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眠り姫異世界へ往く!  作者: MONOクロ
日常になるまで
5/14

初めての友達、そして初めての…?

今回長いです。

そして初戦闘。あと初(そもそもミント自体が)癒し。

いやぁ、戦闘書くの楽しい。

3rdクラスに続き、ミントがついたのは2ndクラス。


授業内容は、ルーン魔方陣やルーン札の扱い方の専門内容だった。


「…面白そう。」そう言って彼女はクラスの中、ボードに張られたルーン紙を見た。

普通に見る限り、絵や文様の組み合わせだとルーン魔法系は言われているので、意外と楽しいとは授業を受けている生徒の言葉である。


燃え盛る火炎の紋様が書かれたルーン紙の上には、蛍光色の何かで書かれた『火』の文字。

ルーンの意味、つまり属性を表しているのだろう。

ほかにも、水のルーンや雷のルーン、闇や光を表したルーンもある。


教師はそれらを指差しながら話し出す。

「ルーンには相性があり―――例えば火と水は相性が悪い。一番相性が悪いのは光と闇。他にも相性が悪いのは――」

等、更にボードに杖で先ほどの線、魔法の線を引いてゆく。


「これらを組み合わせるとき、簡単な物なら単品でも陣や札は作成できますが、複雑な物はやはりたくさんのルーンが必要です。」

「例えば、ファイア系統の魔法でも簡単な部類の『ファイアアロー』なら、火のルーンが一つあれば作成できます。」

「でも、ファイア系上位の、『イグニスフレイム』になると、火のルーン以外にも、補助の治癒のルーンや、光のルーンが必要になります。」

「また、先ほど一番相性の悪いルーンは光と闇と言いましたが、間に火のルーンを挟めば、『ダークミラージュ』の魔法が完成しますから、必ずしも組み合わせることが出来ないとは限りませんよ。」

「そういった複合ルーン魔法において必要なのは、主体にするメインルーンと補助のサブルーンです。」

「『ダークミラージュ』の例だと、メインルーンは闇と光で、サブルーンは火になります。」

と、説明を重ねて話す。

…クラス内の雰囲気が変わってきたことに教師は気付かない。


「あ、まだこの学年ではやらないけれど、ルーン自体の自作も高学年ではやりますよ~」

思い出したように話すが、既にクラス内の空気は重い。



簡単にこれらを説明すると、つまり


・ルーンにはそれぞれ意味があり、基本的には魔法の種類を表す。

 補足1→属性ではなく『魔法の種類』。属性に縛られないのがルーンの優秀なところ。

 補足2→上記の例だと、【ルーン:火】は【火炎魔法のルーン】で、【ルーン:癒し】は【回復魔法のルーン】となる。


・ルーンには良相性と悪相性のルーンがそれぞれ存在する。

 補足1→相性には弱と強があり、上手く組み合わせると中和も可能。

 補足2→良相性と悪相性のルーンは、一つだけとは限らない。


・複数のルーンを効率よく組み合わせると、強力なものが出来上がる。

 補足1→この際、主体のルーンと補助のルーンがそれぞれ一つ以上必要となる。

 

・ルーンの自作も可能。


4番目の細かい説明は省く。

市販のルーンが【魔法の種類】と組み合わせが行いやすいようになっているが、自作のルーンは自身のカスタマイズによっては、それ一つで上位魔法が発動できたりすることもできる。

当然、組み合わせは難しい、といったところ。


ここで話をミントに戻すと、なんと彼女は説明を全て聞き、記憶していた。

魔法の名称は分からなかったが、教師の言葉を聴いてある程度理解していたようだ。


「・・・面白かった。次、行こうかな。」再び彼女は歩き出した。

彼女はまだ知らない。

後にとある人間が残した彼女に関する伝記には『万年に一度と無い、稀代のルーン使いクルス=ミント』と冒頭に来ることを。



1stクラス。

「誰も…居ない?」教室には誰もいない。

ちょうど、戦闘訓練の為に、各クラスのある学園中央棟から少し離れた戦闘・訓練用闘技場に移動していたのだが、彼女はその場所はおろか、その存在すら知らない。


よって。

「ま…いっか。」彼女は移動を止め、飛び降り防止用の柵が付いた窓から屋外を見下ろした。


余談ではあるが、窓に付いた防止用の柵は魔法により制御されており、有事の際には完全に外からシャットアウトし、かつ防衛用の魔法が自動起動するというフェアル王国の最先端技術の一片が見えている。

