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大罪のØ  作者: 夢辺 流離
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 セーレは非情に困っていた。

確かに下っ端の悪魔に任せるには不安しか感じないとは言え、

幼児をどう扱っていいのかさっぱりわからなかったのだ。

当の本人はと言えば配達用の鞄の中でスースーと寝息を立てていた。




 冥界と神界、---世界によっては地獄と天国と呼ばれる---はあまたある世界と密接に関わりながらも半ば独立して存在している。

死んだ生物の魂の管理『 輪廻転生 』により世界間での魂のコントロールをしている。

 冥界は生前悪事を働いた者の魂の浄化を、

神界は転生を司り、どちらも重要な役割を果たしている。

半ば独立している、というのは冥界や神界に属する者がスピリチュアルな、つまり霊的存在であり異世界に赴いたところで、物理的に干渉することは殆ど不可能だからである。


 それゆえに天使達は言葉を伝えることで、

悪魔達は唆す形で、自らの役割を果たすのである。



 なぜこんな説明乙なメタ発言をするかと言えば、

件の幼女が不完全な存在であったからである。


 天使はもちろん悪魔は出産によって生まれるわけではない。

悪魔にも2件ほど例外があるが、先にも述べた通り、

基本的には悪の象徴として具現化されるのである。

役割を果たすために具象化した悪魔はその時点で任務遂行可能な形で発生する。

つまり、自分の役目がなんであるか、そのために自分が何が出来るのかわかっていること(異世界への渡り方や異世界での言語の獲得方法など)が基本である。


 また、霊体である以上、肉体を保持するための食事を必要としない。

代わりに人間の感情や信仰を糧とする。

通常であれば、冥界における魂の浄化の際の、

人間の魂が発する恐怖などで事足りるのであるが、

人間や天使達によって蔑まれる悪魔達は苛立ちから

過剰な罰を与えたり、異世界で頻繁に誑かすようになっていた

そのことが悪魔達をますます忌避させることとなり悪循環に陥っていた。


 幼女は外見だけでなく、幼児そのままであり、

自らの使命を知るどころではなく、完全な霊体ですらなかった。

普通は身を包む衣服なども霊体の一部として発生するはずにも関わらず、布を巻いたような格好だったのだ。


 率直にいえば、セーレが生まれつきできていた意識する必要もなかったことを意識的にしなければならないということだ。

助かったのは、彼女が感情を吸収して霊体を保つことが出来たことで、

食事と排泄が必要なかったことであろう。


 面倒なことになった---という言葉に偽りはない。

だが自分では気づいていなかったが、その表情はいつもより明るかった。

 興奮していたことで少し操縦が荒れたのか、

わずかに振動が生まれたことで、幼女が薄らと目を開ける。

鞄から顔を出し、今だ寝ぼけている表情でキョロキョロとあたりを見回して、限界まで目を開き、ポカンと口を開けた。



         上空百メートルほどを移動していた。


 セーレは彼女の姿が見られないように高高度を飛んでいたのだ。

怖がるか、と思ったセーレであったが、彼女は声を上げてきゃっきゃとはしゃぎ、鞄が大きく揺れる。


「わ、わわわ。危いって!ちょ、ちょっと」

 そう言いながら片腕で鞄をしっかりと抱きながら手綱を握り締める。


 自分の好きな大空を、彼女も気に入ってくれたようで、気分が高揚したセーレは帰宅するまでに宙返りを含むアクロバティックな飛行を行い、一度彼女を落としかけたのであった。

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