表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大罪のØ  作者: 夢辺 流離
2/30

セーレと12の悪魔

 どうやら12人ほどの悪魔が、何かを取り囲んでいるようだ。

悪魔同士がつまらないことで争うのはいつものことなので、それだけであれば気に留めなかったであろうが、多対1であればやりすぎだろうと思い、彼らの行動を留めるべく、セーレは愛馬(但し翼付き)で急下降を速めた。



 「見回り、ご苦労様」

地面に一切の衝撃を与えることなく着地しつつ声をかける。


「それで皆で集まるほど何かあったのかい?」


 セーレのというより、上位の悪魔、魔神達の人柄(人ではないが)については皆良く知っている。

気に食わない、というだけでむしゃくしゃして殺った、反省はしていないという輩ばかりなので、何が逆鱗になるのか知っておかないと冥界では生きていけない。

セーレはそんな中では温厚で誠実なほうではあったが、卑怯なことなどは嫌うのだ。

まったく持って度し難いが、あくまで悪魔なのである。


「こここ、これはセーレ殿!ととと特別なことは何も」


 1人の下級悪魔がこちらに振り向きセーレに気づくなり、鶏のようになりながら答える。

手を突き出し、顔を左右に振りながらの返答は顔を滴る汗の裏切りにより、無駄となる。

 

 その悪魔の動作で他の悪魔達も気づいたのだろう、彼らもこちらに向き直るなり、同様に手を突き出し顔を左右に振る。



         シンクロ率400%か!


 セーレはなんとか口に出すのを堪えたが、思わずつっこんでしまうほど彼らの動きは揃っていた…あ、1人だけ揺れが逆だった。


 「これだけ君達が顔を揃えて何もないということはあるまい。何を隠している?見せてみろ」


 そういって彼らのシンクロを乱すようにかき分けようとすれば、

12人の悪魔は必死になって抵抗しようとしてくる。

それは異常だった。

悪魔にとっては爵位、いや実力が非常に重視される。

下級の悪魔なぞ上級の悪魔にしてみれば有象無象の存在であり、ましてや魔神にとってはもはや塵芥のようなものである。

 その魔神に対して抵抗を試みる…それは命がけとすらいえない蛮勇であった。


 一方で同時に集団リンチのようなものではないらしいとセーレは安心しもしたのだ。

魔神の逆鱗に触れて消滅することを恐れたのなら、このように消滅を覚悟で抵抗するはずもないからだ。


 彼らは罰することはしていまい、と思いつつも何が彼らを駆り立てるのか気になったセーレは一層の力を込めて彼らをかき分けた。

下級悪魔達の必死の抵抗もむなしく、開けた視界の先に見えたのは


 

      こちらを見てキャッキャッと笑う幼女だった。



 風にさらわれる金糸は、いつか見た夕焼け照らされる小麦畑のように煌き、瞳は森の木々を透けて降り注ぐ陽の光のような透き通った碧だ。

将来が楽しみな---この幼さでそれは異常ですらある---美貌はもちろんだが、何よりセーレが釘付けになったのは彼らに向けられた笑みであった。


 セーレがいかに王子然りの容姿、性格であったとは言え、だが悪魔だ。

しつこいようだが、それは呪詛のようなもので、

悪魔であると知られれば、整った外見ですらも、

”魅了し魂を奪おうとしている”と認識され、忌避され疎まれるのが常であったのだ。


 今、幼女がセーレに見せた一切の汚れ無き笑みは、彼らの心をキュンとさせるのには十分過ぎる破壊力だった。


「なぁ、セーレ様なら他の方々よりマシじゃねぇか?」

 

 そんな声が聞こえてくる。


「確かに。他の方々に知れたら容赦なくぶっ殺されちまいそうだもんな」


 「セーレ様」


 始めに俺に話しかけてきたやつが真剣な目で俺を見据えてくる。


「本日担当区域を見回っておりましたところ、声が聞こえてきまして様子を見に来たところ、」



        「天使を発見しました」


 いやいや、俺ら悪魔だからな!天使は天敵だから!!


 ……言いたいことはわかるけれども。


「警戒しつつも確認したところ、一撃で重症を負い、身動きできなくなりました、時間になっても戻らぬ我らに気づき、交代の班も出撃。交代班も同様に重症を負い、身動きできず現状に至ります」


 言っておくが彼らに怪我などは一切無い。

過去の古傷の痕がせいぜいあるくらいだ。


 確かソロモンの居た世界で言うところの『ろり魂』だったか。


       こいつら重症だ。


 セーレ自身頭痛を感じ始めていた。


「セーレ様、他の方々に見つかればどうなるかわかりません。セーレ様がお預かりくださいませんか?」


「は?」


 とても配下に聞かせるようなものではない発言をセーレはしてしまっていた。

■■■


■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