このような自衛手段が学園には多数設置されており、食料等もとても豊富に備蓄されているので、戦争においては『学園が落ちる時は王国が落ちるときである。』とまで言われている。

閑話休題。


ミントが窓から外を見下ろした理由は、たった一つ。

『寝る場所』の確保である。

彼女は寝る時間は選ばないが、寝る場所にはある程度こだわりがあるのだ。

無論、こだわりがあっても関係無い状況も存在するのだが。


外の景色は、まるで地球の国立公園のように整備され、木や草花の位置、オブジェクトの場所、道路の形まで考えて作られたであろう風景が広がっていた。

彼女が入ってきた南の正門からまっすぐに引かれた石畳があり、ちょうど彼女が倒れた位置の近くには、噴水を真ん中に置いた円形の道があり、さらにそこから4方へ分かれている。


「…あっちが良さそう。」そう言って彼女は寝る場所を決め、同時に歩き出す。

彼女が決めた場所は、中央にある噴水を東に進んだ先にある、木やそのツタがカーテン状に道の脇にある場所。

そこは学生たちにも名所として知られる場所で、その見た目から『フェアリーロード』と呼ばれるほどの人気がある。

そんな人気の場所を一発で選んだ彼女の目に狂いは無かったようだ。


ちなみにフェアリーロードの先には東門があり、その向こうには生徒無断立ち入り禁止の森がある。

立ち入り禁止の理由は、危険度の高いモンスターの出没が多いからである。

専門の学者の調査によると、中の生態系に異常があり、本来の食物連鎖ではそれなりに上位に位置するはずのリザード系モンスターが、この森では下位に位置している等の報告がある。


だが、基本的には門は閉まっており、更に監視の守衛がいて、それでも尚一定のラインを超えると自動で警報が鳴る魔法がある。

それでも時々門を越えてきて、毎年1、2名の重傷者を出している。




やがてミントはそんな危険がある東門に近いフェアリーロードに到着する。

流石に道の真ん中で寝るのはキツイらしく(本人曰く、硬い地面は嫌。とのこと)、脇のカーテン状になったツタにもたれるようにしてゆっくりと睡眠モードへ入っていった。

その寝顔は、相変わらずの『眠り姫』だった。勿論、白雪姫のようにキスで目覚めたりはしないが。

他の学生たちも、その寝顔を見て起こすことは誰にも出来なかった。


そして――






そして、ミントはゆっくりと目を開けた。


気付けば時刻は夕方で、いつか見たような夕日が彼女の白い肌をオレンジ色に照らしていた。


少々寝すぎたかな、と思いつつも彼女は立ちあが―――れなかった。

気付くと彼女の腕に、淡い紫色の生物が乗っかかっていた。


子犬くらいのサイズのそれを見る彼女。


ピクッ


視線を感じたのか分からないが、その生物はゆっくりと動き――顔をこっちに向けた。


そして、クォン、と一声鳴いた。


「…」


「…」そして流れる沈黙。




沈黙を破ったのは、ミントの方だった。


「…可愛い」そういってもう一方の片腕を近づける。


特に生き物からの抵抗も無く、背中を撫でる彼女。


この行動に、少し警戒をしていた生き物のほうも、更に自ら体を寄せてくる。


「狐?…尻尾。」


そう言いながら彼女は尻尾も触る。

彼女が言ったとおり、この生き物は地球世界での狐と似たような形態である。


そしてミントはそのモフモフ感を更に味わうべく、撫でる手のスピードを上げた。




それから数分後


未だ生き物を撫でていたミントは、暗くなった空をみて、ゆっくり起き上がった。

腕にもたれていた生き物は、そのまま彼女が抱き上げている。


彼女の顔は珍しく感情を露わにしていた。もちろん喜び、その他快楽等の感情である。


「あ…名前。…ええと。」この子の特徴は?


