トゥミハラヤ (2)
「客人はいつごろ着くんだい?」というキューイポの問いに
「そうだなあ。今日の夜になるだろう。ずいぶんとゆっくりしているからな」
と、リューイポが答え、ここでまたひとしきりキューイポが笑った。
「今度はなにがおかしい?」
「だって、まだまだ着かないのに、今から騒いでいるのだもの。きっと夜にはくたくたになってしまうよ」
「そんなことはない。子どもたちは元気のカタマリだ。客人を見ればもっと元気になるさ」
笑い続けるキューイポの背中を押し、やれやれといった表情でリューイポはキューイポの歩く先に立ち、一歩ずつ踏みしめるように二人で丘を下り、食堂へと向かった。
食堂の中には暖かい空気がこもっていた。ここの窓にはガラスが入っている。板ガラスは小さめだから、それに合わせて窓が作られている。正方形の小さい窓がたくさん並んでいる。外の風景はゆがんで見えるが、光が入ってきて明るい。
ガラスはこの村で作っている。この土地の砂にはガラスになる物質が多く含まれている。今ではそれはこの地の特産品となり、ガラスはジャミハラヤに運ばれ、市場で商売もしている。ジャミハラヤからは壊れた板ガラスや、飲み物が入っていたビンなどを集めてきて、またそれがガラスの材料にもなる。
それは三代目のルイポが伝えた技だった。ルイポは各地を回り、様々な知識を豊富に持っていた。このトゥミハラヤにたどり着き血院を再建する時に、建物の技術から何から、すべてのことを三代目ルイポが指導したのだ。
リューイポもキューイポも三代目ルイポの時代を知らない。ルイポは山奥にあった血院を追われて山間の村や部落を旅するうちに、別の山奥に自分が拾われた村を見つけたのだ。それがこのトゥミハラヤだった。その時にはこの村に名前はなかった。あったのかもしれないが、語り継ぐ者はなく、書き記されたものもなかった。もう形のなくなった小屋と、人が住んでいた跡があっただけだ。ハラヤの静かな土地とは、ルイポが名づけたと言われている。
ルイポが赤んぼうだったころ、トゥミハラヤは盗賊の一団におそわれて、滅びたと考えられている。多くの人は殺され、いくつかの家には火を放たれ、あらゆる物は盗りつくされた。その村のたった一人の生き残りがルイポだったそうだ。
「やあ、いいにおいがするなあ」
キューイポが鼻をくんくんさせた。まるで、犬みたいなやつだな、やっぱりな。とリューイポは思ったけれど、そのことは言わず
「いつも同じにおいだよ。おかゆだ」
と言った。
それを聞いて、またキューイポはひとしきり笑った。




