始まりの物語
1章 始まり
俺は朝早くに起きて学校までの道を歩いていた。
バス停があるのに歩いて向かうのには理由があるそれはうちの高校までの道のりにお地蔵様を祀った祠みたいなものがあり、そこにお菓子をお供えしているからだ。
なぜ、そんなことをしているのかと聞かれることがある。簡単なことだ、母親の影響が大きい。
それは俺が小学生の頃に迷子になって泣いていた時に見知らぬ女の子が俺の手をひいて家の場所がわかる位置まで連れてきてくれた。
母親も心配して探していたらしくそこで出会うことができた。母親にその女の子のことを話そうとした時には姿がなかった。
母親曰く、彼女はもしかしたらお地蔵様が遣わしてくれた子かもしれないと言われ、それ以来こうしてお地蔵様にお供えものをするようになった。
「さて、そろそろ学校に向かうかな」と言って立ち上がった。その時、「だ、誰かとめてー!!」と声が聞こえた。声質から女性だとわかった。振り向くとそれは猛スピードで俺を轢き殺そうとするかのようにこちらに向かってきていた。
俺は自転車に乗った彼女がハンドルをきろうとしないことに気付き、「ハンドルをきれ!」と聞こえるように大声を出した。彼女はそれに気づいたか気づかないかあいまいだが、ハンドルをきろうとはしていた。
「ちょっとまずいな」とつぶやき、俺は自転車を止めようと身構えた。止めようとして止まる理由はないから彼女にも覚悟を決めてもらうしかないと腹をくくり、自転車の片側に回りこんでハンドルをおさえてこちら側に瞬時にきった。その時に感じたのはそこまでスピードが出ていなかったことだった。
そのおかげだと思うが、彼女にけがをさせることなく、止めることに成功した。
「ふぅ、止まったぁ~!」安堵を感じる声が聞こえた。
我に返って「大丈夫?」と彼女の顔を見て言った。これが彼女「便房 静音」との出会いであり、自分の人生の分岐点だったと思う。
2章 出会い
私こと便房静音は小学校の頃から周りの子たちより少しどんくさかったのです。
「静音ちゃん、遊ぼう?」「ごめんね。今日は用事があってあそべないの」これが毎度のように繰り返される。
私には彼女達のことを何も知らないし、知りたいと思わない。正直、一人の方が気は楽だし、外で遊ぶことより室内で本を読む方が好きです。
そのうち、クラスの子達に誘われることはなくなって一人で過ごすようになりました。
そのまま、中学を卒業して高校に上がり、一年間過ぎて私は二年生になりました。
今日もいつもと同じような一日が始まると思っていました。
家の前にあるお地蔵様