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ネコまた  作者: ネコスギ
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拾い者

早速4話投稿します!

僕は逃げていた。

夢中で自転車をこぐうちに、あの変な路地から抜けたようだ。

外はすっかり夕暮れ時だ。

赤いトマトのように真っ赤な太陽が沈んでいく。

「逃げてきちゃった……。」

慌てていた為最後どんな逃げる顔で僕を、少女は見ていたのか分らなかった。

ただ胸の中がもやもやする。

見ず知らずの少女と少し話しをしただけなのに、

たったそれだけの関係なのに。

なんだろうこの気持ち。

「でも……もう、遅いよね。」

もやもやする事があれば、僕は割り切ってしまってすっきりしている。

あの時もそうだったっけ。

”あの時”とは”父が死んだ”時だ。

父は僕が小学一年の時若くして他界した。

死因は心臓発作。

あの時の僕は父の死を心のうちの何処かで、割り切っていたんだと思う。

”そういう運命だったんだ”と……。

「そういう運命だった、か。」

運命なら仕方ないそういう簡単な理屈だ。

これがもっとも簡単に割り切れる理由だと思う。


 僕は家に辿り着く事が出来た。

本来なら半日の学校なら、もっと早く変えることが出来たに違いない。

「ただいま~。」

さっきの事を忘れようとする様に、明るくただいまをいった。

でも返事はない。

この時間は親が働きにまだ出ている。

帰ってくるのはいつも7時を回った頃だ。

現在時刻は4時30分、帰っていない筈だ。

部屋に戻って不貞寝でもするかの様に布団にうずくまる。

「ふにゃ~。」

ついそんな声を漏らしてしまった。

布団がどうやら洗い立てで、とてもふかふかで良い匂いがしたからだ。

顔を布団に押し付けコレでもかと、胸いっぱいにその芳醇な香りを満喫した。

いつもならココでこのまま永い眠りにつけただろう。

でも、眠れなかった。

まだ胸中のもやもやが治まっていなかった。

何でこんなにすっきりしないのか。答えいたって簡単だ。

あの少女から自分が逃げたからだ。


 「何で僕逃げたんだろ……。」

自分にそんなことを問いかける。

自分でもこのもやもやはどうやったら消えるかぐらい分る。

でもそれが分らない。

いや、分ろうとしない。

あの場から僕が何故逃げたのか、それは怖かったからだ。

別に彼女が妖怪だの何だという、電波だからとかそんな理由ではない。

むしろ好みのタイプだったかもしれない。

ただ友達が出来るのが怖かった。

正直あの少女との会話は少し楽しかった。

ちょっと非現実的で、だけどどこか嘘じゃないような。

凄く馬鹿げた話だとは思った。

だけどその分たのしかった。

凄く短い時間なのに、凄く短いのに凄く長く感じた。

その分その少女との別れが怖くなる。

僕をあんな目で見てくれる人家族以外にいるはずがない。

そう思っていたのに、ただ見られているそれだけで僕は彼女に心奪われたのかもしれない。

だから余計彼女との別れが怖い。凄く怖い。

どんな事も、分かれてしまえばそれっきり。

例えば小学校で仲良かった奴が、高校出るまでには誰かすら忘れる。

僕はそんなのがとても嫌だった。

だって悲しいから。

でも、あんな目で見てくれた唯一の少女との別れが、僕が相手から逃げるなんて。

そっちのほうがもっと嫌だ。

「これじゃ駄目だ。」

僕は決心した。

服を私服に着替え、家から飛び出た。

自転車に跨りまた勢いよくペダルをこいだ。

無我夢中だった。

あの少女に会いたい。

あの少女ともう一度話したい。

今度はちゃんと別れを言いたい。

あんな中途半端な別れだけは嫌だ。

そう思った。

「あんな路地また辿り着けるかな?」

外はすっかり真っ暗だ。

街頭が夜道の道案内をしてくれている。

朝と夜では道はという物は様変わりする。

でも、意外と簡単に見つけられた。

適当に走っていただけなのに。

またあの二手に分かれた道だ。

「……。」

何だろうか、ただ二手に分かれているだけの道なのに。

これからの僕の運命を決めるかのような気がした。

右に進めばあの少女との出会いはなかったことになる気がした。

左に進めばあの少女との出会いの続きが待っている気がした。

そしてどちらを選ぶのか、そんなの決まってる。

「左だな。」

少女との未来を僕は選んだ。


 でもあの少女もうこんな暗がりなのにまだいるだろうか。

そんなことをいまさら思っても仕方ないか。

いなかったらそこまでだが。だからといって、いると言う可能性は捨てるのはもったいない。

「何じゃお主どこかに行ったと思ったら、戻ってきおったのか?」

「別にお前に会いに来たわけじゃないよ。偶然通りかかっただけ。」

「ほ~う。」

少女はいた。まだこんな暗がりに一人でいた。

「お前なんでこんな時間までこんなとこいるんだ?」

「他にいくところがないからに決まっておろう。」

それもそうか。ではこの先この少女はどうやって暮らすだろうか?まさかこの段ボールが家?

