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ネコまた  作者: ネコスギ
6/7

コレから

現在時刻6時53分

 起きて彼此30分くらいなるわけだ。今の服装は縁起(えんぎ)を探しに出た時のまま私服。

90歳の婆ちゃんとはいえ一人の女性だ、流石に目の前で着替える勇気はなかった――――――てか、眠いので早く寝たかった。

おまけに昨日は風呂も入っていない。

その理由は以下同文。

「お主…いや、彰じゃったか。この家にわしを住まわせるといっておるが……そなたの母上は承諾済みなのか」

「…………」

 縁起の言う通りまだこの少女のことを伝えてない、この家に一緒に住まわせたいと考えている。だから縁起の事を隠し通すことは多分無理だ。しかし、いくらのほほんとしたあの母とはいえ許可してくれるという保証もないわけだ。

「彰は黙り込むのが好きなようじゃな。ま~いきなりわれがこの家に上り込んだ様なもんじゃ、出てけと言われても仕方ない。そうなったらそうなったで潔く出て行く事にするよ」

「何言ってるんですか、反対されそうになったら僕が母を説得するだけです。この家から縁起さんを追い出させる様なことは絶対させませんよ」

 とはいえ縁起を追い出すような酷いことは絶対したくない。

この家に招き入れて一緒に住もうなんて言いだしたのはこの僕自身なのだから。

「そういってくれるとわしも気が楽になるわい」

 そういって縁起が軽く笑みを浮かべた。それを見ていたら縁起にうちに来いといった時を思い出した。抱きついて来た時のあの笑顔見せられて見捨てることなんてできる筈がない。ま~それはそれとして、何時この事を母に話すべきか。

近いうちに絶対話さなければならないとはいえ、流石に駄目だと言われた時のことを考えるととても訊き辛い所である――――――これは困った。

すると、縁起が立ち上がって部屋を出て行こうとする。

「では、ちょっと行ってくる」

こちらに見向きもせずその言葉を言い捨てながらドアを開いた。

「ん?ちょっ、どこ行く気だよ」

「決まっておろう、彰の母上に一緒に住まわせて貰えるか訊いてくるのじゃ」

そう言うとスタコラさっさと、部屋を出て母のいる居間に向かった。

僕はそれを聞いて思考が停止してしまった「へ?」と気が抜けた声しか出なかった。


 ~居間~ 


僕は慌てて縁起の追って居間に向かった。

「初めまして。上市 彰殿の母様、名は縁起と申します。訳あってこの家に一晩泊めさせて頂きました。母様に一言も挨拶もなかったことをお詫び申します」

「え~といまいちに状況が分から無いのですが……」

「母様じつは我には帰る家が無いのです。ですから此方に良ければ暫く居候させて頂きたいのです」

ドア越しにそんな会話が飛び交っている。

 母は少し動揺しているの様だ。そりゃ~いつも通り朝食を作っていたら、そこに見ず知らずの少女がいきなり出てきたのだから無理もない。

 この展開についていけなくて戸惑っている母さんと、居候させてほしい母さんに頼み込む縁起。

なんだかこのまま、二人だけで話させていたら拉致があかないのではと思った。

 このまま二人だけで話させてる訳にはいかないだろう。かといって、もし母さんに反対されたらと思うと不安になる。

「母さん詳しくは僕が説明するよ」

だけど、焦れったくなって我慢できず二人の会話に割って入っていた。

 僕の方を見て「あらぁ~彰ちゃんお早う~。じゃ~教えてもらおうかしらぁ~」と何時もののほほんをした表情で問いかけて来た。そして、昨日会ったことを一通り話した。包み隠さず全て、縁起が妖怪で猫又の長になるために、人の郷に単身修行に来たことを。これをきいて普通信じてはくれ無いだろう、僕がそれを言われたら「熱でも引いたか?」と絶対信じないだろう。一通り話を聞いた母が口を開いた。

「なるほでねぇ~まぁ~分かったわ~、良いわよ~この家で一緒に暮らしましょう~」

「え?良いの?」

「別に娘が一人増える位だし~それに、人助けみたいなものだと思えばどうってことないわ~」

流石僕の母だ。

 一般家庭のほとんどの奥様方が断るようなことを、悩むことなく平然を承諾してしまった。とは言えちょっと少女に微笑んでもらった程度で、名も知らなかった彼女を助けようとする自分が言えた口ではないが。全く”子は親に似る”というが旨いこと言ったものである。

 母のそんな返答を聞いていた縁起はきちんと正座して、母の前で床に手をつき「本当にありがとうございます」と丁寧に礼を言っていた。「あらぁそんなご丁寧に、そこまでしなくていいのぉ」という会話を背中越しに聞きながら茶を三人分淹れていた。

「とりあえず、これで一息つきません?」

 茶で一回落ち着こうじゃないか。母も縁起も「ありがとう彰ちゃ~ん」「そうじゃのう」と僕の淹れた茶を受け取り居間のテーブルを中心に取り囲むように各々が腰かけた。市販の極在り来りなお茶っぱで淹れたものだが、この渋みの聞いた香りがまたいい。自分で入れ物とは言え匂いフェチの僕には嗜好の香りなのだ。

ふ~。っと三人で一息つき落ち着きを取り戻してから最初に母の口を開いた。

「それじゃ~縁起さんは修行でここに来たそうですが、具体的に修行とは何なのですか?」

そういえば修行について僕はまだ何も知らなかった。

 修行は彼女にとって単身で見知らぬ土地まで行かせる程重要なことなのは知っている。だが、知っているのそこまでだ。実際どんな事をするのかは全く分からない。

「修行の事か。それは父が言うにはあのダンボールが教えてくれると聞いた」

そういって縁起は僕の部屋に置いてある段ボールを取りに居間を後にした。

 段ボール。板紙を多層構造で強靭にし、包装資材などに使用できるよう加工した板状の紙製品。その他とある単身で敵に基地に侵入し、CQCにより全滅させてしまう凄い人の愛用品であったりする。

これの一体どこにそんな修行と関係するようなところがあるのか全く分からない。

てっきり彼女が誰かに拾って貰い易い(?)様にする為だけとばかり……。


「本当にこんな物に修行について書かれてるの?」

「分からん。父上には”修行に関するとても重要なもの”だと、聞いてはいるが段ボールについてはそれ以上知らん」

「そういえばこの段ボールに最初詰められてたよね?あれやったのってやっぱり……」

「無論我の父の仕業だろう」


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