彼(彼女?)の特徴は、夜のような淡い紫色である。


反射的に名前が一つ浮かぶ。


真夜(マヤ)。…いい、かな?」


くぉーんと喜びの声が聞こえてくる。


それに安堵し、喜びの声に答えるべく更に撫でようとしたその瞬間。



ドスン!ドスン!という大きな音がした。



最初に気付いたのは真夜だった。

その生き物の狐のような耳がピンと立ち、そして東の方角に顔を向けた。


合わせるようにミントもそちらを向く。


そこには、今にもこちらに襲い掛かるべく、スピードを上げて突進をしてくるトカゲのような生物がいた。



ただし、そのサイズは私たちが一般的に見るトカゲの数十倍の大きさである。


名前を『ラントランドラゴン』と言い、陸上を走るドラゴン、という特徴から取られた名前である。


種別はもちろんドラゴンで、この世界の住民が恐れるモンスターの種類の一つである。


ラントランドラゴンはトップスピードでこちらへ突進してくる。


距離は大体五百メートル以上。だがこの程度の距離ならば数十秒で来るだろう。



ミントは先ほどのやり取りでふにゃけていた顔を直し、クルリと反転し、真夜を抱えたまま慌てて走り出した。


そのスピードはラントランドラゴンより遥かに遅く、こちらに来るのがほんの少し時間が遅れる程度だった。


少し走って冷静になったミントは、それでは逃げ切れない、と考える。

それならば、なんとかして時間を稼ぎ、学園からの応援を待ったほうがいいのでは無いか、そう考えた。


くぅん?と真夜がこちらを見上げてくる。


「大丈夫。なんとか、するから。」


その言葉に迷いは無く、彼女は作戦を立て始めた。


相手は巨大生物の一種か何か(ミントの考え)で、恐らく皮膚はそれなりに頑丈だろう。


だが、大抵の大型生物は、小回りが利かず、挙動が遅い。


恐らくアイツは自身の体重を利用して高速で移動しているのだろう、と推測した。


その考えは正解で、ラントランドラゴンは正面突進にのみ強いが、側面が弱い、という弱点があった。

これを狩るハンターの一般的な方法としては、正面突進を落とし穴などの罠で受け止め、側面から心臓へ一突きするのが効果的だと出ている。


と言っても今の彼女には武器が無く、倒すことは出来ない。

そうなると、最初の突進を回避し、攻撃を避け続けなくてはいけない。

最初の突進は何とか回避できそうだが、その後何処に動くかを考える。

考えながら、足を止めてこちらへの距離を更に縮めるソイツを睨み付ける。


そして、その視線が一点へ注目する。



「…あそこなら、なんとかなるかも。」


ミントはその辺に落ちていた手のひら大の少し尖った石を拾う。

そして真夜を下に降ろす



「真夜、逃げて。出来る限り遠くに…」

だが、真夜はそれを拒否して彼女の肩に飛び乗る。


くぉぉ!と一声鳴いて自らの意思を示す。


「……ありがとう、真夜。」

ほんの数分前に出会った二人だが、既に心は通じていた。


「…行くよ!」


その距離が100メートルを切ったとき、彼女は走りだした。


ただし、その方向はラントランドラゴンに向いていた。


グォォォォォォッ!!!



その咆哮が耳に響き、少しバランスを崩しそうになる。


くぉん!


だがその瞬間、風が吹いて彼女を支えた。

驚いて彼女は肩に乗った真夜を見た。


真夜から緑のオーラが立ち上り、ミントの体を支えていた。


(コレは…魔法?)