そんな馬鹿な事あるわけ……ないよな?

「じゃ、その段ボールで一生寝泊りする気だったのか?」

「他にいくとこがないのなら仕方なかろう。」

「でもお前今頃でも結構夜冷えるのに、雪とかどうすんだよ?」

「仕方なかろう。我慢するだけじゃ。」

なんて言えばいいんだろう。なんて言ってあげればいい?

「うち丁度部屋の空きがあるんだよな。」

俺何言ってるんだろう。少女でも誘拐するのか?

「それは我をお主の家に泊めてくれるといっとるのか?……本当……なのか?」

少女がこっちをまた見ている。

僕は黙って頷いた。

段ボールに正座する少女が突如立ち上がる。

そして、頭から僕の鳩尾目掛け突っ込んできた。

「ぐフッ」

少女はそのまま僕を腰に手を回し抱きしめてきた。

「ちょっ!?」

僕は動揺した。

普段女性との接点が限りなく少ない僕にとって、コレはかなり刺激は強かった。

少女からはいい匂いがした。

その香りは森林に迷い込んだ旅人が、胸いっぱいにそこの空気を堪能した時の芳醇な大自然の香り。

山の中にある草花や、澄んだ水や空気そんな香りが少女からは香った。

「お主我は妖怪なのじゃぞ?本当に……本当にいいのか?」

少女が埋めていた顔をあげて僕の顔を見る。

目には少し滴がたまっている。

「妖怪だからってお前が俺をとって食うわけじゃないんだろ?」

「でも、お主さっきは逃げたではないか?」

「あ、アレは別に妖怪だからとかじゃなくて……。」

そんな顔で見ないでほしい、凄く恥ずかしくなってくる。

あまり恥ずかしさに顔を左に背ける。

「とりあえずお前住むとこないならうちに来いよ、細かい話はそれからだ。」

「ありがとう。」

少女は僕にそういった。

その時の少女の笑顔を僕は一生忘れないと思う。


帰りは自転車の二台に少女が腰掛ける形で帰った。

少女は背中に亀のように段ボールを背負っている。

少女にはとってかなり貴重な物らしい。

「ついた。」

到着時刻7時30分。

母が帰ってきている……。

どっかのラノベの主人公なら都合のいいように親が、海外出張中とかなのだろうが生憎我が家にはそういった便利設定は存在しなかった。

「ただいま。」

「遅いお帰りねうちのお坊ちゃまは。」

「そういう言い方はないだろ?ちょっと道に迷ってね。」

「ふ~ん。」

都合のいい事に母は今台所で調理中だ。

今なら二階の俺の部屋にこの子を気づかれづに連れて行けそうだった。

(よし、いまだ。)

足音で気づかれないように慎重に階段を上って部屋に入る。

どうやら気づかれずにすんだ様だ、今日はついている。

部屋に入ったとたん凄い眠気が襲ってきた。

夜食はいつも一人で先に食べているので、親は食べた後だと思っているだろう。

我が家で母が夜調理をするのは、明日の弁当と自分の夜食の分のためだ。

風呂も僕はシャワーだけだから先に入ったと思ってるだろう。

「ふわぁ~今日はコレで寝ないか?」

「ふむ、我もあんなところに一日正座していたせいでかなり疲れた。」

ということで寝ようかと思ったんだけど。

早速問題が発生。

ベットがこの部屋に一つしかない。

仕方ない俺が床で予備の布団と枕で……。

「お主は床はココじゃろ?何を布団を出しておるじゃ?ここにあるではないか?」

「流石にベットで男女二人寝るってのわね~。」

「何かいけないことなのか?」

「いや、別にいけないってことでもないんだけど。」

「ではお主もココで寝ればよい。」

「え、でも……そんな。」

「お主まさか94歳のお婆ちゃんと寝るのが恥ずかしいのか?」

「だ、誰がお婆ちゃんと寝るのが恥ずかしいだと!?」

「いいよ!上等だ一緒の布団で寝ればいいんだろ?」

「それでこそ日本男子じゃ!それくらい威勢がなければな。」

つい口車に乗せられて寝ることになった。

ま~ただ寝るだけだけどね。

疲れていたの事もあって直ぐ深い眠りについてしまった。


一日目終了。

これでこの作品の一日目がやっと終わりました。長かった本と長かった。

4話で一日ではなく三話で一日構成に、したかったのですが以後頑張ります!

さてさて次からはこの二人の生活が始まります。

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