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血院  作者: 辰野ぱふ
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五日目の朝 (2)

 食事のあとは、ぼく、ラルさん、ラミルさん、キューイポさん、リューイポさんとで、血院の施設を見学した。一階建の石の建物が並んでいる。ある棟は、病室のようで、中でお年寄りがならんで横になっている。皆、やわらかい表情をしている。

 キューイポさん、リューイポさんが通るときは、神様が通るみたいに、手を合わせて目を閉じる。二人は年寄りに手を差し出し、そっと手首を握って、うんうんとうなずき、時には声をかける。

「ここを毎日回って、一人ずつの様子を見て歩くそうです」

 と、ラルさんがぼくに言った。

 病室のならびには共同の生活場所も並んでいる。若い人、父さんくらいの年齢の人もいるけれど、圧倒的に年寄りが多い。老人ホームのようなものなのかな、とぼくは思った。いくつかの同じような施設を見学してから、また外を少し歩いた。

 村の入り口にある石塔に似た形の建物があり、淡い色の小さい旗が万国旗のようにひもでつながっていて、風になびきパタパタと音を立てていた。その建物の中に入った。

 中は薄暗い。いろいろな神様が祀ってある。小さい窓が並んでいて、そこから明かりが入る。赤や緑の原色のひもに、金銀の入った色とりどりの細かい刺繍がされていて、それが梁から何本も下がっている。大きな火鉢のような所に、香を刺す。その煙をみな、身体にまとおうと手を出して、いろいろな所にこすりつける。それはぼくにも見覚えのあるお寺の光景に似ていた。ぼくもまねして、頭や身体に煙をこすりつけた。リューイポさんは静かにほほえんで見ていて、キューイポさんはといえば、やっぱりまた笑い転げていた。

地べたに這うようにして、祈っている人もいる。やはり年寄りが多い。ここでも、キューイポさん、リューイポさんは神様みたいに拝まれる。時には手を差し出し、二人はその手に触れて行く。

 建物と建物をつなぐ道は、人が歩きやすいように小さい石が組まれた道になっていて、温室のようなガラス張りの小屋の中を見ると、白や白に薄紫色のふちどりのある花が咲いていた。

そこから、村をずっと見渡せる丘に皆で上がると、リューイポさんが何か言った。そして、それを聞いて、またキューイポさんが笑っていた。

「あの、煙突の並んでいる所が、ガラス工場。そして、畑をはさんだ向かいのところでは、女の人が布を作っています。それはこの村の人たちの仕事です。作ったガラスや袋や洋服などは、ジャミハラヤの市場に持って行くそうです。時にはマンドゥリまで運ぶこともあるそうです」

 リューイポさんは、ラミルさんに話し、ラミルさんがラルさんに話す。それを見て、またキューイポさんが大笑いしている。

「今、ここには高い建物はありませんが、一つ前の血院は、三階建てのもっと立派な建物だったそうです。それで、その頃のことは何も知らないが、と言って、またキューイポは笑っています」

 なんでもかんでも、話すたび、聞くたびに笑うのだ。最初は奇妙で、あきれてしまっていたが、だんだん慣れてくると、ぼくもなんだかおかしくなってくる。

 そこでひととおり村の説明を受けると、丘を降り、さっきの石塔の並びにある血帳の建物へ入った。

 壁の一面が本棚になっていて、一抱えもある厚い本がいくつも並んでいる。まあ、図書館の感じに似ているかな。

 部屋の隅、窓の近くに大きなテーブルがあり、そこをぐるりと囲んで皆で座った。しんと足から冷えてくる。そんな気持ちがわかったのか、リューイポさんが暖炉に火をつけた。そして、また話し始めた。

「一つ前の血院では、血帳の部屋も三階建てで、ここよりも広く、すべての壁が棚になっていて、血帳が並んでいたそうです。その奥には古い血帳も残されて、積まれていたそうです。で、やはり、キューイポは、何も知らないと…」

「そこが火事になったのですね?」

「そうです。一階のサリのいた所から煙が出ました。その頃は木の建物だったそうです。サリは火だるまになって、一階の窓から飛び出して来たのです。すぐに土にゴロゴロと身体を横たえました。そこは水がめの置き場所に近かったので、周りの者が次々に水をかけました。大変なやけどになりましたが、サリは生きていたし、子ども…。つまり、今ここにいるリューイポさんのお父さんのズーライは無事に生まれました。ズーライに昨日会ったのは覚えていますか? 年寄りの血師です。

サリが飛び出したあとに、あっと言う間に火が燃え広がったということです。血帳は全部燃えてしまったということです。それは絵本で読んだよね?」

「それで、そのあと、どうなったのですか? 火事はどうして起こったのですか」

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