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第4話

【明日香視点】


正直言って予想外だった。魔王を倒せばそこでゲームオーバーと言うのはあくまでゲームの話だったらしい。魔王の肉体が灰になったことで膨大な魔力は拡散し、魔王の核と言えるものが私の魂の中に埋め込まれた。エネルギー保存の法則は魔王の魔力にも適応するらしく私は期せずして魔王の力を手にしていたのだ。


ちなみに私は今C国の刑務所の中に収容されている。あの後私は身柄をC国政府に要求されたのだ。そして私はそれを受け入れた。けじめの問題もある。それに魔王の力を得た私が日本に戻るのはさすがにまずい。

実際問題、C国各地で獣性に理性を呑まれた者達が大量に暴動を起こしているらしいと聞き私の不安は的中した。魔王となった私に呼応しているんだろう。


「お初にお目にかかります。魔王」


そう言って現れ、頭を下げたのは虎人の女性。

ステファニー・ハセガワと名乗る彼女は私に言う。世界を征服してみないかと。

下らない。こんなしょうもない世界を征服して何の益があるのか。


「10歳以下の男の子をはべらしたいとでもいうつもり?」


「そんな趣味はありません。むしろ子供は嫌いな性質たちです。私はただこの退屈な日常を破壊したいんですよ」


そう言ってステファニーはにやりと笑みを浮かべた。


【明日香視点 了】


家に帰った俺たちはリビングでニュースを見ていた。C国の政治犯収容所が消滅したと言うものだ。

なんでも物理的にそこが更地になったのだとか。確かに映像に映っている場所は爆弾でも落ちたのかと言うぐらいがれきの山が広がっている。

生存者はなくただ一人行方不明になっているのが東雲明日香准教授だそうだ。


「東雲明日香。魔王を消滅させた女か」


緊急ニュースが入り、その東雲明日香がC国共産党本部を単身で襲撃、占領したらしい。

全人代の最中に乗り込み、9割近い人間や獣人を抹殺。支配権を獲得したそうだ。


「女って何を考えているのだかさっぱり分からない」


「ちょっと兄貴!?一括りにしないでよ!!」


一緒にニュースを見てた恵美に突っ込まれてしまった。

まあ確かに失言だったのかもしれないな。


「私が新しくC国の大統領になった東雲明日香です」


急きょ会見が開かれ、彼女は堂々とそう宣言した。C国のトップって国家元首じゃなかったか。

C国には国家主席と首相がいたがその二つを廃止し彼女が初代大統領になったそうだ。

でも何故そんなことを。


自らを魔王と名乗る彼女が口にしたC国の改革案は以下の通り。


・魔王の下の平等

・三権分立

・社会主義の放棄

・自治区の独立の容認

・普通選挙法の施行

・全人代の廃止とそれに伴う国会の設立


……まあまあ普通だな。

銀髪で右目は紫。左目は金色と言う以外はただの人間と変わらない女性は画面の中で笑みを浮かべていた。


【明日香視点】


「っ魔王!?何ですかあの会見は!!普通にこの国の構造改革してどうするんですか!!」


「この国は構造改革が先でしょう。下手に世界征服宣言なんかしたら核保有国が何をするか分からないわ。国連の目もあることだし」


「いやいや!そりゃあそうですけど。もっとこう魔王みたいに活動しませんか?姿もそんなミステリアスな人間っぽくじゃなくてこうベルゼブブとかバフォメットとかあるでしょう!」


「美意識って大事よね」


「あなたと言うひドヴぁ!?」


イラッとしたので魔力でステファニーを吹き飛ばした。問題ない、彼女には不死の呪いがかかっている。

政治犯収容所に捕まっていた人たちにも一時的に不死の呪いをかけて全員逃がし彼らの死体を偽造して全員死亡したと見せかけたことを無駄な労力なんて言っていたけど。ステファニー、私が彼らを助けたのはただの自己満足。自分のために動くことの何が悪だと言うのか。

彼女はぺらっぺらになりながら床に落ち、空気入れでしゅこんしゅこんと空気を入れてやると服がぼろぼろになっただけで元に戻った。


「何しやがりますか魔王!?」


「不死身にしたんだからいいじゃない」


思わずため息とともに呆れた声が出るというもの。


「不死身じゃなくてギャグキャラになる呪いでしょう!?」


まあ厳密に言えばそうね。でも最強だと思うわよ、ギャグキャラって。


「ふざけてないで真面目に世界を恐怖に陥れてください」


顔を10倍くらい大きくしたステファニーににらまれた。マンガやアニメで見ると普通だけど現実でやられるとキモいわ。


【明日香視点 了】

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