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第5話

【カーミラ視点】


東雲明日香がC国の大統領に就任して半年。世界の魔力濃度が増大し、それに順応する様に神獣人に変化する者も現れた。

例えば鳳凰人であるあたし、カーミラ・アインシュテルンとかさ。


「鬼子だ!鬼子鈴奈が来たぞ!」


そして新しい種族である神獣人を疎むのは特に情報の少ない田舎でもよくある話。


「ヒトに石をぶつけるなよ」


あたしは竜人の子供に石をぶつけようとした子供の手首をつかんだ。


「何だよお前!邪魔す……」


殺気をこめて睨みつけると黙ってくれたが男の子の仲間らしき連中は石を持ってあたしと鈴奈と呼ばれた竜人の子を包囲した。

全員一様に彼女をののしり今すぐにでも一斉に石を投げようとしている。


「逃げてください。あたしが耐えれば済む話なんですから」


「何だよそれ!それじゃあ俺らが悪いみたいじゃん!鬼子になったお前が悪いんだろ!」


「そうよ!魔王の瘴気を浴びて想像上の動物になるなんて心が腐ってるからに違いないわ!」


男の子の一人が投げた石を手で受け止めるとあたしはそれに神聖波動を加えて粉々にした。

旅の途中で通りすがっただけだからあたしがこの子を助ける義理はない。でもあたしはこの子を助けたい。

そろそろ一人旅をあきてきたことだし神獣人になった人たちを集めて大グ○ン団みたいな集団を作るのも面白いかもしれないねえ。


「この鳥みたいな女、鳳凰人だ。こいつも鬼子だよ。やっちゃえ!」


女の子の指示で一斉に石が投げられるのを合図に鈴奈を抱いて空を飛んだ。


「何だよ!空を飛ぶなんて卑怯だぞ!」


「抵抗しない女の子を包囲して寄ってたかって石を投げる連中が言える言葉かい?あんたたちにはお仕置きが必要だねえ」


神聖波動を使って炎の風を起こし、できるだけ広範囲に放つ。こうすることで個々のダメージを薄められるはずだ。

実際彼らは気絶しているのみ。


「あなたがこの子を貰い受けると?」


あたしは鈴奈を世話している寺の住職に彼女を譲ってほしいと告げると彼はひげをいじり始めた。

鈴奈の親は生まれてすぐ彼女をこの寺に捨てられたそうだ。なので鈴奈に姓はない。


「同情心で手を差し伸べるのはやめなされ。確かにあなたがここを去れば鈴奈はさらにひどい責め苦を受けることになろう。じゃが一人身で放浪するあなたは自分の身だけでいっぱいいっぱいなのではないかな?」


「そうかも知れないねえ。だがあなたはこの子を育てていることで村の人からのお布施も減っているのでは?」


「ほう。何故そう思う」


「あたしがそうだったからさ」


あたしも神獣人と化すとすぐ寺に捨てられた。その寺はあたしがいるということで参拝客はあからさまに減り、他に育てられているこの目もありあたしは逃げるようにして家出し、現在に至る。


「お察しの通りですがあなたは鈴奈をどうなさるおつもりで?」


「一緒に生きていく」


この子は見殺しにしたくない。そんな感情が直観としてあたしの中にあった。


「拙僧は問題ありません。下手にこの子をかばいだてして寺を焼かれる事態になれば小坊主も他に育てている子供たちも路頭に迷わすことになります。だがあなたは鈴奈のような者達を一々救うつもりかな?」


「そのつもりさ。あたしは神獣人になった者たちを集めて大アインシュテルン団(仮)を作るんだ」


それを聞くと住職は大笑いし、鈴奈に向き合った。


「鈴奈よ。お前はこの者をどう見る」


「カーミラさん。あたしはあなたの役には立てません。足手まといにしかならないのに連れていくと言うんですか?」


「あたしがどうしたいかじゃなくあんたがどうしたいか。それが一番大事なんじゃないかい?」


自分からこの村を抜け出したいのなら役に立てるよう頑張ればいい。だが現状を変える気がないのなら連れて行っても足手まといにしかならないだろう。


「私は鬼子だから……殺されても仕方ないと思ってきました。でもあなたみたいに自力で生きてる方もいるんですね」


生きるために必死にあがいていたら何とかなっただけだけどね。


「……決めました。カーミラさん、私も連れて行って下さい」


「ああ」


初めて見た鈴奈の笑顔はとても素敵だった。


【カーミラ視点 了】


「なるほど考えたな」


俺は宝石を核にして暴れる化け物を神聖波動で倒しながらそう独りごちた。


「ええ。これはどうしようもないわ」


「何をよ?」


同じく神聖波動で戦う御厨は気づいたようだが恵美は神聖波動とは別の波動……爆裂波動とでも言うべきもので戦いながらそう聞いてきた。


「魔王は今C国で大統領をしている。だがその国をいたずらに乱すことなく真面目に統治しているのならば討伐する大義名分は生まれない」


「魔王であることを維持するために彼女は真面目に国を統治している。よその国に侵略することなく健全に」


ようやく気付いたのだろう。恵美は息を飲んだ。


「事態を打開できないってこと」


「やるとしたらC国にテロをするしかない。当面は自己防衛になるだろうな」


宝石そのものに神聖波動を放つことで浄化し瘴気に触れないように当分金庫に封印することにした。

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