路地
僕が通う高校は僕の家から、ほぼ一本道だ。
だから別段迷ったりするようなこともなく、遅刻寸前というわけでもなく、普通に登校出来た。
こういう所で変な世界に飛ばされたり、はたまたかわいい女の子と出会って友達に……。
なんて夢物語が起こる兆しすらない登校だった。
学校では、何か特別なイベントがある訳でもない普通の入学式。
これこそ教師となんの面白みもなさそうな担任。
かわいい女の子がいきなり話しかけてきてくれることもない。
それどころか誰一人話しかけてくれなかった……。
でも社会とはそんなものだと割り切ってしまえば、そんな物なのかもしれない。
後は自己紹介をして、その後すぐ終礼をして終わり今日の所は下校となった。
「起立、きをつけ、礼。」
「さようなら。」
号令とともに学生たちは、蜘蛛の子を散らすように教室からでて下校していった。
僕もその中に紛れるように下校した。
周りでは中学が一緒だった人同士や、今日出会って友達になった人など様々だった。
でも、みんな誰かと”一緒”に帰っている。
僕は勿論一人だ。
「今年もまた一人なのかな。」
そう呟いていた。
小学校、中学校と人と付き合うことが苦手な僕は、いつでも一人だった。
唯一僕に興味を持ってちゃんと見てくれているのは――――――母だけだった。
そんなことを考えながら自転車を走らせていると、”路地”を走っていた。
路地?それは可笑しい。
僕が登校に使った道は見通しの良い大通り、しかも学校までは”一本道”はずだ。
路地に入る必要がない。
道、間違えた!?
そう思った時にはもう遅く、自分が今どこにいるかさえ分らない所まで来ていた。
しかし、まだ諦めるのはまだ早い。
僕にはケータイという超便利な情報端末機器が有るのだ。これのGPS機能を使えばたちどころに、自分の居場所が分かる優れものだ。
「えーと確かここを押してっと。」
ピー。
[error]の文字が画面に表示された。
ボタンを押す⇒[error]
ボタンを押す⇒[error]
ボタンを押....
ケータイを壁にたたきつけぶち壊そうと思った。
しかし、ケータイはとても高価な機器なので思いとどまった。
どうやら"電波が通じていない"ようだ。
「さて―――――どうしたものか。」
立ち止っていては何も始まらないかと思って、我武者羅に前に移動進むことにした。
そのうち大通りで出ればそれなりに分るだろうと思ったからだ。
それに何時までもこんな人気のないうえに、
電波まで使えない不気味なところにいたくはなかったからだ。
道を進んでいると、道が二つに分かれていた。
右と左、どちらに行ったらいいものか。
左の道も右の道もどちらもよく似たようなものだ。
しかし、どちらも全て一緒というわけでもない。
丁度左と右を分断している壁。
左の道はその壁の陰に隠れすこし薄暗くなってちょっと不気味だ。
右はそれに比べ陰になっていないのですこし明るい。
だから、右に行こうとかと思った。
「にゃー。」
丁度その時だった。左の道のほうから鳴き声がした。
その声は僕が右に行くのをとめた。
それから左に自然と足が向かっていた。
さっきまで薄暗いから気味悪がっていたはずなのに、僕は左の道を選んだ。
左の道を進むと、はじめは薄暗かった道はいつの間にか明るい道になっていた。
路地なだけあってそこは、道幅は軽自動車一台がやっと通れる道幅だ。
あの鳴き声の正体が知りたい。
その時はそのことだけしか考えてなかった。
鳴き声ひとつで、道に迷ったことを忘れてしまっていた。
「結構進んでるけどなにもいないな……。」
内心あの鳴き声は気のせいではとも疑っていた。
諦めて自転車に乗って一気に通り抜けようと思った。
そう思って視線をペダルのほうに向けた。
自転車越しに茶色の角が見えた。
自分の右下に目線を向けた。
茶色の角の正体は段ボールだった。
丁寧にしめられている。
ダンボールには張り紙が貼られていた。
拾え。
張り紙にはその文字が書かれていた。
とても命令口調な頼み方だった。
「不気味すぎる……。」
ガタ ガタ
段ボールが揺れ始めた。不気味感+10up
ピタ
止まった。
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ものすごく揺れ始めた。
それもさっきより激しく。不気味感MAX
余りの不気味さに僕は自転車を盾に引き下がる。
ピタ
また止まった。
何だよこれ!?これマジ何だよ!!???
かなり僕は心から動揺していた。
グググ
段ボールの上の部分膨れ上がってきた。
ガムテープで綺麗に止められているため、いい感じに膨れ上がる。
ググググググググ
はち切れそうになってきた。
何かが段ボールから出ようとしているようだ。
ぶぱぁん!
ついにその段ボールの蓋が開かれた。
段ボールから出てきたのは――――茶髪の少女だった。
「はい……?」
僕の頭には疑問符しかなかった。