魔剣の存在意義と旅の始まり。 そのじゅういち
どれほどの時間が経っただろうか、それすらも曖昧だった。
禁呪を使用した俺は魔力が枯渇し、代償として支払ったモノがモノだった為、体が動かない。
力も出ないし、動く気力もない。
かろうじて、首を動かす事が出来たので、周りを見渡せるだけ見渡す。
しかし視界には誰のものかもわからない血痕しかうつらない。
少しずつではあるが顔を中心にして徐々に動けるようになってきた、しかし、頭全体を動かせるようにするのだけでもかなり時間が掛かってしまった。
まてよ?
ヴィヴィアンはどこに行った?
「ヴィ……ヴィヴィ…アン……どこ…に…いる………」
視界には誰も映らない…
が、声が聞こえる。
「データロード、パスコード812560」
その声はヴィヴィアンのものだった。
「神は囁く、天に捧ぐは我が命、大地に捧ぐは我が身体、蒼海に捧ぐは我が精神、三つの対価と、見合うまでの、全てを滅ぼす為の力を与え給え…」
ヴィヴィアンはその後姿を消した…
ドンドンドン!
ドアが叩かれる。
「誰だよ!こんな夜中に!」
煩く響くドアに向かって、ゆっくりと歩く。
「私だ!隣に住んでる者だ!ニミュエが!ニミュエが見つかったんだ!」
「なんだと!?」
目が完全に覚めた俺はすぐさまに家の前に出る。
いや、正確には出ようとしたが、出る前にヴィヴィアンを抱えた隣の家のおばさんに押し入られた。
「さぁどいたどいた!男どもは外に出てな!」
そして叩き出された。
「のわっ、ここ俺の家!」
……鍵までかけられた。
「いや、悪いね、ウチのもんが…」
「いえ、大丈夫です…」
ここであることに気付く。
「そのボロボロな剣はなんですか?」
「腰の辺りにぐるぐる巻になって包帯が巻きついていたんだ、その中にこれがあった。流石に危ないからって私がこうして預かってはいるが…君に渡しておこう」
「ありがとうございます…」
やっぱりそうだ、と小さく呟く。
剣の柄にはマーリィと、大和語の文字でしっかりと彫られていた。
それからしばらく外でたっていると、カチャリ、と小さな音を立てて鍵が開いた。
これは静かに中に入れという意思表示なのか声どころか鍵の開く音以外の音すら聞こえなかった。
俺達はゆっくりと扉を開きな中に入る。
すると入ってすぐの場所に隣の家の奥さんが腰に手を当てて仁王立ちをしていた。