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Loqacium  作者: きほまる
2/6

#2 対峙

VRMMOゲームでは、個人のステータスが存在する。ただ、今回のようなサバイバルバトルではステータスを隠しての施行。すなわち初心者かどうかは確証できないのだ。


扇状地。先程の戦闘があった中流域の少し北に位置する。そこで2つのパーティの戦車が睨み合っていた。一方はKPZ-ex-61。meyucaの乗っていたKPZ-61の最終形態である。もう一方はLPC-nx43。こちらはTKOオリジナルの中戦車。敢えて言うなら米車の特徴を持つ。

『そこのLPCに告ぐ!我々のプレイヤーレベルの平均は95。世界ランキング100位を切っている。今ここで降参してくれたら次は見逃してやる。』

KPZの放送だ。レベルは100まであり、プレイヤー総数は1億を超える。よって彼らは″自称″トップランカーなのだ。

「兄貴、割とガチっぽいッスよ。KPZも全進化してますし、放送を使える時点で確実にランカーッス。」

LPCのパーティの一員、legweyがリーダーのmienに向けて言う。しかし、

「主砲を放て。躊躇せず乱射しろ。」

「し、しかし…」

「撃たねば死ぬだけだ。」

mienの指示を受けたlegwey達は一気に主砲のトリガーを引く。それに合わせて相手のとてつもない弾幕も動き出す。このままではLPCが破壊されるだろう。しかしmienはある″隠し球″にかけていたのだ。その隠し球は既にKPZの甲板に上っていた。


「もしや…このまま耐えるのが使命ですかね?」

弾幕を喰らっている状態でlegweyはハンドルを切る。

「あぁ。できるだけ時間を稼げ。…奴の戦車への好意に賭けて。」

LPCはそのまま側面に前進した。隠し球の仕事に期待しているようだ。

そして例の隠し球は行動を始めた。

「貴様っ!何者ェ…」

KPZの門番らしき伏兵が現れたが、隠し球のwiseは首を掴んで無力化する。

「…ボクのLPCちゃんに…手ェ出すなよ、三下。」

「テ、テキシュウ…」

伏兵の死にものぐるいの叫びで、中にいた数名の兵士達が一気にwiseにポインターを当てる。

「奇襲兵を撃て!」

兵士達は一斉に射撃を試みた。しかし、wiseはそれを全て回避したのだ。まるでパンチを避けるかのように。

「ランカーさんよ、興ざめだなァ。大人しく死ね」

「二丁ミニガン…?M195…!」

とてつもない爆音で弾丸が掃射される。ただでさえ重いミニガンを、彼は両手に携えている。その割には行動速度が異常に早い。


扇状地、外周。草木が生い茂るこの颯爽とした地域で、エメラルドブルーの髪を流す少年はレッドブルを片手に寝っ転がっていた。戦場であるこのフィールドでの休憩行動はかなりの危険が伴う。フィールドスキャン(プレイヤーの位置が公開されるシステム)が始まる。少年は眠たそうに目を擦りながら辺りを見回す。

「mienか。座れよ」

「奔放だなぁ、お前は。ほらスキャン始まんぞ」

少年wiseの背後に現れた青年mienは少し微笑む。

「残りプレイヤーは19名でパーティはたったの3個。恐らく巨大なパーティがあるんだろうな。」

wiseは慣れた感じで状況を整理する。

「包囲の危険が高い。wiseは別行動をした方がよさそうだな。オレとlegweyはwiseの交戦状況に合わせてLPCを動かす。」

「おっけー」

wiseは軽く会釈をして行動を始める。mienもLPCに戻った。


wiseは川下へと歩いていた。すると、無人の中戦車を発見した。

「…初期型か。乗り捨ては好まねぇな初心者。」

中戦車の甲板に登り、型番を確認する。KPZ-61。既視感のある名称だ。機関銃に手を触れたそのとき、ポインターを受けた。

「ったく、物騒だな」

電磁を帯びた弾丸が放たれる。wiseはシールドで防ぐ。しかし相手は既にwiseの背後にいた。中学生程度の少女だ。

「仕留めた」

相手の少女はビームサーベルを取り出し、回転を利用してwiseの側面を切りつけ…る前にwiseは既に右手首を掴んでいた。

「へぇー。強いなテメェ。スピードが異常だ。」

「…っ」

少女、meyucaはフリーな状態の脚を使ってwiseを蹴飛ばす。wiseはそのままバック転をしつつ着地した。

「テメェ、これのオーナーかァ?大事にしろよー!」

KPZに手を置く。

「…私が…勝てない…?」

「ああ?」

meyucaは焦りを覚えたのか、ぎこちない動きでアサルトライフルに弾丸を装填する。

「掃射!」

と叫びつつ丸腰のwiseに向けて弾丸を文字通り掃射する。しかし標的のwiseは転々と姿を移し、終いにはmeyucaの背後に立っていた。

「くそ!」

「周り見ろ」

「!」

なんと周囲には、数名の伏兵が姿を現したのだ。その中には女子プレイヤーのqeueenもいた。恐らく、全員同じパーティの仲間なのだろう。

「おお?そこのクソ初心者を狙ってたのに、先客様がいらっしゃるとはねぇ。まとめて殺しますか。リアルで。」

qeueenは適当な調子で告げる。そう、例の事件の主犯格はこの女子プレイヤーであるqeueenなのだ。wiseは平然として手を挙げた。

「なにィ?怖くて泣き寝入り?私がそんなネズミ生かすと思うぅぅ?」

qeueenの合図でポインターが一斉にwiseに集まる。

「残念ながら生かされなくとも生きてるんだなァ」

「撃て」

伏兵達のスナイパーライフルによる乱射が開始された。wiseは1人の伏兵の背後に高速で移動する。そして、伏兵を盾にして片手に持ったサブマシンガンで応戦する。meyucaは羨ましそうに傍観していた。


「あら、1人だったわー!流石はスクワット戦の害児ね」

1人残ったqeueenはミニガンに持ち替える。

「そりゃどうも」

「…スクワット戦の害児って…。」

どうやらwiseはそう呼ばれているらしい。


「Wiseの野郎、真っ向勝負を挑もう」

qeueenはミニガンに弾丸を装填した。

「そうだな、遊んでやるぜェ殺人鬼」

wiseも応えるように2丁のサブマシンガンを構えた。

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