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血院  作者: 辰野ぱふ
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タライとルイポ (4)

 その年の終わりの頃。サリは血帳の記入のために血帳の部屋いた。ひときわ寒い日だった。サリのいる部屋の窓から煙がにじり出ているのを、シャーイパの名前をついだ、十歳くらいの少年が見つけた。

この少年はタライに血帳をしまうように言われて、この部屋に来る途中だった。

その日、サリはタライの血帳師となっていたのに、なぜ、一人でこんな部屋にいたのだろう。

タライは診断の部屋にいて、診断中だったのに、なぜかその日は血帳師がいなかった。

 タライの言いつけで血帳をかかえていた少年は、煙の中に人の手を見つけた。燃えているのは、サリその人だった。言葉にならない声を上げて、サリは窓から外にころがり出た。

サリはすぐに土に身体を横たえ、そのままころがって火を消し、そばにいた少年たちが走り寄って、くみおいてある水をかけた。

おしりから、右わきの下まで、ひどいやけどになったが、命はとりとめた。だが、血帳の部屋の中は見る間に火に包まれた。血帳が日に当たらないように、窓全体を覆うように布のカーテンがかけてあり、棚は木製だった。血帳の表紙の皮は油で磨かれることがあり、それも火の回りを早くした。

火事を見つけ皆に告げたシャイーパはおそれおののき、何かをわめき、周りの人が止めるのも聞かずに火に飛び込んで行った。皆はそれを呆然と見つめた。

物が燃える臭いと黒煙が血帳の部屋を包み、ほかの建物からも人が集まって来た。そして皆は手に手に水をわたして、火に向かって水を投げた。でも火の勢いは衰えず、血帳の部屋はくずれ落ち、血帳はほとんどが燃えてしまった。

その部屋から火がついて出てきたのはサリだけだ。だからサリが火事を起こしたということになり、サリは血院を追われることになった。

「いつも何か燃える夢を見て、うなされていた。その夢にとらわれて、本当に火をつけたのだ」とタライが主張したのだ。

 夢はあいまいだからこそ、どんな風にも扱うことができる。これこそ、夢の扱いをねじ曲げたひきょうな言い分だった。だがルイポは何も言わなかった。ただ、サリと一緒に血院を離れるということだけを告げた。ただただ悲しかった。もしかしたらシャイーパは何かを知っていたのではないだろうか。だが、それを確かめることもできない。

あまりにもひどい仕打ちだった。血院の皆のことを思い、血院を離れることを先延ばしにしていたのに、それが仇となってしまったのだ。だがこれで、サリと一緒に血院を離れることをだれもが黙って認めるだろう。

 その後、血院はタライがまとめることになった。だが、血院は呪われた場所となった。炎は血院にまとわりつき、どこかに隠れていたのだ。ルイポとサリが血院を去った後、炎はまたどこからともなく顔を出し、血院を飲み込んでしまった。火は怒り狂い、三日三晩消えず血院は燃え尽き、跡形も無くなってしまった。

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