」
「ばば、馬鹿にすんなよ!もうトリガー1つ引くだけであなた死ぬんだよ!ほらほら!」
声の主はmykiだ。先程同様、不意を狙っていたのだ。そのとき、wiseは目の前で気絶しているmeyucaに気づく。
「そいつパーティメンバーなんだが、お前がやったのか?」
「違う。私は誰かに助けられた。」
「まぁいい。でも、ボクに銃口を向けたんだ。それなりの覚悟はあるんだろうな?」
wiseは少し笑みを浮かべる。
「ねぇあなた、私が誰か知ってる?」
すると、mykiの合図で周囲に中戦車数台が現れた。mykiは戦車の1台に上り、
「みーんな私の信者!」
「そうか。」
wiseは動揺の1つもせずに棒立ちしている。
『核はMVTKでいいんだな』
「ああ」
そして軽く頷いた。
「どうした?ビビって声もでなくなった?」
「…ショータイムだ」
辺りは煙に包まれる。
「…なによこれ!」
mykiは中戦車『MVTK』から降車した。
「はっ?」
mykiは突然言葉を失った。
「信者に勝るのは、適合者だ。」




