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第3話

K国某市で魔王は町を破壊していた。ビルは倒壊し、魔王が口から放つ蒼い波動は次々に街であった名残を消し払っていく。

怪獣映画をほうふつとさせる光景に半ば呆然としていると御厨はとんでもないことを言い出した。


「魔王はK国人の反日教育による憎悪が覚醒の鍵になってますから日本に向かっているんでしょう」


それやばくね?どうするんだよ。


「だからC半島で決着をつけなければいけないの。アイン・ソフ・オウルの使い方は分かるよね?」


「ああ」


妹に言われるまでもない。実際ここまで飛んできたのはその力によるものだ。

恵美は適当なビルの上に立つと何やら呟きだした。


「天上に王冠、天下に王国を配し、知恵と理解を手に、慈悲と峻厳を両立し、美しき勝利と栄光を我が手に、基礎たる知識を暁に変えんことを。願わくば悪しきものを切り払わんがため収束して刃と化せ。ダイアモンドメルトブレード!!」


恵美の目の前にセフィロトの樹が展開され、虹色の閃光が恵美の手の中で巨大な剣のような形状を保つ。


「まれまれ!アイン・ソフ・オウルで武器をイメージして。剣でも槍でもいい。掌に意識を集中するの……神聖波動剣!!」


そう言うと御厨は掌を合わせ、金色の波動を巨大な太刀の形状に変えると恵美と頷き合い、魔王の下に飛び立った。

誰がまれまれだ。て言うか俺一発勝負かよ。こういうのって時間をかけてじっくりと……やってる暇はないよなあ。

剣では切り落とすだけだ。でもあれは破壊しなければいけないんじゃないか。


だったら俺がイメージする武器はハンマーだ。

イメージするのはハンマーで敵と戦うロボットアニメの主人公。無駄に叫んだら意識が散漫してしまう。あくまで重要なのはイメージすること。


「ハンマー、アイン!ソフ!オウル!!」


俺の掌には収束したアイン・ソフ・オウルが巨大なハンマーの形状になって掌に収まっている。成功だ。ならばこれを魔王に叩きつけるのみ。

俺はよしっ。と気合を入れると2人を追った。


【???視点】


私は今C国のとある洞窟にきている。とは言え観光地ではないためライトもなく、私はランタンを手に深部へ向かっていた。

トレジャーハントと言う言い方が一番合っているだろうか。魔王が復活し混乱状態であるからこそ入り込めたと言うこともあるんだがじゃなければ私はC国政府に射殺されることだろう。

何しろ私が探すお宝はチート級のそんなものは創作でしかありえないと言う究極の宝貝パオペエなんだから。


壁画の暗号を解いてさらに深部へ行くと黄金の間と呼ぶにふさわしい四方八方が金でできた場所がそこにあった。まばゆいばかりの財宝と言えるものがたくさん無造作に鎮座しているがそんなものは私の探しているものの前では大して価値はない。私は赤茶けた太上老君の像の前にかしずく。


「乾坤を開き、陰陽を分かち、四象を治める大君よ。我に汝の力を授け給え」


すると像がゴゴゴゴゴ……と音を立てて動き、中から一本の巻物が出てきた。

ようやく手に入れたわ、大極図を。やはり封神演義は史実だった。


「そこまでだ!侵入者、その巻物をこちらによこしてもらおうか」


私はそれを手に取ってから声のした方を見るとそこにいたのは人民軍十数名。

先頭に立つリーダーはこちらを注視しているが彼らの中には黄金の間に目を奪われている者も少なくない。

 

「あらあら。横からかすめ取るつもり?」


「ここにある財宝は全て我らC国のものだ。巻物ひとつ渡すわけにはいかん」


私は嗤った。こんな愉快なことはない。この巻物が……大極図がどんなに恐ろしい宝貝なのかも知らない連中に使われていいわけがない。


「こんな黄金の間なんてくれてあげるわ。だから私に従いなさい。控えよ。皇帝の御前であるぞ」


今度は兵士が嗤う番だった。無知は罪なりとはよく言った。だが兵士たちは自分の体が私にかしずいていることにようやく気付いたらしく動揺の声を上げる。


「何だこれは!答えろ!」


「そんなことよりどうしてあなた達はここに来たの?あの正体不明の化け物に対する防衛は?」


「魔王は日本へ向かうことが分かっている。我々には関係ない」


なるほど、そういうことか。


「大極図よ。我を魔王の下に導け」


すると周囲の光景が歪み、目の前には魔王。それに男一人と女二人が金色の光を手に戦っている場所に来た。

魔王の全身にある様々な顔が上げる怨嗟の声に眉をしかめながら私は大極図を天に掲げる。


「大極図よ!この悪しき魔王を灰と化せ!」


魔王は名状しがたい断末魔を上げると四散した。どす黒い何かが自分の中を駆け回っていく。

我が力を汝に託そう。そんなしわがれた声がしたかと思うと私の意識はそこで途切れた。


【???視点 了】


あっけない最後だった。アイン・ソフ・オウルで戦うもあまりの質量と怨嗟の声にもうだめかと思った時魔王が爆発したのだ。

その日から1週間ほど蒼い雨が降り続いた。その雨にあたった者は獣人となり、動物園の動物や野生の獣は人間を襲うようになったらしい。

だがそれは魔王と戦っていた俺達も例外じゃなく俺は猫、スコティッシュ・フォールドだったか、の毛並みを持つ獣人になってしまった。

猫になりたいと思ったことはあるがこれはない。


「何で兄貴は猫で私はカピバラなのよ!」


しかも血筋に関係なくランダムで色んな獣人になるようだ。


「まあ、なっちゃったものは仕方ないんじゃないですか」


そう言って苦笑するのは兎人になった御厨。


「兎はいいよねえ。私カピバラだよカピバラ」


ニュースでは獣人化した人間の中で理性を失って暴徒化している人がいることを伝えている。

これからが大変だな。


「次のニュースです。世界の人間を獣人変えた主犯は東京大学客員准教授、東雲明日香しののめあすか氏であるとC国報道官が……」

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