魔剣の存在意義と旅の始まり。 そのきゅう
彼女はいつも遠くを見ていた。
その目は少し寂しげだった。
彼女は寂しかったのだろうか。
彼女は辛かったのだろうか。
彼女はいつも誰かと一緒にいたかったのだろうか。
彼女は、愛を欲していたのだろうか。
賑わいと活力溢れる昼下がり、いつもの如く街は循環し、その騒がしさは絶える事を知らないようだ。
「ただいまっ!」
騒がしい奴も帰ってきたし、騒がしさも増すのだろうか。
「お邪魔します」
余計なやつも連れてきたなあいつ…
「邪魔するなら帰ってくれ」
「あぁ、すみませんそういう意味ではなくてですねそのあのっ…」
相変わらずからかいがいのある男だ。
「もぅっマーリィもこまってるじゃない!なんでそんないじわるいうの?」
「悪い悪い、つい…な?」
「つい、ですむならけいさつはいらないよーっ!」
警察なんてこの程度の事じゃ動きゃしねーよ。
「いいんですよヴィヴィアン、これは一種のコミュニケーションみたいなものなのですから」
何がコミュニケーションだ、お前はマゾか。
「そう言えば、私はどうしてここにいるのでしょうか」
「わたしたちのけっこんしきのおはなしをするためだよ!」
始まった…
「…あ、ははは、そうでしたね…どうしたらいいでしょうか、ルシファー」
「いつもどおり適当にあしらっときゃいいだろうよ、あと俺にその話を振るな出禁にするぞこのやろう」
「おお、怖い怖い…どうしましょうヴィヴィアン、ルシファーが、俺の目が黒いうちは結婚なんて許さん!だって言ってますよ」
あぁうるせぇ、結婚するなら他所でやってくれ。
全くこの糞騒がしい時間に騒がしいことしやがって全く騒がしいったらありゃしない。
外が騒がしすぎるな、祭りでもやってんのか?
「なぁ…ところで……」
カシュンと何かが空を切りマーリィの喉元を掻っ切る。
一瞬だった、マーリィの首からは血が溢れ出る。
俺はその意味のわからないことに思考を巡らせる。
「何者だ!」
マーリィ!と叫び声をあげて血をどくどくと流し倒れている彼を揺さぶるヴィヴィアン。
「ヴィヴィアン!止血だ!できるな!!」
「…う、うん!できなくてもやる!」
「でぇてきやがぁれええええ!!」
刀を二刀抜き、雄叫びを上げる。
家から出るとそこはいつもの活気溢れる町は広がっておらず、辺り一面赤黒い鮮血に覆われていた。
「これもてめぇの仕業かぁッ!!そこにいんだろ!!わかってんだよクソ野郎ッ!!」
刀の一振りを向かいの建物の上へと投擲する。
何者かがそれを難なく素手で受け止め、鮮やかな鮮血を散らす。
「マーリィ…あぁマーリィ…私だけのマーリィ…誰かのものになんてさせないし私の方を向いてくれないなら無理やり向かせてあげるわ…マーリィ……」
「てめぇ…何言ってやがる…」
「感じるわ…マーリィの鼓動…ゾクゾクするの…マーリィは後少しで私のモノになるの……あは………あははははははひふふふふふふふ……だぁれ?貴方?」
気持ち悪い。
何だこいつ、人の話を全くと言っていいほど聞いてねぇ…
「てめぇが先に名乗りな!!」
「私?…モルゴース…モルゴース…なんだったかしらね……忘れちゃったわ…どうでもいいわぁ…さて…後何秒かしらね……」
なんの話をしているのだ?
訳が分らない、このモルゴースという女は一体何がしたいんだ?