ありがとう、とお礼をしようとして、声が出ないことに気付く。


普段運動をまともにしない彼女の体は既に悲鳴を上げ始めている。

これは明日から運動しないとね、と考えるわけだが、実践されるかは分からない。

それでもそれなりのスピードが出ている理由は、真夜の補助魔法が掛かっているからだった。


今も真夜はミントに対し、『エアブースター』を掛け続けている。


何故真夜が魔法を使えるのかは知らないが、真夜にとっても魔法は辛いようで、その息は少しずつ荒くなっていく。


そしてラントランドラゴンとの距離が10メートルを切った時、ミントは急停止して方向を右に転換し、フェアリーロードの脇に生えた樹木に向けて駆け出した。


直後、先ほど彼女がいた空間にラントランドラゴンの大牙が空を切った。

もちろん不命中。そしてラントランドラゴンは方向を変える為に急停止し、身体をミントへ向けて再び大地を抉りながら駆け出した。



ミントはラントランドラゴンと接触する直前に樹木の枝上に飛び上がる。


『エアブースター』の効果でジャンプ力が大幅に上がっていることは言うまでも無い。




ドゴォォンと凄まじい音がして樹が揺れる。


だが、樹は折れることなく衝撃に耐え切り、ラントランドラゴンは再び止まる

そしてミントは枝上を移動して、ラントランドラゴンの頭上へと飛び込むようにして降りる。


ラントランドラゴンの頭には長い角が付いており、同種との戦闘にはそれを使う。

だが、ミントにとっては唯のぶら下がるためのバーだった。


その角に片手でぶら下がったミント、真夜は角の上に乗り移りながら魔法を掛け続ける。

そしてミントは、手に持っていた石を、容赦無くラントランドラゴンの右の眼球目掛けて突き出した。


瞬間、ラントランドラゴンは悲鳴すら上げずに痛みに頭を思い切り振り出す。




ミントはそれに耐え切れずに角から手を離し、地面に着地する。

その直後、角の上から飛び降りてきた真夜をキャッチする。


「…よし、逃げよ!」


真夜は再びミントの肩の上へ。もはやすっかり彼女のパートナーである。




そして走ること一分。


再びラントランドラゴンがこちらに突進してくる。

が、片目を失った影響でスピードは遅く、しかも自然に左に曲がってゆく。

既にバランスを失っている影響だろう。


手ごろな石を再度拾い上げたミントは、今度は助走をつけて一気にラントランドラゴンへと大ジャンプする。

そしてその勢いのまま、一気に石を左目に突き刺した。


そのまま顔面に着地し、三角跳びの要領で跳ね上がり、クルリと空中で回転して地面へ着地。


真夜は肩にぶら下がりながらも上手くバランスを取る。




その直後、ラントランドラゴンを睨みつけていた彼女の後ろから声が掛かる。

「大丈夫かキミ!あとは私たちに任せて逃げて!」

後ろを振り向くと、重武装でこちらに走ってくる学生たち。


それぞれ青の長髪の女学生、緑短髪の女学生、赤髪の男子学生、白髪の教師だった。

学生のほうは共通で赤のマントを着けている。


それを聞いてミントは安心したように座り込みそうになって、慌てて立て直す。

そして彼らが出てきた方向―――学園寮へ走り出した。


その後、彼女は無事に寮へ辿り着き、部屋で再び真夜をモフモフし、そのまま眠りに付いた。

何故に彼女はここまで冷静なのか。

生涯、本人以外誰にも理解することが無い疑問は、誰にでもある。



       ★



ミントが居なくなった直後のフェアリーロード付近。


「立ち昇れ!地獄の炎!『イグニスフレイム』!」緑髪の女学生が叫ぶ


その瞬間、巨大な炎柱が立ち昇り、ラントランドラゴンを包み込む。


ぐぉぉぉぉっ!!!と大きく叫び声を上げるラントランドラゴン。


「かの者を縛れ、『ダークネスロープ』」青髪の女学生が呟き、手を突き出す。


その手から黒い縄が伸び、ラントランドラゴンを押さえつける。


直後、赤髪の男子学生が飛び出し、手に持っていた槍をラントランドラゴンの焦げた鱗と皮膚越しの心臓に向けて突き出す。


ボロボロになった鱗と皮膚を超えて突き刺さった槍は、狙い違わずラントランドラゴンの心臓に突き立った。


直後、最後の一声を上げて倒れこむラントランドラゴン。


「うっし!討伐かんりょー!」赤髪が声を上げる


「…こいつ、目が潰れてる」青髪が呟き、

「え?だから動きが異様に悪かったのかぁ…」と緑髪が呟く。


それを聞いた白髪の老人教師がラントランドラゴンに近寄り、その様子を見る。


「ふむ…人為的なものだな。恐らく先ほどの学生がやったのだろう。…後で学園長に報告しなくてはのぉ。」


そう呟いた教師は、報告書書くの結構面倒なんじゃよ…と言いながら、学生たちを連れて報告へと向かった。


意外と長くなってしまった。

何故か改行数が増加しているので、本来の仕様に(多分)戻しておきます。

ミントの身体能力は魔法なしでも多少上昇しているらしいです。

上昇にはなにやら条件があるようですが、今一確定していません。


最初の方に出たルーン魔法は、2章以降割と良く出るので、ある程度法則を覚えておくと理解しやすいです。

と言ってもこの小説での解説は、大抵は物語の世界背景を補助して読者に想像しやすくするための補足なのですけどね。

専門用語が多くなると、想像し辛くなるのを防ぐために解説を大めにしています。


こちらからは、なろう小説家の方向けの話なのですが。

自分は、小説の書き溜めにyahooメールを利用しています。

理由としては、yahooメールは一定時間ごとに内容が一定保存される、という機能が付いているため、間違えて消す、と言うことがあっても復元がたやすいのが理由です。

メモ帳やらワードやらは保存忘れがあったり、保存したデータを間違えて消しちゃったりするので、確実に保存できるyahooメールにしています。

ソフトインストール等が無く、無料なので、是非皆様も利用してはいかがでしょうか。

と、ちょっと便利なモノ紹介。

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